王宮にて 王妃の自滅
曇りなのに暑いって。
バーバラの指には、サイズが合っていないダイヤの指輪がきつそうに嵌められている。
「此方はアウロラ妃の物ですわ。何故、貴女が?」
「く、くれたのよ。自分には似合わないからって」
「くれた?これがどの様な指輪かご存知ですか?」
「たかが指輪じゃない。意味なんて」
バーバラが青褪めながら言い訳を考えている様だが、ラフィーネは容赦などしない。
「と、仰っていますが。陛下、ご確認をお願い致します」
ラフィーネの言葉が合図だったかの様に扉が開き、アマルファ王とナルサスが無表情でバーバラの部屋に入ってきた。
「確認しよう」
アマルファ王の低い声にバーバラが逃げ出そうともがいていたがラフィーネの手を振り解くことが出来ない。
「これは私がアウロラと婚約した時に自分で選んで贈った物。ただの指輪では無い」
「やはり。では、別の物も確認していただきたい」
ナルサスが目で侍女達に合図を送ると、先に指示を受けていた彼女達は怯えながら幾つもの宝石箱を持ってきた。
見事なアクセサリーが並ぶ宝石箱の中にはアウロラ妃の物が所狭しと並び、中には婚礼の祝いとして贈ったアウロラ妃の実家、シャルセン伯爵家の家宝のネックレスまで入っていた。
「お前は病気だ」
アマルファ王の低い声にバーバラは縋り付こうとしたが、護衛騎士達が王を守る様に立ち塞がった。
「では、我々は失礼します」
「うむ。手間をかけたな」
ナルサス達はアマルファ王に退室の礼をとり、王宮を後にした。
バーバラはそのまま王家の離宮に療養を理由に幽閉されたが、ナルサス達はアマルファ王に祝いの品を贈った。
台風が西に向かっている。