セシリアサイド 凛とした顔
今日は降ったり止んだりの天気でした。
セシリアサイド
「アリス様。セレナ様とわたくしの境遇が似ている、と仰っていましたが?」
セシリアがティーカップを綺麗な所作でソーサーに戻し、アリスを見た。
「あの羽山、セレナと結婚したら天野財閥の当主になれるって喚いていたのよ」
アリスに殴られていた男の顔を思い出し、セシリアが首を傾げる。
「似ておりますか?」
「馬鹿な婚約者に苦労させられるって所がね、とセレナは言ってたの」
婚約者の居なかったセシリアにはピンと来ないが、ゲームではマーカスの婚約者である事を思い出し、ふぅとため息を吐く。
「財閥の当主ですか。責任の重い立場ですわ。あの様な仕事も出来なそうで責任感の無さそうな方がどうしてなりたがるのでしょう?」
「一目で見抜くとは」
蓮が驚いた顔でセシリアを見れば、セシリアはニコッとした。
「わたくし達の様な立場の人間は表の顔だけでなく裏も見なければ領民に苦労を掛けてしまいます」
人の良いだけの領主では領地の運用を失敗して領民を苦しめる事になる、と両親から教えられている。
「あの阿呆はセレナと結婚すれば天野財閥のお金を自由に使えると思っているのよ」
アリスの言葉に蓮も頷いた。
「上に立つ者が良い生活出来るのは、自分達を支えてくれる者達が居て、その方達を守るからですわ。質素な生活では他国のもの達に侮られますから」
セシリアはゲームと違い、生粋の高位貴族で、高潔な精神の持ち主だ。
「セレナ様も同じ事を仰っています」
敬愛するセレナと同じ事を口にしたセシリアの、凛とした顔を蓮は嬉しそうに見詰めた。
台風がやばい。