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別人?

「イメージトレーニング」というものが世の中にはあるが、今回においてもミラクル☆アリサこと亜梨沙はイメージトレーニングをしてきた。


 魔法少女として戦う時、大きく技を使わない限りはミラクリウムをチャージする必要がない。ただ現象を願ってフルーレを振るうだけで、願った『奇跡』は起こる。


 今回は亜梨沙にとって敵ではない相手を無力化する必要がある。重度の中二病患者のみを相手してきた彼女にとって、今回における力の使い方は普段ならあり得ないことだ。


 しかし、彼女にとって幸いなことにイメージしていた程、一般人に対して能力を使わずに済んでいる。潤の『瞬殺』が噂通りの戦力であったことに加えて、一緒に行動することとなったラグナロクの副総長と精鋭メンバーもドラゴンソウルの構成員に対して圧倒的な力の差を見せつけている。


 とはいえ、ドラゴンソウルの構成員は鉄パイプという武器を持っている。いくら喧嘩が強いといっても、彼等は武器を持った相手に対して有効な格闘術を身に付けているというわけではない。


 ならば、ミラクル☆アリサのやることは鉄パイプを消し去ることだ。能力で『奇跡』を起こし、鉄パイプを消し去ると零と潤を除いた人達は自分の目を疑って混乱した。


 この現象がラグナロクにとって有利となることな変わりはない。それを生かし、ラグナロクの精鋭達は悉くドラゴンソウルの構成員を倒していった。



「───ったく、数だけは立派だな」



 副総長がぼやいた。ドラゴンソウルの構成員はラグナロクほど「荒れている」というわけではない。むしろ、社会の評価基準に適応しているような、普通にしていれば普通の生活を送れているような人達だ。



「俺らは何を相手してんだろうな」



 意地の張り合いも勝ったことによる達成感もない。こんな衝突は彼等にとって初めての経験だ。



「本当はお利口ちゃんのクセに、俺たちを舐めてるからだろ?」


「喧嘩を売る相手には気を付けろって教えるためじゃねーか!」



 精鋭達が副総長を励ますように言う。そんなことは彼もわかっているし、トラが何も言わないうちは彼等を抑えていた立場なので、ようやく抗争が解禁されて勢いに乗ったのは事実だ。


 しかし、それでも気分が晴れない。



「ラグナロクの為に、ってことなんだろうな」



 精鋭達に応えるようで、それでいて自分に言い聞かせるようでもある。副総長が求めているのはあくまでも「力の競い合い」であり、戦えば戦うほどつまらなくなっていく今回のような戦いは好まなかった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 トラは進みながら不思議に思っていた。


 襲ってくる構成員がやけに少ない。下で乱闘しているメンバーが全員ではないはずだ。


 だが、それは好都合でもある。罠であり、後を追いかける仲間達を襲うつもりで隠れていたのだとしても、リュウに早く辿り着けるならそれに越したことはない。


 一気に屋上へと駆け上がる。重い鉄の扉を勢いよく開いた先に、久しく見る幼馴染の姿があった。



「リュウぅぅぅぅ!」



 近所迷惑など気にせず、全力で叫ぶ。


 しかし、幼馴染はまるで他人の名を呼ばれただけのような冷めた目線でトラを見る。それから特に返事をするようなこともしなかった。


 トラは扉から手を離し、リュウに近付く。扉が大きな音を上げて閉まるが、そんなことはどうでも良かった。



「思ったよりも元気そうじゃねぇか、リュウ」


「…………」


「なんだよ、ダンマリかよ? 随分と変わっちまったなぁ」



 トラが最後に見たリュウの姿は真面目と爽やかさを兼ね備えた男だった。しかし、今のリュウは頭の右側に剃り込みが入っており、それ以外の髪は少し長い。ぱっと見の印象はトラ達と少し趣の違う、おしゃれで怖そうな男だ。


