1話 覚醒
「ではコレで失礼します。」
物件を見て早々に帰ろうとした宮子を狸顔の営業マンが慌てて呼び止める。
「あなたの右目の眼帯をとって右目で見て下さい!そうすればこの物件の良さが分かりますから!!」
右目の眼帯をとる?冗談じゃない。35年間この右目のせいでどれだけ苦労したと、、、。
思い返して思わず掴んでいたバックの手を強く握っていた。
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お見合い中相手はニコニコと世間話をして最後に決まって、右目の話に触れてくる。
さりげなく最後にと思っているのかもしれないが、最後でも最初でも結局は同じだ。
見えていないことを確認して
「立派なお嬢さんに僕なんて勿体ない。」
などとオブラートに包みながら断られるのだ。
そもそもこの35年間家族以外この目がトラウマで人と話すことすら恐怖でしかないのに
結婚なんて非現実的な代物だったのだ。
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こうなったら開き直って右目を見せて怖がらせてやろうかしらと
思い切って眼帯をとった瞬間
キーーーーーン
と頭の奥で金属音の様な音が響いて何かが解放された様な音がした。
その音の波紋とともに自分の視界が金色に色づいていくのを感じた。
「何これ、、、、。」
この建物のある一角だけ土地全体が金色に輝いて、見たこともない生き物たちが漂っていた。
「やはり思った通りです!あなたの右目はあの方に似てとても綺麗な金色をしていらっしゃる。」
狸顔の営業マンがガシッと私の手を握る。
この日から私の人生は一変したのであった。
いつもそうですが物語の出だしを書くのはとてもワクワクしますね。