7 1日前(北西高校への道)
「先輩!!やっぱり私思うんですよー!!」
双葉の元気な声が、住宅街に響く。本当に、何でこの子はこんなに元気なのだろう。
「…何をよ」
私たちは、授業が終わった後直ぐに、北西高校に向けて出発した。私の中では、行かない方がいいのではないかと、未だに悩む自分がいる。双葉の手前、なかなか言い出せないのだが。
「部として認められる為にも!!もっと真面目に活動した方がいいと思うんですよ!!片桐部長!!」
部長という部分をやけに強調して、双葉は言う。
「別に………今のままでもいいんじゃない?」
「駄目ですよ!!」
「何で?」
「えっ!?えーと、それは、………部費とか」
「部費なんて要らないでしょ?それに、もう私たちとは別に、ちゃんとした「文芸部」があるんだから、元からそんなの無理なのよ」
「そんな事ないです!!文芸部なんて大した事ないんです!!」
……………。
……あー、なるほど。文芸部の子に、馬鹿にされたって事ね、これは多分。私や伊井田はそういうのはあっさり受け流すタイプなんだけど、双葉はそうでは無いらしい。
「それで私決めました!!都市伝説を調べてみます!!」
「……話の繋がりが見えないんだけど?なんで「それで」になるの?」
表面上は冷静に答えたが、私の心はざわついていた。何で?何で双葉は急にそんな事を言うのだろう。このタイミングで。
「部長がやる気がないのは、怖い話に餓えてるからじゃないかと思ったんです!!だから、新しい怖い話を――」
「待って待って!!都市伝説イコール怖い話じゃないでしょ。それに私がやる気がないのは―――」
言葉につまる。それを双葉に言う訳にはいかなかった。
「やる気がないのは!?ちゃんと理由を教えて下さい!!納得できる理由を!!」
「………都市伝説に限らず、怖い話には余り深く関わらない方がいいのよ。怖い話が出来るのには、それなりの理由があるんだから。火の無いところに煙は立たないし、君子は危うきに近付かないの。」
「納得できません!!意味が分かりません!!それならなんで部長は、ホラーサークルなんて作ったんですか!?」
「それは……………ほら、もう着いたから。その話は後でね」
「あ!!部長!!」
後ろから追いかけてくる双葉から逃げるように、私は伊藤要と待ち合わせてあるファミレスに入った。