 トラとしてはリュウとしっかり話をしたいところだ。しかしこの場には2人の他にもドラゴンソウルの構成員と思しき男達と女性が1人混じっていた。


 女性がリュウの近くに寄り、わざとらしく大きな声で問う。



「リュウー? トラが来たよー? 決着、付けるんでしょうー?」


「ああ」



 リュウは女性の問い掛けには答えた。そして歩き出し、トラの目の前で止まった。



「決着? 俺とてめぇにそんなことあったか?」


「ある。シアのことだ」


「あ? 俺はてめぇにシアのこと任せただろ」


「それだけじゃ……足りないんだよ」


「は?」



 リュウの抱える闇が爆発するように強風が吹いた。そしてそれは、リュウが重度の中二病による能力で呼び出した『龍』が原因だとトラは気付いた。



「なんだよ、てめぇ。そういうことかよ」


「…………」


「上等じゃねぇか! てめぇがそこの女に何吹き込まれたんだかしらねぇが、それとまとめてぶっ飛ばしてやるぜ!」



 龍が大きな口を開けてトラを飲み込もうとする。しかし、その直前にトラの『虎』が現れ、横から龍の首に噛みついた。



「覚悟しろよ、リュウ。加減はしねぇからな!」



 トラは相棒である虎に龍を任せ、自分はリュウに使って拳を振るった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 零達とラグナロクの精鋭達はドラゴンソウルの構成員を撃破しながら進み、最上階へと登っていく。ここから先はついに屋上だ。



「おめぇら、覚悟はいいな? 行くぞ」



 皆一様に頷く。それを確認してから副総長は重い鉄の扉を開けて屋上へと出た。



「うおっ!」



 吹き荒れる強風に危うく扉が閉まってしまうところだった。この扉は重く、勢いよく閉まって挟まられてしまえば痛いだけでは済まないだろう。


 副総長と精鋭達が力を合わせて扉を開ける。その隙に零達3人はすばやく屋上へ出て、精鋭メンバー達も外へ出た後に扉を離すと、壊れてしまっておかしくないくらいに勢いよく扉が閉まった。



「な、なんだこりゃ……」



 上空では龍と虎が噛みつきあって戦っている。非現実的な光景を目の当たりにして、副総長と精鋭達は空いた口が塞がらなかった。


 零が周囲を見渡す。すると、殴り合っているトラとリュウの姿が見えた。そしてその奥には2人の戦いを面白そうに眺める女性の姿があった。



「潤!」


「ああ、あの女か!」


「───でも待って」



 女性を確保しようと潤が一歩を踏み出した。しかし、そこで零が止める。



「どうした?」


「あの人、僕が見た残留思念と姿が違う。別人だ」


「なに!?」



『友愛』の友香は名前と犯行内容こそ明確なものの、なぜかその姿が記録されていない。故に潤も彼女の姿を知らず、零の言葉を信じるしかなかった。


 姿形は別人。しかし、彼女の性格から出てくる雰囲気はどことなく同じだ。


 それを感じた瞬間、零の脳内に今までの情報が思い出される。


 監視映像と残留思念のギャップ……。見える姿を変える能力の可能性……。



「別人? ───いや違う、それだ! 潤、彼女は能力で姿を変えているかもしれない!」


「どういうことだ?」


「他にも重度の中二病患者がいるかもしれないってことだよ!」



 そうこう考えているうちに、零達の存在に気が付いたドラゴンソウルの構成員に囲まれた。先ほどまでと違って少数人ではあるが、見た目からしても強そうなのがわかる。



「トラの後輩! 『瞬殺』! こっちは俺たちに任せろ!」



 副総長が率先し、精鋭達が相手の正面に立つ。



「しかし!」


「こっちは気にすんな! むしろようやく、俺が求めた戦いが出来そうだ!」



 零はドラゴンソウルの残りメンバーをラグナロクに任せて、少しずつ女性へと近付く。それを見届けた副総長が相手を睨む。


 ドラゴンソウル側にもリーダー格がいるのは何となく感じ取っていた。秘められた強さの密度が、他の構成員と桁違いだ。



「てめぇがドラゴンソウルのトップ2か? 面構えが違う」


「だったらなんだ? 悪いが、邪魔させねぇぞ?」



 細身で比較的低身長だが、所々の筋力は十二分にある。身軽であることも予想されるが、副総長は思わぬ強敵との遭遇に鳥肌が立った。



「いいじゃねぇか、最高だぜ。楽しもうぜぇ!」



 ラグナロクの精鋭達は一斉にドラゴンソウルへ襲い掛かった。

読んで下さりありがとうございます。夏風陽向です。


先週、前作のラストについてお話ししましたが、改めて読み返してみたときに誤字を発見し修正しました。クライマックスへ入る直前に誤字……。よく今まで御指摘がなかったなと我ながら苦笑いでした。


さて、コロナも5類に引き下げということで、出張が増えました。となると、飲み会も増えるわけにございます。

一方、健康状態はというとあまりよろしくはありませんね。体重と腹囲が増加。身長体重担当の若くて可愛い職員に恥を晒すという、メンタル攻撃もあったりなかったり……。

食事と運動のバランスって難しいですね。美味しいもの食べずして何を楽しみに生きるのか。日本社会は闇が深い!


それではまた次回。来週もよろしくお願いします!

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