表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
思念と漆黒の組み合わせ  作者: 夏風陽向
二人の英雄
115/190

行方不明者の共通点

先週はおやすみ、ありがとうございました。

というわけで通常通りにいきます!

「情報の入手ルートについてはわかったよ。ただ、この件に鷺森君がどう関わってるのかな?」



 情報の入手ルートについて理解は出来ても、事件にどう関わっているかわからない。


 それもそのはず。発見と解決までそこまで時間を要さないであろうと思われている事件に警察が零を頼ることはない。そしてそれは地嶋グループも一緒だ。大企業だからこそ、未成年を事件解決に巻き込むような世間から責められることをやるはずがない。


 零の能力は確かに優秀だ。しかし、重度の中二病という存在を知らない一般人からすれば普通の高校生であることに変わらない。零に危険が及び、高校生を事件解決に巻き込んだ事実が明るみになれば世間から責められること間違いない。


 考えれば考えるほど、違和感ばかり気になってしまう。


 そんな長瀬を他所に零は「なんでもないことだ」とでも言うような落ち着いた様子で質問に答える。



「黒山透夜さんを通じて、地嶋グループの地嶋沙希さんから依頼を受けたんですよ。警察は小池美苗さんの捜索にかなり苦戦しているようですね」


「成る程、そういうことか」



 一応は理解した。しかし、一企業が高校生を事件に巻き込むなど正常な判断だとは思えない。長瀬はこの失踪事件に「地嶋グループにとって都合の悪いことが何かある」と感じた。



「君に依頼するくらいだ。地嶋グループもかなり焦っているようだね」


「2週間以上も経ちますからね。普通に考えれば生存は絶望的でしょうが」


「…………」



 あまりに希望や思いやりのない一言。長瀬が零を数多の事件に巻き込んだ結果、祈ることも忘れてただ現実を受け止める性格になってしまった。それがあまり人間らしくなく、長瀬は少し気にしていた。



「話を戻そうか。鷺森君の言う通り、まさにその事件についてだ。ただし、被害者というべきか……行方不明者が1人増えた」



 長瀬から告げられた現状を聞いて、零と詩穂は心から驚愕していた。まさか、立て続けに行方不明者が出るなど思ってもみなかったからだ。


 ただ、零は長瀬の言い回しに一つ違和感を覚えた。



「被害者? 警察はこれが事件性のあるものだと認識しているんですか?」


「うん、まあね。ただ、外の監査カメラとかでは行方が掴めない。警察の見方としては、社内関係者による犯行、もしくは元関係者による犯行といったところかな。あくまでも、一般人によるものだと」


「……長瀬さんが動いているということは、重度の中二病患者が絡んでいる可能性も視野には入れているということなんでしょう?」



 零は冷静にそう言った。確かに長瀬は重度の中二病患者が関わっている犯罪を専門としている刑事だ。一般人が起こすような事件では彼に出動要請が掛かることなどないだろう。


 それを知っているから零はそう考えた。そして重度の中二病患者による誘拐事件は長瀬にとっても因縁のある事件だ。


 しかし、長瀬は困ったような顔をして両肩を上げた。



「殆どその可能性はないと見られているよ。もちろん、私としても重度の中二病患者が関わっていないのが一番だと思う。だが、ここまで見つからないのは何故だ? 防犯カメラを漁っても手掛かりが出てこないのは? 山や海に行ったというわけでもないのに失踪? 訳がわからない。となれば、これはもう何かしらの能力によるものだと考えるべきだろう」



 長瀬がヒートアップしている。校長は少し驚いて仕事の手を止めて長瀬を見ていたが、零は憐みの目で長瀬を見た。



「長瀬さん、少し落ち着いてください。僕にはわかりますから」


「あ、ああ……すまない」



 零に言われて自分の失態に気付いた長瀬は謝りつつ顔を赤くした。その一方で、長瀬がこの事件に対してヒートアップしてしまう理由がわかる零としては、長瀬のためにも本気でやらなくてはならないと悟った。



