2話
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「くっ、ここは?」
学校で異様な光に包まれたあと、悠太は真っ白な空間で意識を取り戻した。
「やあ、悠太くん、起きたかい?」
声をかけられた方に顔を向けると、白い空間に2畳の畳が敷かれており、その上には、昭和的ちゃぶ台、湯気の立っているあたたかそうなお茶やお菓子、ブラウン管テレビが置かれている。
悠太は、畳の上で正座をしながらお茶を飲んでいる人物をよく見ると、白い羽の生えた、成長したらとてつもないイケメンになろう、児童がいた。
知らない児童から名前を呼ばれ、冷静さを失いかけながらも悠太は答える。
「…君は?」
「僕は世界の管理者。んー、そうだね。君たちの言葉でいうと…かみしゃましゃ…」
空気が凍る。
「…ん?」
悠太は耐えきれず、思わず聞き返してしまう。
「…コホン、き、聞こえなかったようだね!君たちの言葉でいうと、神様さ!!」
噛んだことは言及してほしくないようだ。
「で、そのかみしゃまが俺に何の用だ?」
「くっ!!噛んだことは流すのが紳士、淑女の嗜みなのだぞ!!」
そう言いながら、自称神様は畳の上で地団駄を踏む。
「すまない。俺は紳士に慣れそうに無い様だ」
「ぐぅ!…ぐぅの音も出ないとはこのことか!!」
「いや出てるから。さて、そろそろ話戻さないと進まないな。(てか神様なのに姿のせいでタメ口になってしまう。まぁ、駄目なら注意してくれるだろう。)」
一拍おいて、改めて悠太は伺う。
「で、何の用だ?」
「学校で光りに包まれただろう?あれは君たちとは別の世界である【アルネイシア】の、とある国の異世界召喚による儀式で生み出された光さ。その光に入っていた者は強制的に力を与えられ、アルネイシアへ召喚されるのさ」
「…ラノベあるあるかよ。で、光に入っていたものは、召喚される前に神様と出会ってある程度チュートリアルがあるわけか?」
「いや、悠太君以外の子たちは、僕に会わずにそのまま召喚されているよ」
「ん?じゃあなんで俺だけ神様と話している?」
自称神様は人差し指を勢いよく、悠太に指す向ける。
「悠太くんが、今までに召喚された人間の中で桁違いの素質を持っており、最強の称号を渡すためさ」
桁違いの素質?最強の称号?悠太は自称神様の言っていることについていけない。
「何が何だか、という顔だね。まずは称号について説明しよう!」
悠太は、ドヤ顔しながら長々と話す、自称神様から聞いた称号についてまとめた。
・称号はその人が持つ素質で決まる
・称号はその人の力を表す。
・アルネイシアに住んでいる人達も称号を持っているが、地球から召喚された者の称号のほうがより強力
・称号で大半の強さが決まるが、鍛錬次第では格上の称号を抜くことも可能
「さて、以上が称号についての説明だ。さてさてさて、君は何の称号を手にするのか...すごく、すごく気になるだろう!?」
自称神様は瞳に星が入っているかのような、キラキラした目で悠太に問いかける。
「気になるが、そのドヤ顔で聞いてくるのうざいから神様からは聞きたくない」
「あべし!ひどい!ひどいよ!確かにドヤ顔していたかもしれない!でも、それは人間と話すのはウン千年ぶりで舞い上がっちゃっただけなんだからねっ!勘違いしないでよねっ!」
「(…外見男の子にその言い方されてもな…)」
「あっ、何そのジト目!やめて!こっちみないで!」
「じゃあ、さっさと召喚してくれ」
「なんでだい!?そんなに僕といるのが嫌なのかい!?」
不安そうに、且つ慌てながら自称神様は悠太に顔を近づけて問う。
「(うわー!こいつめんどくさ!!かまってちゃんかみしゃまだったのか)」
「こら!言っとくけど心の中の声聞こえているからね!プンプンッ。ちなみに僕は子供で男の子の姿をとっているけれど、性別なんてないから!」
「ほへー、そうなんだ。知らなかった。じゃあ、そろそろ称号について教えてもらって良い?」
