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思念と漆黒の組み合わせ  作者: 夏風陽向
二人の英雄
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「シロだと思う」

更新がかなり遅くなって申し訳ない!

よろしくお願いします!

「えっと、それじゃあ、透夜から聞いている話を話すね」



 奈月は二人に説明するため、ホワイトボードの近くに立った。そこで人物の写真に指を刺しながら話を始める。



「まず、みーちゃん……じゃなくて、小池美苗さんについての話だね。結果から言うと、何もなかった」


「…………?」



 確かに結論から言ってそうなのであれば、詳しい話はどうでもいいのかもしれない。しかし、何も手掛かりがない以上、考えられる可能性を否定できるだけの根拠も、見方によってはヒントとなる可能性だってある。


 ただ、結論だけでは何がどう問題なかったのかは伝わらない。二人はただ黙って奈月の言葉を待った。



「部署内でいじめのようなことはなかったし、記録上では過労になるようなこともなかった。自分の意思で失踪したようには見えないってことだね!」



 沙希を始め、慕っている人が言うことなら否定しないのか詩穂はほんの少しにこやかに奈月の話を聞いて相槌を打っているだけだ。


 しかし、零としては本当にこの案件を解決したいと思っている。だからふと気になったことを遠慮なく質問することにした。


 静かにそっと手を上げると、奈月は小学校1年生の先生をやっているかのような明るいテンションで零を指名した。



「はい! 零君!」


「ふと気になったんですが、今の内容って黒山さんのお父さんから聞いたお話なんですよね?」


「うん、そうだよ?」


「勤務時間のことはともかくとして、職場内の関係とかって黒山さんのお父さんにわかるものなのでしょうか」



 零の疑問に腕を組んだ詩穂が割って入る。



「父の言うことが当てにならないという意味では共感するけど、鷺森君が言いたいのはどういうことかしら?」



 詩穂がそんな質問を返すということは、本当の意味で零の言っていることが理解できていないということだ。伝わっていないのであれば噛み砕いて話をするだけだが、透夜に対する低評価は少し気になるところだった。



「そんなにお父さんを卑下しなくても……」



 零はそうやって前置きしておくことで、一応は気になったことを口にした。伝わっている自信は針の穴よりもないが、何も言わないよりかはずっと良いと零は思っている。



「簡単な話だよ。行方不明者である二人に対して、黒山さんのお父さんは異性だ。言って仕舞えば、表向きな関係性なら見てわかるけど、裏ではどうかなんて同性にしかわからないんじゃないかなというだけのことだよ。学校でだってよくある話じゃないか」



 付き合う前はよく見えても、付き合ってみて本性がわかれば受け入れられずに別れを切り出すこともある。同性が言う「あんな人だとは思わなかった」は共感できるが、異性の言う「あんな人だとは思わなかった」には共感できない。零から言わせれば、同性である「あんな人」は「最初からそんな人」なのだ。


 ただ、そうやって言いながら詩穂に振ったのを後悔した。何故なら普段から単独行動をしている彼女が「普通の高校生のように」恋バナをしているとは思えないからだ。


 案の定、理解できていないようで首を傾げていた。しかしその一方で奈月は理解出来たのか「成る程!」と元気よく言った。



「そういった意味では大丈夫だよ! 実はボクも何か変わったことが無かったか調べているからね。同性であるボクから見てもトラブルはなかったなぁ」


「そういえば、天利さんは何か渾名(あだな)で呼ぼうとしてましたよね。仲良かったのですか?」



 そういえば……と言ったものの、実はもっと前から気になっていた。心の壁がなく、誰とでも平気で話せて距離の詰め方が少しおかしい奈月でさえ、単なる同僚に渾名をつけるだろうか。渾名を付けて呼ぶほど仲が良かったのではないかと零は邪推してしまう。



