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激動

ECR軍病院 隔離病棟にて


ここは、軍病院の一角に位置する、疫病患者を隔離する施設である。


勿論そんなのは偽装で、国内の反政府勢力や捕虜を収容し、口を割らせるのが目的の場所だ。


そんな場所で、今日も少女の呻き声が壁に反響していた。


大量の水が胃に溜まり、気を失うギリギリに所で口を覆う布が外される。


「貴様の所属、階級は!どこの部隊だ!」


「ど、独立、処刑大隊……」


再び布を被せられ、水筒から流れる水に溺れる。


「大した奴だ、かれこれ7時間続けてるが、口から出るのは皮肉か冗談だ」


水筒で顔面を殴打され、意識が飛びかけた。


「寝るな、起きろ」


軍人は疲れた顔を浮かべ、例の拷問官を連れてこいと命令する。


「これから熱心なヤツが来るからな。新しく雇ったんだ。水攻めだけじゃない、あらゆる口の割り方を心得てる奴だ」


扉を叩く音が聞こえ、軍人と入れ替わるようにして、更正部屋に入って来た。


短い髪に、腕にタトゥーを入れた女だった。


「私を覚えているか」


女の顔は実に安直だが、親の仇のようなを目をしていた。


「あれでしょ、病院で襲って来たやつ」


クイズ感覚で質問に答えると、警棒で殴られた。


「正解」


「私の父親を知っているか?あんたが、村で銃を持って暴れた時の被害者を」


朦朧とする頭で、正解すると殴られるんだと錯覚し、今度はわざと間違えてみた。


「あぁ知ってる。リーアムニーソンだろ、あの役者父親役多いよね」


どうやら逆鱗に触れたらしく、綺麗な右ストレートが決まった。


「思った通り非道な人間だ!」


ヒガナは鼻で笑う。


「貴女にとっては、人生を変える出来事だったかもしれない」


「でも、私にとっては何でもない、ただの日常だった。だから覚えてない」


その瞬間、女の怒りは爆発し、ヒガナを殴る蹴る叩くの連打を繰り出す。


怒りが収まる頃には、ヒガナはすっかり体力を消耗し、疲れていた。


「顔には傷をつけないでやったから感謝しろ。お前の首を晒して、その面を通行人に見せてやるからな」


そう吐き捨て、今日の拷問は終わった。


ゴミのように部屋へ運ばれ、コンクリートの床に叩きつけられた。


這いつくばってベッドに、たどり着くとやっと眠ることができた。


部屋は骨組みだけのベッドに、排泄用のバケツと、誰の物かも知らないハエが集った血濡れの包帯があった。


前の部屋の主は幻覚に悩まされていたようで、雅?ガという文字を自分の血で壁に書き、破傷風で死んだようだ。


服は生乾きの雑巾のような臭いで、更に職員用の便所から漂う、鼻に付くような臭いと合わさって最悪だった。


看守は隣にいる女が好みらしく、毎日決まった時間にことに及ぶ為、独房にいる人間はそれで夜が来た事を知るのだ。


「痒い」


体を洗わせて貰えないので、体中痒くて堪らない。


「おい、起きろ!」


一時間毎に看守が来て、ヒガナを眠らせないよう歌を歌わせたり腕立てをさせるのだ。


お陰で肌はガサつき、睡眠不足で目は死んでいた。


そして次の日には、口を割らせる為の拷問が始まる。


最初はハンマーで爪を割って強引に爪を剥ぎ、塩を塗り込んだ。


爪は少しだけ残して、また生えて来たら剥がすというらしい。


考えたものだ。


お次は足の指に糸を通し、神経を刺激しながら抜き取り、歩けなくなる程の痛みを味わった。


皮を剥ぎ、綺麗な肉が見えた所で皮を戻して、焼を入れるなんて拷問もあった。


肉体的な拷問も十分きつかったが、なにより自尊心を失わせる拷問は身に堪えた。


1日一回の食事を出さず、ここで看守のを咥えれば飯を出してやると言われた。


生きる為に尊厳すら捨て、必死に働いた。


だが、下手くそだと言われ、水すら与えられなかった。


施設内を全裸で四つん這いで周回させ、出会った人間全員の靴を舐めろと命令された。


