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唐突的感覚

「う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぎぃ゛」


「押さえてくれ!手元が狂ってしまう」


油圧式の腕は、痛みに暴れるヒガナをしっかりと押さえつけたが、その声はマドナの感情モジュールを揺さぶらせた。


ピンセットで食い込んだ銃弾をつまみ上げ、摘出する。


「よし、後は縫い付けて安静にしてれば大丈夫だ、プレートがあって良かったな」


医者はゴム手袋を脱ぐと、ソファにぐったりと腰かけた。


「町医者の私が、この3日間でゴッサムシティの医者並みに働いてる」


医者の冗談に、今のはジョークなのか?と部屋の中にいた全員が目を合わせる。


「あぁ、うん……すまない、それで?どうだ状況は?」


「どうだ?ハッ!みりゃわかるだろ」


ヒュルヒュルと空気をかき混ぜる音が聞こえてくると、遠くの方で爆発が起きる。


「まさか、航空機まで動員して来るとは」


「ボストン号は撃ち尽くした」


「俺達は空の敵に対して完全に無力だ」


「なら地上で破壊すればいい」


ヒガナはバレットを掲げ、何か企んでそうに微笑む。





フォートレス民間飛行場にて


「燃料は半分でいい!爆弾だけ載せろ!」


滑走路にイナゴの大群の如く集まっているのは、P/A12ドラゴンフライ哨戒攻撃機である。


かつては、農薬散布機に乗っていた者、海軍の戦闘機乗りに、国際線のパイロットも居る。


悲しいことに、彼らは世界の崩壊と共に職を失い、自らの技術を発揮する最後の場所がここだった。


やり口としては、どこかの町や集落を適当に攻撃し、殺されたく無かったら金を寄越せ、という何とも姑息なやり口だった。


だが、対空手段を持たない集団には、絶大な効果を発揮し、航路を偽装した飛行や徹底した追跡手段の破壊によって、今日に至るまで活動拠点が暴かれることは無かった。


しかし、今回はそうは行かない。


「過去のデータとマップ、戦術データリンクで連中の機体が手に取るようにわかりますよ」


「まさか軍用アンドロイドが居るとは夢にも思ってないだろうな」


マドナはサーマルを起動し、飛行場の様子を探る。


「稼働中の航空機13機、見える範囲で349人を確認」


「駐留機は固定翼機23機、回転翼機2機、あとB17爆撃機が1機」


「奴らあんな骨董品まで持ち出したのか?」


「そうは言っても、爆弾投射量はCOIN機の倍です」


「あれで爆撃されたらひとたまりもないでしょね」


そう言うと、バレットの弾種を徹甲焼夷弾に変更し、給油中の飛行機目掛けて撃ち込む。


しかし、一発では引火せず、その後3発目でようやく火が付いた。


飛行機は大爆発を起こし、作業員数名が火だるまになる。


銃声が飛行機のエンジン音にかき消され、こちらには、まだ気が付いていない様子だった。


「いい感じだな、俺は駐留機を破壊する」


「気を付けてウィリアム」


「心配するな、俺は元SBSだ」


「ほんとぉ?」


ウィリアム援護の為に、マドナは次の目標へ照準を定める。


航空機を銃弾で無力化するには、様々な方法がある。


燃料タンクは勿論のこと、レドーム内で保護されているレーダー、フラップやエアブレーキといったように、いくらでもやり方はある。


だが最も効果的なのは、替えが効かない目標、つまりパイロットを直接キルする事だ。


「そ、狙撃されてる!」


700mの距離でも、寸分の狂いもなく命中させられるのは、FCSが優秀なだけではない筈だ。


マドナは、自信の感情モジュールが熱を持って行くのを感じた。


かつて、機械のもたらす合理的な思考は、感情で動く人間との軋轢を生んだ。


その為、一部の業種に着くアンドロイドに、感情を組み込んだ。


感情を入れた結果、カスタマーサービスセンターへの苦情が1万4576件減った。


その代わりに損傷の酷い個体が増加した。


防衛戦闘に置いては、恐るべき正確性で敵を排除したが、攻勢作戦や掃討作戦では、味方への損害は減ったが戦果も下がったのだ。


研究者達は改めて思い知った。


感情と言う不規則かつ非合理的な存在こそが、暴力性と残虐性、何事にも捕らわれない力を得ていたのだ。


アンドロイドは、そんな機能を取り付けられて放り出された存在だった。


