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5 大学は危なっかしい

 全力疾走してキャンプ場の坂を下り、車道へと出た所で突然目の前に大型の車が走ってきた。


「まさか、あの団体の仲間!?」


 羽賀さんが腕に抱かれたまま叫び、僕は最悪の事態を想像して凍り付いた。


「あの制服は……!」


 それと同時に、僕らに追いつこうとしていた女性も驚きの声を上げて立ち止まった。


 車の助手席から降り立ったのは青白いスーツに身を包んだ男性で、僕はその人に見覚えがあった。


「我々は学生セキュリティ委員会だ!」

「ロンダ先輩!」

「海江田君じゃないか。君も危険団体に連れてこられていたのか」


 2回生の論田(ろんだ)先輩は関可取大学から東京大学の大学院への進学を目論んでいる人だが、今はそんな話をしている場合ではない。



「お前はN国会のメンバーか。NHKの集金に協力するふりをして、集めた受信料は自分たちの懐に入れていると聞いているぞ!」


 ロンダ先輩が既に逃げの姿勢に入ろうとしている女性に向けて叫ぶと、車の中から何人もの屈強なラグビー部員と教務課長が降りてきた。


「学生の自治は認められているが学内サークルの違法行為を見逃す訳にはいかん。関わった学生には後で処分を下す。そして今すぐ集会の解散を命じる!」

「ひいっ」


 教務課長が怒鳴りつけるとN国会の女性は背中を向けて逃げ出し、ラグビー部員たちはキャンプ場のテントに突撃していった。



「ありがとうございます、ロンダ先輩。おかげで助かりました」

「新入生がよく巻き込まれる事案だから今後とも気を付けてくれ。ところで……いや、何でもない。後で駅まで送るから、この辺で待っていてくれ」

「はい……」


 ロンダ先輩が気まずそうに背中を向けて歩いていってから、僕は羽賀さんが恥ずかしそうにこちらを見上げているのに気付いた。


「あの、そろそろ下ろしてくれても……」

「ご、ごめんなさい!」


 羽賀さんをゆっくり地面に立たせてからロンダ先輩が戻ってくるまで、僕らはお互いの顔をまともに見られなかった。

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