「うわ!薄っ。リアクション薄!はぁ、わかったよ…。基本的に召喚された際に力の強いものに与えられる称号は【勇者】だ」
自称神様は諦めたかのように、顔を伏せ、左右に揺らしながら答えた。
「うん、何となくそうだろうなという気はした」
「召喚されたものは一般的に異世界の勇者とか召喚された勇者と呼ばれるが、称号については様々だ。戦士、魔法使い、魔法戦士、賢者、魔闘家、武闘家などなど。そして、召喚された勇者であり、なおかつ称号に関しても勇者であるものが、いわば真の勇者ということだ」
「少しわかりにくいが、称号にかかわらず、召喚されたものは勇者と呼ばれることはわかった。で、俺は称号も勇者ということなのか?」
「いーーや、ちがう!!君はもっともっと上さ!実は称号には勇者よりも上の称号が存在するのだよ。その一つが、大勇者さ!」
「…だ、大勇者…安直すぎない?」
「んー、でも他にいい名前が思い浮かばなくてねえ。というか考えるの面倒くさいし。あ、ちなみに大勇者は召喚された者の中に2人いるよ。だけど君は大勇者ではない。もっと上の存在さ」
「ん?勇者が強いとか言ってたのに、大勇者があってさらに上があるとか、勇者そんな強くないんじゃないか?」
「いやいやいや、勇者の称号はすっごいよ!称号は階級があって1等級の上である特級に位置するものだ。1等級であれば国を動かせるほどの力はあるし、特級ともなれば、鍛錬にもよるけど、大陸や世界をも支配することができるくらい強力だよ!」
「へ?それなら大勇者はどうなる?」
「んー、そうだねえ。ある程度の鍛錬でも世界取れちゃうね!てへぺろ」
「可愛くねえし、大勇者恐ろしいし、そんな称号を2人も渡すんじゃねえよ!てか、その称号チートすぎだろ!」
「まあまあ、昔もほんとたまに大勇者になった人間がいて、その人間は特に何もしなかったから今回もきっと大丈夫さ!」
「(全く論理的根拠がない…この神、すごい不安)」
「そんなことより、君のすんごい称号知りたいだろう?実はね、その称号自体はあったんだけど、誰もなったことなかったからさ…名前つけてないんだよね!!」
名前をつけていないことにすごくドヤ顔で語るさまに、悠太は苛立ちながら答える。
「…で、俺が決めていいのか?」
「いや、今名前を決めたよ!勇者、大勇者ときたからね!最強の称号にふさわしい名前を考えた!期待してくれ!!」
「(あ、やばい、悪寒しかしない…)」
「ドゥルルルルルルルルルルル…デン!名前は!【勇者王】!!どうだ!すごくすごくかっこいいだろ!!」
…
「くっそだせええええ!絶対無理だ!そんな称号みんなに見られたら笑いものにされて後ろ指さされるわ!!!」
「な、なんてこというんだ!僕が直々に、且つ320年間不眠不休で考えた名前だぞ!!」
「お前さっき、今決めたって言っただろうが!この駄神が!!」
「な…も、もう怒ったぞ!悠太くんは僕を敬う態度がなっていないようだね!」
「そんなセンスなさすぎる命名する神を敬える気になれるわけ無いだろ!」
「セ…センスがない…だと…。ククク、そうかそうか。わかったよ悠太くん、ならば!絶対君の称号の名前、変えてあげないから!少しは君に名前を考えさせてあげようかと思ったけど、勇者王という名は不変にしてやる!!」
「なっ…」
この絶望に悠太は絶句する。
「はーはっはっはっはっはっは!!はぁはぁ…。ということで、悠太くん!勇者王となり世界を救うなり、支配するなり満喫してくれたまえ!!」
「ふざけんなっ!そんなダサい称号で満喫できるわけっ…」
「では!そのうちまた会おう、悠太くん!アデュー!!」
自称神様が強引に話を断ち切り、手を振ると悠太の立っている地面から光が溢れ出す。召喚された際の光と同じだ。
「おい待て駄神!この称号の名前を変えてから召喚…」
悠太は話の途中で召喚されていくのだった。
「君には本当に期待しているよ、悠太くん」
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