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異世界トラベラー  作者: 内藤 健
4/5

初めての勝利

 大会当日

「それでは今より第132回決闘大会を開催いたします!!」

「「「いぇぇぇぇぇぇーーーー」」」

大会の司会者が開催を宣言した瞬間、観客たちは奇声をあげた。「それでは早速。1ブロック代表シュウイチ選手対2ブロック代表サイモン選手の試合を始めます!選手入場ー!!」

西側の入り口から修一が、東の入り口からサイモンが現れた。

「おいおい予選と違って。すごい人数だなー。少し緊張する、、」

修一が舞台に上がると観客の声は一段と大きくなった。

「それでは両者、構えてください。」

観客の声は水をうったように静まり返った。修一とサイモンは自分たちの剣を取り出し構えた。そのときさっきまであった修一の緊張はスッときえた。考えているのは、勝つことだけである。

「始め!」

審判が叫んだ。そのとき、修一はもう最初の立ち位置にはいなかった。サイモンに向かって突進をしていた。100メートルはあろう距離を数秒で走りきった。そしてサイモンの目の前にきた。

「はっ」

修一は文字通り目にも止まらぬ速さで剣を振った。

(決まったな。)

修一はそう思った。しかし

カァーン

サイモンの剣が修一の剣を止めた。

「おっと。」

修一は驚きサイモンと距離をとった。

「おぉーっと。いきまりすごい展開だ。シュウイチ選手の凄まじい速さの攻撃をサイモン選手、受け止めた!我々には振ったときの剣の姿が見えなかったが彼には見えているというのか。」

「「「うおぉーー !」」」

周りは一気に盛り上がった。

(さすがはブロックの代表選手だ。いままでのやつらとは一味違うな。)

修一が構え直し次の一撃をどうするかと考えていると、

「凄まじい速さだな、しかしそんな単調な攻撃では俺に勝つことじゃできんぞ。」

今度はサイモンが修一に剣を振り下ろしてきた。サイモンはこの時自分の剣を防ごうとしない修一を見て一本取れたと思ったのだろう剣の速度をはやめた。

「ふっ。」

修一は不適に笑う。

サッ

この瞬間誰にも何が起きたかはわからなかった。わかっていたのはさっきまでサイモンに切られそうだった修一がいつの間にかサイモンの後ろで剣を振ったかのような体勢で立っているということだけだった。

「安心しろ。傷は浅くしといた、剣の切れ味もいいからそんな痛まないとおもうぜ。」

見るとサイモンの左腹部からじんわりと血がにじんでいた。

 なんと、修一はサイモンをあの一瞬、剣との距離がわずか数十センチにも満たないその瞬間に切ったのである。誰にも見えぬ速度で。

「な、何が起こったかはわかりませんでしたが勝者はシュウイチ選手だぁー。」

修一が剣を鞘に納めると観客の歓声が沸いた。

 剣を納めると修一は舞台から入り口に向かって歩いた。すると、次の選手であろう入り口に体格の細い男が立っていて、すれ違い際に修一に話しかけてきた。

「凄い速さだったな。周りのやつらには、まるで見えなかっただろう。  けど、俺にはあの剣技は見えたし止められた。」

その男はうっすらと笑みを浮かべ修一の耳に囁いた。

「なっ。」

彼の発言の内容と話しかけられたことに修一は驚嘆と戸惑いの声を上げた。彼の方を見ると彼は舞台へと歩いて行った。修一も反対方向に歩き出した、笑いながら。その笑みはまるであれが自分の本気ではないと言っているようだった。

「次の試合は――」

後ろから司会の進行が聞こえるなか修一は控室に戻っていった。

 その後、試合は順調に進み第2回戦目が始まり修一の出番が再び訪れた。その対戦相手は、、

「さぁー、早くも2回戦目が始まりました。初戦の選手は1回戦目で驚きの速さを見せてくれたシュウイチ選手だ。それに対するはひょうひょうとしていてまるで本気を出しているように見えなかったザラン選手だ。」

「「「うおぉーー !」」」

対戦が終わった後に修一に話しかけてきた男、ザランであった。司会の説明どうり、ザラスはひょうひょうとした態度で常に唇を吊り上げ笑みを浮かべていた。

「両者、構えて」

しかし、そんな様子でも剣を握った瞬間、ザラスから紛れもなく殺気を修一は感じた。それと同時に彼の実力が伝わってきた。その威圧は先の挑発がはったりではなく事実であることを語っていた。

「それでは、始め――!」

1回戦目と同様、修一は全速力でザラスとの距離を詰めていった。

(やつが言っていたことは嘘ではないだろう。今までどうりにはいかないだろうな。)

修一はザラスと剣が届く範囲までくると右から左へ横切りをした。もちろん今までと同じでその剣が見えることはなかった。ただ一つ違ったのはザラスには見えていたということだ。修一の剣は見事なまでにザラスの剣で受け流された。