一通り回った後は、汚した場所を自分の服で掃除する。


これを週に何度も行い、徹底的にヒガナの心を折らせようとした。


酷く消耗したヒガナは、眠ることすら叶わず、警棒で叩かれ目を覚ます。


「これを読め、大声で」


「私は卑しい豚です!村人を虐殺して沢山の人に迷惑をかけました!どうか罪を償う為に肉奴隷にして下さい!」


聞くに耐えない発表をさせられ、看守と拷問官の女は蔑むような目で見てくる。


「そうか、そんなに奉仕したいのか!だが、残念なことに私は上から呼び出しを受けている。私が戻るまでの一週間良い子にして待っていろよ」


看守はご機嫌な様子で、部屋の外へでて行った。


女の方は、ヒガナに靴を舐めろと命令する。


ヒガナが靴を舐めようと舌を出した直後、顎を蹴り上げられ、舌を噛んだ。


「痛いか?ええ!」


「ハハハ……ワン…ワン…」


挑発するヒガナに苛つき、女はヒガナを踏みつけた。


「クソ!何なんだお前は!」


この世で一番憎い筈の女が、この世で最も健気で辛抱強い女に見えたのだ。


「命乞いの一つでもしろよ!この人殺し!」


彼女の長年イメージした復讐相手の人物像と、実際のイメージが全く違うので、拷問官は更に苛ついた。


「私が良い人間だったら、貴女は殺すのを躊躇うでしょ。だから私は悪い人間でないと……」


かつて復讐鬼だったヒガナだからこそ、分かる心理でもあった。


「こんな奴に私の人生は狂わされたのか」


そんな言葉と共に、憎悪の目で睨むその目が、どんな拷問にも屈しなかったヒガナを発狂させた。


「違う!ちがう!そんなんじゃない!巻き込むつもりじゃなかったの!」


困惑する女をよそに、かつての記憶が甦った。





記憶より


このアマ!よくも娘を殺しやがったな!」


少女は首を締められて、もがき苦しむ。


「あっ ぁ゛っぉ」


銃のストックで何度も腹を殴り付けられ、先ほどまで食べていたクラッカーが、胃液と共に吐き出される。


「行儀もなってないな!野蛮人め!」


少女が泡を吹いて倒れていると、ベルトを外す音が聞こえてくる。


「おいハワードそれは不味いだろ、拷問することはない」


「黙れ!お前に俺の何が分かる!お前はいいよな娘を強姦されて、看板に貼り付けにされてないんだからな!」


私はこの後、錯乱して銃を乱射したんだ。


その時、無関係な人間を巻き込んだ。


そして、村人から向けられた憎悪の目が、怖かった。


その向けられた視線の中に居たんだ。


確かにいた。


私を追う襲撃者の目が、拷問官の目が、この女の目が、私を蔑むその目が確かに存在した。




「ごめ゛んなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめ゛んなさい!ごめ゛んなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんな゛さい!ごめんな゛さい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんな゛さい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめ゛んな゛さい!ごめんなさ゛い!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ご゛めんなさい!ごめんなさい!ごめんな゛さい!ごめんな゛さい!ごめんなさ゛い!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめん゛なさい!ごめんな゛さい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめん゛なさい」


「な、なによ、こいつ」


拷問官は、強がっているが明らかに顔を青くし、トイレに向かって走り吐いた。


様々な感情が溢れる。


それから拷問官は、独房に来なくなった。




なんにちめ?


