プロローグ
この世界は、理不尽で満ちている。
理由もなく怒られる。頭の良し悪しなんて生まれつき決まっている。容姿も、性格も、メンタルの弱さも、性別も、ずる賢さも、全て、理不尽に振り分けられる。
人生の選択も、友達も。
それは全て、変えられない運命。理不尽な運命なのだ。
おれは、そう信じている。
だから、おれは、立ち向かわない。
立ち向かったところで、何かが変わるはずがない。
それは、他の奴らだって同じだ。
でも。
それを。
変えようとする奴が、いる。
近くに、いる。
変わるはずが、ないのに。
でも。
もし、そいつが。
もし、そいつが、それを。
変えることができるのなら。
自分の力だけで、理不尽に立ち向かえることができたのならば。
そこには一体、どんな未来が、待っているのだろうか。
そんなこと、考えたく、ない。
おれは、今になって、そう、思ってしまった。
♢
「旅立ちの日に」は、この中学校で過ごした日々を思い出させる。3年間、色々なことがあった。別れの寂しさに泣いている人たちもちらほらいる。
3時間後。プリント類が配られ終えた後、級長が先生に花束と寄せ書きを渡す。
「ありがとう。本当にありがとう。君たちと過ごした3年間は、とくに担任だった一年間は本当に素晴らしいものでした」
先生の話を遮るように、校内放送が入る。
「それでは、3年5組の皆さん、昇降口に向かってください。」
おれ達は教室を出て、窓から光が差し込む、今まで何度も見てきたけれど、そんな日々の中でも一番幻想的な廊下を、今日で最後の廊下を、歩く。
隣を歩く隆斗は、おれに告げた。
「なあ、俊太、おれ……」
その目からは一筋の涙が流れ……。
昇降口を出た。長い花道と、青く透き通った空が、おれ達をこれから広がる未来へと連れて行ってくれる。
恐れ入りますが、
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