4 2日前(就寝前)
「……………ん」
眠い。私は目を擦りながら、パソコンの画面を見ていた。もしもカルタが本物だった場合、少しでも早く対応した方がいい。伊藤さんがまだ生きていればいいのだが。そう思うのなら、実際に電話してみればいいのだろうけど、そうしないのは、怖いからだった。正直もうあのカルタには、かかわりたく無かった。
「【赤いちゃんちゃんこ】、と」
黙っていると怖いので、私は声に出しながら、伊藤さんが引いたという都市伝説について検索する。かかわりたく無いのに、こうして調べているのは、私がどうしようもなくお人好しだからだろう。すぐに電話をしないあたり、それはただの自己満足なのかもしれないけど。
ずず、と眠気覚ましに入れて来たコーヒーを啜りながら、【赤いちゃんちゃんこ】について書かれたページに目を通していく。
「んー、学校の七不思議の一つに入る事が多くて………トイレの霊の一つで………赤いちゃんちゃんこ着せましょか、が口癖みたいなもの………霊になった原因は、いじめられたから?………殺された死体は、首を切られて自分の血で赤いちゃんちゃんこを着たように見える………うーん。やっぱり改めて見てみるまでも無かったかな」
改めてみるまでもなく、ほとんど知っている情報ばかりだった。
「……………これは、やっぱり」
確認して、確信が持てた。この都市伝説から助かるのは簡単だ。「赤いちゃんちゃんこ着せましょか?」と聞かれたら「そんなものは着ない」とはっきり答えればいい。それより何より、学校の女子トイレの、一番奥の個室に近付かなければいい。
いくらなんでも、この時間には伊藤さんも家で眠っている筈だし、何より私が限界だ。
メールするにしろ、電話するにしろ、私は明日へ判断を先延ばしして、今度こそ寝る事にした。