1話
どのくらいの文字数が読みやすいんだろう?
「いてて、ここはどこだ?」
一番最初に声を出したのは克哉だ。克哉は肩を打ったようで、左肩をさすっている。
他の皆も気が付き、起き上がり始めている。
悠太はまず周りを確認した。
周りを見ると、石造りの柱に大理石のような床、5メートルはあろう高い天井には、きらびやかなシャンデリアが爛々と明かりを灯している。
明らかに日本ではないし、現代のヨーロッパでもお目にかかれない物ばかりで、おまけに電気も機械も見当たらないことから、悠太はここは今までいた世界ではないと【再確認】する。
「あなた方が、勇者様ですね?」
声がした方へ振り向くと、そこには見目麗しい女性が立っていた。
外見は金髪碧眼で少し吊目、そして毛先は縦に巻かれていた。体型は標準で年は18~20ほどに伺える。
「ええと、あなたは?それに、勇者とは...」
ここでも主人公基質な、克哉が答える。
「失礼いたしました。私は、このリンデグランド聖王国の第一王女のガーネットと申します。実は、あなた方にお願いがあり、今回召喚をさせていただきました」
ここで勘の良いクラスメイトは気がつく。
「おい、これってまさか。。」
「ラノベの異世界召喚ってやつ...?」
「ぶひぃぃぃいっ!テンプレキターーーー!」
喜んでいるのは基本男子であり、女子たちは大抵不安そうな顔をしている。
「不安はあるかと思いますが、断じてあなた方に危害は加えません。まずはこの国の聖王のもとへご案内いたします。質疑応答についてはそこで行いますので、まずは付いて来ていただけますでしょうか?」
皆は不安や期待が入り混じりながらも、第一王女についていく。
周りには護衛の兵がいるが、武器は持っておらず、悠太らを威圧する気も無く一緒に付いて来ている。
大分長い廊下を歩いたところ、高さ3メートルほどの両開きのドアの前に付く。
扉は非常にきらびやかで、いたるところに金の装飾が施されている。扉の左右横には虎のような銅像が設置されており、厳かな空気を醸し出している。
護衛が扉を開くと、レッドカーペットが敷かれており、その約20メートル程先に王冠のようなものを被った中年の男性と、きれいな女性が座っていた。
「お父様。勇者様方をお連れいたしました」
「うむ、入るがよい」
中に入り、悠太は聖王を見て思う。
「(このおっさん、めっちゃガタイやばい!怒らせて殴られたときには顔と体が分離する!)」
聖王の外見は、髪や髭はは白髪交じりのメッシュ。王様の威圧感と鍛え抜かれた体が程よくブレンドされ、より一層王者の貫禄を醸し出している。
そのような聖王の前に立たされた生徒たちは、不安と恐怖でいっぱいとなっていた。
「(テンプレで来るなら聖王は勇者たちを物のように扱う極悪非道なやつなんだが…)」
悠太はそう思いながら、聖王からの言葉を待つ。しかし、聖王から出た言葉は意外な一言だった。
「まずは、今回の件について先に謝らせていただきたい。皆さんを急にこの世界へ呼び出して本当にすまなんだ」
謝罪の言葉だけでなく聖王は立ち上がり、頭を下げたのだ。
謙虚な発言に、テンプレ好きな生徒たちも皆困り顔をしながら囁く。
「あれ?こういうのってテンプレだと普通、王様すげー上からとかじゃない?」
「だよね。なんか周りに怪しそうな魔道士みたいなのいたりさ...いないね」
「ぶひぃ!少し妄想とは違うが、この程度の差異は些事だよフゴッ!」
「(ぶひぃはどうやら、異世界召喚ラノベマスターのようだ。なんか意味わからないくらい慣れてる。)」
と、悠太はぶひぃと呼んだ人物を解析。
「実はこの世界では最近、魔王の誕生が確認された。魔王は魔族の王であり、この世界を手中に収めんと戦火を以って他の種族を蹂躙する恐ろしい種族だ。これに対抗できるのは、この世界で強い力を持つものだが、それでも魔王は倒せなんだ。そのため、遥か古より伝わりし、勇者召喚の儀式を行いそなたたちに助力を願ったのだ。
聖王は悔しげに膝の上においた拳を握る。悠太は、聖王が地球の子どもたちを召喚したことについて、本当に苦渋の決断をしたように見えた。