 ザラスはすかさず剣を修一に振りかざした。修一は剣を振り戻した。

パキィーーン

剣と剣同士が正面からぶつかり合い、そのままつば競り合いになる。修一の目の前にはいまだ笑みを浮かべているザラスの顔があった。

「あの状態からよく防げたな。さすがの速度というべきか。」

剣同士によって金属のすれる音が聞こえるなか、ザラスは修一に話しかけた。まるで自分にはまだ喋る余裕があると修一にアピールするようだった。

「あんたもやるじゃないか。見えているとはわかっていたが受け流されるとは思わなかったよっ。」

修一はザラスの剣を弾き後ろへ下がった。と思った瞬間、修一はすでにザラスの懐にいた。そして、二度目の攻撃を仕掛ける。

シュン

しかしまた流された。修一は同じ手はくらわんと言わんばかりに追撃をするもまた流される。これを繰り返していた。

 周りが聞こえるのは空をきっている音だけだったが修一がどれだけの速度で剣を振っているのかを理解するのには十分だった。そんな攻撃をザラスは受け流しているのである。

「それじゃ俺には勝てないぜ。」

激しい剣撃のなかザラスはまだ余裕というように修一を挑発した。

「おまえ、、、」

(おれはこいつみたいなやつは嫌いなんだ。)

修一が体全体に力をこめる。すると明らかな変化が起きた。

パキン

剣同士がぶつかる、受け流しではでない音が聞こえてきた。その音はだんだん聞こえる回数が多くなっていった。

バキーン

遂に修一の速さについていけなかったザラスの剣が弾かれた。

「なに、」

「ウォーミングアップの相手、ありがとよ。」

今までのザラスの挑発を返すように修一はザラスに言い放ちザラスの脇下を素早く通り過ぎていった。そのときの斬撃はザラスの脇腹をなでるように切っていった。

「凄まじい攻防戦を制したのは、シュウイチ選手だー!」

歓声が聞こえる中、修一は満足げな笑みをを浮かべ剣を鞘に納めると、舞台を退場した。

(次はいよいよ決勝か。この調子だともしかしたら『あれ』を使わずに優勝できるかもしれないな。)

数十分後

「さぁーいよいよ決勝戦のはじまりです。幾多の猛者どもを倒しここまで上がってきた二人の選手の入場です!」

「「「うおぉーー !」」」

今まで一番大きな歓声が上がった。

「それでは、シュウイチ選手、ゴマク選手両者とも構えて。」

修一とゴマクがそれぞれ剣を抜き、構える。

(こいつ、凄いな。剣を抜いた瞬間こいつの圧が一気に増したのがわかる。しかもさっき戦った、ザラスとは段違いだ。こいつはうかつに突っ込んだら危なさそうだ。)

「始めーーー!!」

今までと違い修一は突っ込まずゴマクのの出方をうかがう。

「ふむ。今までの試合と違い開幕の一撃をしてこないのだな。ならばこちらから行くぞ。」

ゴマクが低くどすのきいた声で言うと修一との間合いを詰めてきた。そして剣の届く範囲まで来ると右手に握った剣を左から右へ横切りをしてきた。修一ほどではないがなかなかの速さで剣を振るう。

パキィーーーン

修一はそれを受け止めた。しかし、

「重っ!」

あまりの重さに驚きの声をあげながら後に下がる。その重さは今まで戦ってきたそれとはまったく違ったもので受けた後もなお、痺れが修一の手には残っていた。

 その隙を見透かしたかのようにゴマクが追撃の一手を修一に放つ。

(そっちがパワーで来るならこっちはスピードによる手数の多さで勝負してやる。)

重みを持つ左斜め上からのゴマクの剣を修一は三回の斬撃で威力を減らし四回目の斬撃で受け流した。ゴマクの体が傾いた瞬間に追撃をする。

パキン

 ゴマクは間一髪で剣を自分のところまでもどし修一の剣を防いだ。けれど、修一はこれで止まらない。さらに一手またさらに一手と防がれるたびに次の剣技を繰り出す。その斬撃は一秒につき何十回と繰り返されていた。しかしゴマクの剣はびくともしない。やがて、

パキィーーン

 修一の連撃に一瞬の綻びができた瞬間をゴマクはブレイクした。修一はその反動を利用しながら後ろへ下がった。

(こいつ、、、今の速さじゃあの頑丈な剣を崩すのは無理そうだな。あの連撃がだめなら『あれ』を使うしか、、、)

「なかなかの受け流しと連撃だったな。しかしそれではわたしはたおせんぞっ!」

ゴマクが先と同じ構えで剣技を繰り出そうとするのに対し修一は剣を握った右手を左腹部に持っていき空いている左手を右上に持っていく。

「同じ手はくらわん!!」

ゴマクの剣が先の一撃よりも早くそして重くなり修一へ迫る。

パキン

剣同士が当たるも修一の剣はゴマクの剣を受け止めきれず、その勢いのまま虚空を切った。そして突きの剣技が修一めがけ飛んできた。誰もがゴマクの勝を確信した。

パキィーーーン

 とその時、驚くべきことに修一の剣はゴマクの剣を逸らしたのである。その奇跡の剣は()()に握られていた。まるで驚きで世界の時間が止まったような一瞬に修一は動きゴマクに勝利の一撃を加えようとするが、ゴマクはこれを防いだ。そしてまた連撃が始まる。しかしこの連撃は先のものより明らかに速度が上がっていった。それだけではない今まで動いていなかった左腕も連撃と同調して動いている。

 つまり修一は()()で一本の剣を振っているのである。剣を振り切った瞬間空いている手に剣を渡すことで振りなおす際の時間を短縮し斬撃をより早く繰り出しているのである。

パキィーーン

ついに修一の連撃がゴマクの防御を打ち破りゴマクの体制が崩れる。そして修一はゴマクの空いた腹に勝利の一撃をあびせた。

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