脱水症状と栄養失調によって、四肢は動かず、拷問によって体はズタボロだった。


もう今日中に死ぬだろうと、思った矢先のことだ。


独房の扉が開き、誰かが水を飲ませてくれた。


「だ、れ?」


「お前さんの前の独房にいる、哀れな無政府主義者さ」


水とトマトの缶詰を与え、何とか命を繋いだ。


「俺の名前はパールだ、よろしく」


「かぎは、どう、やって……」


パールは拷問官が持っていた筈の鍵を見せびらかすと、得意気に言う。


「あの拷問官が落としていったのさ。あれから探しにも来ないから、きっと忘れてるんだろ」


「ありがと……」


「礼なら他の奴に言え、ハッタリかまして食料手に入れたのは、他の独房にいる連中だからな」


こうして、ヒガナは少しづつ体力を回復させた。


ヒガナの独房の目の前にいるパールは、無政府主義者のリーダーらしく、活動中に捕まりここに入れられたそうだ。


仲間に関する偽の情報を流し、拷問を受けずに立ち回っていたようで、こんな環境でも健康そのものだ。


だが、所詮無政府主義者だ。


人は危機が訪れた時、みんなで力を合わせて理性に基づいて行動出来ることが証明された。


等と、喜んでいる様を見て少々呆れた。


人間が自制出来るなら、戦争など起きていないし、我々もここにはいないと思うだろう。


自らの状況が理解出来ていない、楽観主義者だ。


空腹は満たされ、看守が起こしに来ないし、拷問される恐れがない事に安堵すると、ヒガナはぐっすり眠れた。





で……


私は1羽の鳥になっていた……


鳥は何処までも続く 空 を進む……



光り輝く友たちと……



目前にみゆる十字架を追いて……


し……


AGM144空対地ミサイル ヘルファイアが、命中する。


着弾したミサイルは、警備塔や周辺の警察施設を吹き飛ばした。


夜闇を地獄の業火で照らし、多くの者が、地獄に落ちたことすら気付かずに死んだ。


「こちらロックマン22、BDA(爆撃効果判定)を送れ」


「ロックマン22、目標に直撃、その他至近弾」


UAVから発射されたヘルファイアは、目標を正確に破壊した。


しかし、民間人を多数巻き込む結果となったが、最早そんなものどうでもよいのだ。


「仕事の時間だ」


各地域で反政府勢力が決起し、行動を開始する。


起爆装置のレバーが2回叩かれ、ペンタゴンの一角が爆破された。


ECR軍高官が複数名死亡し、大規模な火災が発生。


続いて政府機関として再運用されていたホワイトハウスには、105mm迫撃砲弾が撃ち込まれた。


たいした損害では無かったが、居住棟へ着弾した砲弾が、使用人を吹き飛ばした。


各地のECR軍基地へ、反政府組織によるゲリラ攻撃が始まり、主力部隊が侵攻作戦に参加しているため、人手が足りず対応が後手に回っていた。


この混乱に乗じて、要人救出が始まった。


「隔離病棟まで、突っ走れ!」


ブラックホークのミニガンが、爆撃を生き延びた警備兵を蹴散らし、ヘリの強烈なダウンウォッシュが、自転車やカラーコーンを吹き飛ばす。


ナイトメアの面々が、ラペリング降下で素早く降り、病院内を突っ走る。


「武装非武装に関わらず目標以外は撃て、医者を殺せば1ダース殺せるぞ」


医者の脳天をぶち抜き、車椅子に乗った奴でも撃ち抜いた。


まるで皿に乗った苺のように、白い壁に脳がへばりつく。


カウンターの下で待ち伏せしていた警備員は、顔を出した瞬間、脳幹を撃ち抜かれ即死する。


「増援を要請する!敵はゲリラなんかじゃない!」


激しい銃撃戦で、味方の1人が被弾するが、ナイトメアは構わず攻撃を続ける。


ノーマルM4を持ったマローダ12が、ピープサイトで正確に狙いを合わせ、射撃する。


近年、照準器用のバッテリーを入手しづらいこともあり、光学照準よりもアイアンサイトや低倍率のオプティカルサイトが、主流に成りつつあった。


「HE装填、吹き飛ばすぞ!」


バリケードを構築して頑強に抵抗する敵は、致命傷を負い、のたうち回る。


マローダ14が短機関銃で止めを刺すと、地下へスタングレネードを投げ入れた。


拳銃で健気に抵抗する敵兵士を、カービン銃の連射で制圧する。


「状況報告」「クリア!」「こっちもだ!」


「目標はこのドアの向こうか?」


固く閉ざされた鉄のドアは、銃弾を通さない造りになっていた。


「戦車を1台寄越してくれ!40分!?道が混んでる?知るか!家を突き破ってこい!」


「ショットガンをくれ!絶対通すな」


ドア一枚を挟んで、睨み合いの状態は回避すべきと判断し、突入を強硬する。


「何人死ぬか分からんな」


「どうせ生きてたって、ロクなことしないさ」


扉へ爆薬をセットすると、目と耳を覆った。


爆発による、光や一時的な難聴から身を守る為だ。


扉が吹き飛ぶと、教科書通りスタングレネードを投げ入れ、突入する。


一番最初に突入した隊員が敵弾を受けて死に、室内へ展開した複数の隊員が負傷する。


単発からフルオートへモードを変更し、制圧射撃を浴びせる。


「クソ!ゴミ共を助ける為にこんな場所にくるとはな!」


「こんな奴ら欲しけりゃくれてやる!」


興奮し、声を上げて怒鳴る、階級が高そうな奴に照準を合わせ、狙撃する。


「看守長がやられた!」


「降伏する!撃つな!撃たないでくれ!」