「敵はどこから狙って来てるんだ!」


「このままではノルマが達成出来ないぞ、なんとしても飛ばせ!」


200人が一斉に飛び出すと、ありとあらゆる武器を乱射しまくった。


マズルフラッシュによって、飛行場は花火会場のような煌めきを魅せる。


何発かがこちらに飛んできたが、こちらには気付いていない様子だった。


「やはり襲撃は夜に限るねぇ」


すると突然照明が消え、辺り一面がまっ暗闇になる。


ウィリアムが電力の供給をたったのだ。


更には駐留機が爆発し、炎が上がる。


ウィリアムは攻撃の手を緩めず、背後からブレンガンでマガジン分の30発を射撃すると、陣地を転換、射撃を繰り返した。


向こうプロの飛行機乗りならこちらは、地上戦の

プロだ。


ヒガナ達は自らの土俵に持ち込むことで、戦闘を優位に進めているのだ。


「消火剤と砂を持ってこい!機体が燃えてしまうぞ!」


慌てて、消防装備の入った倉庫を開けると、そこでもまた爆発を起こした。


ウィリアムが予め、チャーチルの体温計を仕掛けていたのだ。


次々と起こる火災に手が回らなくなり、銃撃によって漏れていた航空燃料が気化し始めた。


襲撃から1時間が経過した時、航空燃料が爆発し、文字通り飛行場は火の海となった。







「いいかヒガナ、銃はとても危険だがこの世界では必要な物だ、大事に扱え」


「よし、今日は何の映画を観ようか?ハンニバル?それともミスト?」


「父さんがお前ぐらいの頃は学校に行ったり、クリスマスにはケーキやダイエットコーラでパーティーをしたもんさ」


「よーし、上手いぞヒガナ、母さんに似て乗馬の才能がある」


これは夢だろう。


何故なら、私の父は既に居ないからだ。


「地下室にAA12と装備ある、いいか家を出たら何があっても振り返るんじゃないぞ」


こんな場面見せて何がしたいんだ?


そう思うだろ?そこの君


「グロック1からホーリ13へ、負傷者1名とアンドロイド1体を搬送する、どうぞ」


目が覚めたら、だいっきらいなヘリで運ばれていた。


「おはようヒガナ」


朝日の光に照され、女神のように見えるマドナがそこにいた。


「それで……どういう状況なわけ?」


「実のところ私もよくわからないです」


マドナの話によると、突然戦闘機が低空を飛び機関砲で威嚇射撃し始めた。


ヘリの大群が押し寄せ、中から出てきた特殊部隊が次々と襲撃者達を撃ち抜いていったという。


「ちょっと都合が良すぎない?」


「えぇ、都合が良すぎます」


ヘリは、途中給油を挟んでから軍事基地にたどり着いた。


医務室で簡単な検査を受けると、兵士に連れられ面会室へ通された。


そして、面会室に遅れて入ってきた勲章を幾つも着けた男が口を開く。


「私は元アメリカ陸軍大将のウォーレンだ」


「今はこの基地の司令官だ、すまないね、まだベットで寝ていなきゃならない時に」


「はぁ……」


状況が掴めず、生返事を返す。


「単刀直入に聞こう、これを何処で手に入れた?」


ヒガナの目の前には、携帯端末と光学迷彩装置が置かれてた。


「この装備は、デルタかシールズしか持てない極めて特殊な装備だ」


「これを何処で拾った?」


キョトンとした表情で椅子に座るヒガナが、やっと言えた言葉は「父の形見です」だった。


「なんてこった……あいつ………」


「君の父親は何と言う名前だ!」


「えぇ?あ〜ブラッドリー・ロス」


「じゃあ君があいつの娘なのか!?」


「は、はい、国が崩壊してから産まれたのでIDは登録されてませんけど」


ウォーレンは手を頬と頭に当て、目を丸くしていた。


「君に会えて良かった!本当に良かった!」


ヒガナの手を取り、ブンブンと振り回して喜ぶ。


「???????????????????」


その様子に酷く困惑しながら、ヒガナは目を動かして、何処に向ければいいのかわからない顔をした。

コロナ感染者が身近に出てしまい、少々困惑しております。

皆さんも自分のお肌が荒れないようにしながら、マスクを着けてクラスター回避をお願いします。



そういえば、アゼルバイジャンとアルメニアが紛争状態らしいです。


ロシアやトルコ、EUがどう出るか注目ですね

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