表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

6 青春は君次第

 ボランティア部と称して集めた学生を洗脳しNHKの集金と偽って恐喝行為を働いていた学内サークル「NHKを国民から守る会」は解散を命じられ、会長であった4回生の橘孝之は無期停学処分となった。恐喝で集めた金は橘の親が全額賠償したのと、ユーチューバーとして有名であった橘がインターネット上で何を言い出すか分からないため退学処分は避けられたらしい。


 僕と羽賀さんは大学の事情聴取を受けたが、バーベキューの当日に連れてこられただけだったこともあり悪質サークルに注意するよう指導されただけで済んだ。


 その後も羽賀さんと一緒に様々な文化系サークルを見学したが一度騒ぎに巻き込まれた後では羽賀さんにも覇気がなく、5月の終わり頃になっても僕らは入るサークルを決められなかった。



「これまでで残ってるサークルは将棋とか書道とか水彩画ぐらいね。何というか、普通過ぎて面白くないわね」

「そうですね……」


 いつものカフェテリアでコーヒーを飲みつつ、僕らはこれまでの見学を振り返っていた。



 以前より元気がなくなった羽賀さんは、また大学を自主退学して他の面白そうな大学に行ってしまうかも知れない。


 彼女はどう思ってるか分からないけどこの前の一件で僕はやはり羽賀さんが好きなのだと気づいたから、どうにか残って欲しいとは思う。


 とはいえ、僕がそのために何をできる訳でもなくて……



「そうだ、いい考えがあるわ!」

「えっ?」


 何かをひらめいた羽賀さんはアイスコーヒーをストローで一気に飲み干すと突然立ち上がって、



「面白いサークルがないなら、私が作ればいいのよ!!」


 と、目を輝かせて言った。


 それを見て僕も反射的に立ち上がり、羽賀さんの顔を直視して、


「僕も一緒に、手伝わせて下さい!」


 と叫んだ。



 会計を済ませてからカフェテリアを出て、僕と羽賀さんは最寄りの駅まで並んで歩いた。


 以前と違って、今では羽賀さんと学内を歩いていても特に周囲の反応はない。


「海江田君が協力してくれるなら楽しいサークルを作れそうね。それに、私がサークルを作るってことは……」


 言いたいことを察して、僕は無言で頷いた。


「3回生でリーダーを引退するまでは、この大学にいることになるわね」

「……もう1年、何とかなりませんか?」


 顔を向けずに呟くと、



「あなた次第、ってことで」


 彼女はそう言って、僕の手を握った。



 (完)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