もう、戦う力を残してないのだろう。


奥に引きこもっていた連中が、両手を上げながら姿を表した。


「動くな、そこの檻に入れ」


独房へ降伏した敵を入れると、鉄格子の隙間から凪ぎ払うように撃った。


「お前がパールか?」


髭を生やし、銃撃戦を野球観戦のように眺めていたこの男が、無政府主義者のリーダーだ。


「いやぁ、素晴らしいな。流石国家の犬だ、よく訓練されてる」


「それなら噛みついてやろうか、クソ無政府主義者め」


鍵を壊そうと銃へ向けるが、パールは鍵があると言って独房の鍵を開ける。


パールは、他の独房の囚人も解放し始めた。


「何をやっている、そんな時間はないぞ!」


「なーに、弾除けさ」


死んだ看守の武器を独房仲間へ渡すと、自分達より先に行かせた。


「こんなことをでもしないと、生き残れないからな」


パールは開けっ放しになった保管庫から、押収された自分の持ち物を取り出す。


「まだ取られずに残っていたか」


捕らえられた人間の持ち物は、一緒に運ばれ、脅しや情報交換に使われる。


お前が持ってた酒が欲しいなら情報と交換だ、家族と会いたいなら俺達に協力しろ、と言った具合にだ。


噛み煙草を口に入れると、見馴れぬ装備を発見した。


「こいつはあの嬢ちゃんの……」


何十年も前の物だが、軍の最新鋭装備一式が壁に立て掛けてあったのだ。


装備を持ち、疲弊して動けない少女を担いだ。


「その女は仲間か?」


「どう思う?」


マローダ12は、呆れた表情を浮かべながら腕時計に目をやると、6分で脱出すると言った。




航空母艦 USSエンタープライズにて


第55戦闘攻撃飛行隊 イエロー・バード


「おはよう諸君、ホーネットの調子はどうだ?」


「絶好調です」


「よし、レーダーを避ける為に高度30まで降下せよ」


迎撃機の一機も上がってこない、敵は我々に気付いていない。


この翼下搭載されたMk82爆弾が、ECR軍を粉微塵にするだろう。


「さぁ、革命を起こすぞ!」




軍病院にて


火柱が上がり、何かが吹き飛んだ。


「空爆が始まったな。マローダ12からロックマン22へ、ヘルファイアは何発残ってる?」


「4だ、それ以上は援護出来ない」


「了解、我々が脱出するまでの間食い止めてくれ」


UAVオペレーターは、病院に近付く敵集団を食い止めるべく、慎重に素早く脅威判定を行った。


「敵戦車発見、芝生を荒らしてるな」


住宅を突っ切って移動する戦車は、庭を踏み荒らし、アスファルトを削りながら病院へ向かっていた。


「攻撃する、マスターアームオン レーザー照射 3,2,1 ライフル(発射)」


ミサイルが発射され、着弾まで長いようで短い時間が流れる。


「ミサイル 飛翔時間8秒」


画面に映る戦車が爆炎に包まれ、鉄屑になる。


「グットキル、次だ」


猛スピードで走行する車列が、病院へ進むのが見えた。


軍の車両ではないが、荷台に乗っている人間が、AR15を持っていたので攻撃を実行した。


車列の先頭を狙いミサイルを発射、命中する。


瓦礫で後続車が通れなくなり、集団は車から降りて、四方八方滅茶苦茶に撃ちまくった。


ミサイル攻撃とは夢にも思っていないようで、周りの住民を家から引きずりだすと、無差別に撃ち殺していった。


「これが戦争か……」


複雑な気分になりながらも、次の目標を攻撃する。



「急げ!」


ヘリに向かう彼らは、散発的に攻撃してくる敵を退けながら、屋上へ向かう。


下を見ると、火事場泥棒に来た人間が、大挙して押し寄せてきた。


お陰で敵の攻撃に晒されやすい屋上を、LZ(着陸地帯)にしなければならなかった。


「早くしてくれ!もう弾が持たない」


ミニガンを撃ち尽くしたヘリは、自衛用の小火器で応戦せざるおえず、防戦が続いていた。


「RPG!」


ロケット弾は開いていたドアをすり抜け、安全装置が働くまで飛び爆発した。


「クソォ、各員掴まれ!」


ヘリを離陸させると、RPG発射場所へ向かい、ブレードで敵の体を引き裂いた。


ヘリのブレードが建物にゴリゴリと当たり、今にも壁に激突しそうになるが、絶妙な操縦と感覚でそれを回避する。


「流石、元ナイトストーカーズだ」


褒め称える声を掻き消すように、ナイトメア隊が屋上へ姿を現す。


「早く乗り込め!」


ヘリにヒガナを乗せようと、腕を伸ばし尻がヘリの床に付いた時だった。


「逃げるなーーー!!!」


一発の銃声が怒号と共に響き、ヒガナの耳を撃ち抜いた。


狙撃に反応し、制圧射撃を与えながらヘリへ乗り込む。


「早く出せ、ブラックホークダウンは御免だ!」


機体がふわりと浮き、速度を上げながら、海上の空母を目指して飛んだ。


住宅街は激しく燃え、火の上がっていない場所を見付ける方が難しかった。


港湾施設には多くの艦艇が停泊していたが、対艦ミサイルが命中したらしく、ECR海軍は壊滅したも同然だった。


かつての世界有数の都市は、今では戦争の渦に飲まれ、無秩序が支配する混沌の街へと変貌を遂げていた。


その惨状には誰もが言葉を失い、そして誰もが嘆いた。


全身を傷だらけにし、耳から血を流すこの少女のように、我々も血を流していると嘆いた。

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