ここで第一王女が前に出る。
「あなた方はこの世界に召喚される際に、とてつもない力を宿して転移してくると書物には記載されておりました。その力を以って魔王を討ってはいただけないでしょうか?」
周りは、なんと答えたら良いかわからず、沈黙とする。だが、それは当然だと悠太は考える。突然、異世界に召喚されて住んだことのない世界を守るために戦って欲しいと依頼されて即答でロ●ラばりの「OK☆」なんて言えるはずがないのだ。
「(これには、さすがのラノベマスター・ぶひぃもだんまりしているな。あっ、違うわ。漂っている食べ物の匂いに集中してるだけだわ。フガフガ言ってる。)」
ここで、静かに耳を傾けていた克哉が皆に代わって答える。
「あなた方のお願いについては理解した。ただし、その回答を出す前にいくつか質問したい」
「うむ、こちらの一方的な依頼では納得されないだろう。答えられることであれば包み無く答えよう」
聖王は姿勢をただし、克哉の質問に耳を傾ける。
「まず、魔族とはなんでしょう?人間以外にも他の種族がいるということでしょうか?」
「うむ、この世界では人間だけでなく、ドワーフ族や、エルフ族、獣人族、妖精族、竜人族や小人族など様々な種族がおる。基本的に彼らは、彼らのテリトリーが存在し、そこで国を作りそこで暮らしている。
魔族も同じだが、魔族は自分の種族が一番優れていると考えており、他種族を邪魔だと考えておる者が殆どだ。そして魔族の王、魔王はその概念を非常に強く持っており、他種族を邪魔扱いどころか排除すべき対象と見ておる。故に魔族は他種族から危険視されており、魔王が誕生した際は国を固め防ぐ、もしくは討伐を行うのだ。」
数拍おいて、克哉は尋ねる。
「...話から推察すると、魔王は以前も誕生しているということでしょうか?」
「うむ。魔王は166年周期で誕生すると聞いておる。事実、伝書から前回の誕生から166年後である、今この時代に誕生が確認された」
「なるほど、魔族が危険なことについてはわかりました」
克哉は一旦話を区切り、再度質問を続ける。
「次に、私達が力を宿している件についてです。私達は特に誰かから力をもらった覚えはありません。それゆえにどのような力を所有しているかもわかりませんが…」
「それについてはこの後にそなたたちの【称号】というものを確認する。その称号の内容で強さや適性がある程度わかるようになっている。詳しくはその時に話す所存だ」
「わかりました。では、最後の質問です。...私達は元の世界に帰れますか?」
ここで、今まで不安そうに顔を伏せていた女子たちが、一斉に顔を上げ聖王の顔色を伺い、次の言葉を待つ。だが、回答はその女子たちの期待を裏切るとも言えるものだった。
「結論から言うと、わからない。が答えになる。伝書を確認したが、元の世界へ帰下という伝書もあれば、帰す術がわからぬため、そのまま住んでもらったという伝書も存在した。元の世界に帰せた伝書についてはその術が記載されておらなんだ。ただ、魔王を倒した際に覚醒した勇者様方の【称号の力により】とだけ記載があったのだ。全く期待ができないわけではないが、確実に帰れるとも言えず、本当にすまない」
不安になっている女子はまた顔を伏せて涙目の状態となったが、特に反論や罵倒はない。無いというより日本人特有の奥ゆかしさから言えないといったほうが正しいだろう。
「...とりあえず、状況はわかりました」
克哉は拳を握りながら答える。
「うむ、魔王討伐の件については後日改めて伺おう。まずはそなたたちの力を把握するためにも、称号を確認しよう。ガーネット」
「はい、ではみなさま、私に付いて来てください」
「(とうとう、この時が来たか...俺の称号が明るみに出るこの時が...)」
そう思いながら、悠太は召喚される直前の記憶を掘り起こすのだった。
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