「勿論だよ! 同年代だからね!」



 奈月は明るく答える。顔が広く、色んな人と仲良く出来るスキルを誇りに思っているのだろう。零にはそう伝わった。



「それなら社内で共通の友人とかもいるんじゃないですか。例えば家に遊びに行ったりするくらいの」



 零の頭に浮かんでいる人物は、小池美苗の自宅前で見た女性……中沼奈美だ。長瀬の話に出ていた怪しくない重要参考人ではあるものの、零としては少し怪しく感じていた。


 しかし、零の意図に反して奈月は困った顔をした。



「そんなこと言ったって、絞りきれないほどたくさんいるよ? この支社だけでも絞り込むのは流石に困難だよ」


「いえ、警察ではすでに対象を絞っています。中沼奈美さん……ご存知でしょうか」


「え……えっ!?」



 奈月は二度、驚いていた。一度目は対象が絞られていることだ。その直後、続く二回目は中沼という名前が出てきたことで更に驚いてしまった。



「いや待って! ちょっと待って!」



 右手で額を押さえつつ、左手を前に出して「制止」の意思を伝える。零と詩穂は長瀬から予め「怪しくない重要参考人」と聞いていたが、奈月の反応を見て更に中沼奈美がシロに近いのだと感じた。



「えっと……何で、なみん?」



 驚きのあまりか名前ではなく渾名で読んでしまっている。幸いにも零と詩穂はフルネームを知っていたから「なみん」は中沼奈美を指しているのだと何となくわかった。



「防犯カメラに写っている範囲で言えば、共通して行方不明者2名と会っているからです。僕の能力でも小池さんの自宅前で中沼さんが訪れているのを見ました。行方不明になったと思われる日は訪れていないようでしたが、親しい仲であることに間違いはないでしょう」



 小池美苗は出勤したのを最後に行方不明となった。


 しかしそれは、中沼奈美が関係していないという結論付ける材料にはなり得ない。確かに中沼奈美は怪しくないが、だからといって何も関係していないと零は考えなかった。


 その一方、奈月は零の話を聞いて考える素振りを見せたものの、中沼奈美が関わってるとは思えなかったようだ。小さく首を振って彼女の為人を語る。



「なみんは色んな人と仲良くできる優しい子だよ? 多分、今回のことは偶々なんじゃないかな。きっと他の子に話を聞いてみれば、同じようになみんと会ったっていう子がいるんじゃないかな」


「そうですね、そうかもしれません」



 とはいえ、ここで探りを入れてしまえば「聞き回ってる」ということを察知した本人が警戒するかもしれない。何も関係していないシロであれば、聞き回ってる奈月とトラブルになってしまいかねない。


 実質、それができるのは警察だけだ。しかし警察の調べでは「怪しくない」だった。



「そういえば……」



 零はふと思い出したことがあった。


 この案件が仮に重度の中二病患者に関連することであれば、黒山透夜が有効だろう。何故なら彼には「一目見ただけで重度中二病患者を識別する能力」がある。



「黒山さんのお父さんに中沼奈美を見ていただくようお願いできませんか? もしかしたら……」


「重度の中二病患者かわかるってことだね!」



 すぐに反応したのは奈月だった。やはり奈月も黒山透夜の特殊能力を知っているようで「話が早い」と零は感じた。


 そういった意味では詩穂もその能力を一部受け継いでいる。ただし、父親ほど確実性に自信がないのでこの場では黙って聞いていることにした。



「僕は中沼さんに関する残留思念と会話してみたいと思います。池本さんに関しても調べたいと思うので、可能なら住所とか教えていただけると」


「わかった! 沙希ちゃんに確認して、OKだったら送るね!」



 零の中では情報共有は全てしたし、今後の方向性も決めたのでこれ以上話すことはないと感じていた。ただ、会議室の使用予約時間的に少し余裕があるようで、詩穂の学校での様子など軽い雑談をしてからこの場を後にした。

読んでくださりありがとうございます。夏風陽向です。


立て続けのイベントと、矢鱈と襲ってくる睡魔によりなかなか執筆ができませんでした。

27日に仕事納めでしたので、この休みを生かして執筆ペースといいますか、タイミングを戻したいと思います。


それではまた次回。来週もよろしくお願いします。

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