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3 2日前(メールの内容)


「私は、北西ほくせい高校に通っている、伊藤要いとうかなめと言います。私は、文芸部に所属しているのですが、一昨日学校で百物語の真似事をしました。途中までは何も起こらずに楽しんでいたのですが、友達の一人が、カルタに纏わる話を始めてから様子がおかしくなってしまったのです」


そこまで読んで、私は一度メールの本文から目を離した。北西高校と言えば、すぐ近くじゃないか。私の通う南東なんとう高校の姉妹校だった筈だ。それにしても、カルタに纏わる話って……。いやそんなまさか。嫌な予感が外れればいいのに、と願いながら続きを読む。


「様子がおかしくなると言うのは、目に見えて何かがおかしくなったという事ではありません。そういうものではなく、その場の空気が急に引き締まったような。そんな感じでした。私は霊感とかそういうのは無いと思うのですが、そんな私でも寒気を覚えました。話が終わると友人は机の上に一冊の本と、トランプのようなものを出しながら言いました。「今の話は、この本に載っていた話を少しアレンジしたものなんだけど。なんと、問題のカルタを実際に見つけてしまいました」と」


私が2年前に書いた話は、【本当には無かった怖い話】というタイトルの投稿小説に載った。掲載許可の確認電話が来た時は戸惑ったけれど、そんな変なタイトルの本、誰も好き好んで読まないだろうと思って許可したのだ。

そういえば、2年前に使ったカルタはどうなったのだろう。香織が持って帰ったと思うんだけど………。まさかこのメールのカルタが本物なんて事はないよね。


「話の中で出てきたように、そのカルタには読み札が無く、気持ちの悪い絵札だけでした。そしてあろう事か、小説に書かれているように実際にそのカルタを使ってみようという話になったのです。私は反対したのですが、他のみんなはやけに乗り気で、結局押し切られるように私も一枚を選んで引きました。その札には、血で染まった服が書かれていました。友達の意見によるとその札は【赤いちゃんちゃんこ】みたいです。」


読み札が無いだけでは、本物かどうかなんて判断できない。出来ないのだが、携帯を持つ私の手の平は、じっとりと汗ばんで来ている。


「その後も何事も無く話が進んで、解散になったのですが、どうしても嫌な予感が拭い切れず、私は友達に頼んで本を貸してもらいました。その本を読み終えた私は、怖くて怖くてたまらないので、こうしてメールしています。どうか私を助けて下さい。」


………これで、終わり?

疑問がいくつかあるが、一番にして最大の疑問は、「何故私のメールアドレスを知っているのか?」という事だ。北西高校の友達が、この人に教えたのかもしれないけど、それにしても伊藤要なんて名前、聞いた事がない。悪戯メールの可能性も有るには有るが、それにしては内容がピンポイント過ぎる気がする。助けてと言われてもなぁと思いながら画面を見ていると、まだスクロールバーが下りきっていない事に気付く。まだ続きがあるらしい。


「080-XXX-XXX」


この人の電話番号だろうか。言っちゃ悪いけど、どうも気味が悪い。……かといって、何もしないというのも出来ない。カルタの真偽だけでも確かめておきたかった。北西高校の友達に、伊藤要という人物についてもう少し詳しく聞いてから、電話してみよう。


気付けばもう1時を過ぎている。友達への電話は明日にして、今日はもう寝る事にした。


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