「それで、長瀬さんも僕に依頼する為、来たんですよね? 警察の調べではどこまでわかってるんです?」


「うん」



 長瀬は頷いてからジャケットの内ポケットから手帳と三枚の写真を出した。


 そのうち、一枚の写真は小池美苗の写真だった。もう二枚は別人が写っていたが、零は片方に見覚えがあった。



「一応言っておくと、この人が最初の行方不明者である小池美苗さんだ。そして……」



 長瀬は小池美苗と反対側の端にある写真を指差す。



「この人は池本春香さん。昨日の段階では行方不明の疑いだったが、今日で確定だ。そして最後に」



 長瀬の指は動き、中央の写真を指差して止まった。



「二人と共通した友人の中沼奈美さんだ。二人が失踪する前には共通して会っていた人物とされているが……」



 長瀬はちらっと零の方を見る。目が合った零は深く頷いた。



「小池さんの部屋の前で僕が見た残留思念にもこの人はいました。そして、僕達が現場から去るときにすれ違ってもいます」


「なっ……。そうか、無事で良かった」



 失踪前に会っていた人物。どう考えても怪しいので長瀬が零と詩穂の心配をするのも無理はない。だが、長瀬は軽くため息を吐いた。



「しかし、不思議なことに中沼さんは怪しくないんだ。これがまったく、ね」


「どういうことですか?」



 零は深く突っ込む。一方で詩穂は黙ったまま、文字通りに人形のように少しも動くことなく、綺麗な姿勢で座り続けていた。



「調べれば調べるほど、彼女は潔白だ。確かに行方不明者二人と最後に会った人物ではあるが、防犯カメラには別れるところまでキチンと映っている」


「うん? ということは、僕が見た残留思念では通勤が最後でしたが、実は中沼さんと別れたのが最後だということですか?」


「ん? うん、そういうことになるね?」



 長瀬にとっては零が見た残留思念の情報は初耳だ。故にその時系列を整理することなく、零の整理を肯定した。


 しかし、これでは警察側も手掛かりを失ったことになる。それで長瀬が零を頼ってきたというのも納得が出来る。



「それで、僕は何をすれば?」


「うん」



 長瀬は零の質問に対して、前屈みから背筋を伸ばした座り方に直してから答えた。



「池本さんについては昨日の今日だから調べが足りていないけど、少なくとも中沼さんと別れた場所は把握している。君にはその場所に行って、本当に中沼さんが怪しくないのか見てきて欲しい」


「わかりました。位置情報はスマホに送ってください」


「うん、頼むね」



 長瀬はすぐに自分のスマホを取り出し、零に位置情報を送った。学校からは少し遠いようだが、電車で行けない距離ではない。それこそ地嶋グループの支社から言った方が近いという程でもある。



「少し長居してしまったかな? 私はそろそろ失礼するよ」



 長瀬は立ち上がって校長に少し挨拶をしてから出入り口の前に立つ。そして何かを思い出したかのように詩穂を見た。



「黒山さん。正直なところ、この件はどこかいつもと違うような、嫌な予感がするんだ。鷺森君をしっかり守ってあげて欲しい」


「言われるまでもありません」



 格好としては、詩穂も「零を巻き込んだ側」だ。長瀬に言われるまでもなく、いつも以上に警戒して零を守るつもりだ。



「そうか、なら安心だよ。何かわかったら連絡して欲しい。こちらも何かわかったらすぐに共有するよ」



 それだけ言って長瀬はこの場を後にした。そして零や詩穂もここに長居する理由はない。校長に場所提供の礼を言ってから校長室を後にした。


 零と詩穂は特に会話をすることなく各々の教室に戻っていく。近いうちに打ち合わせをして調査に行かなくてはならないが、今日でなくてもいいだろう。零は「今日の中で詩穂と会うことはない」と思っていたが、残念ながらその再会は放課後になって果たしてしまった。

読んでくださりありがとうございます。夏風陽向です。


どこかで書き記したかもしれませんが、仕事内容がガラッと変わって事務仕事してます。

そうすると何が起きるかって、昼休憩後は眠気との戦い。そして増える体重……。ってな感じです。


実は週3ランニングを復活させまして(全盛期は毎日)

だいぶ体が鈍ってて全然走れませんでしたが、ここ最近は徐々に一定のペースで長く走れるようになってきて少しばかり達成感を感じてます。

体重はあんまり変わらないんですけどね……。


それではまた次回。来週もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