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ダンジョン6

 奏太は彰に言われた通り、自分のステータス画面のスキル項目を確認する。するとそこには自分の記憶にはない魔力感知というスキルが記載されていた。


(レベルが上がったわけでもないのに何でスキル増えてるんだ?)


 そして、知らぬ間に取得していたスキルの効果で、キャタピラーの角から放たれた魔力を光として検知できたということなのか。


 奏太が不思議に思っていると、「やっぱり……」という呟きが聞こえた。奏太が声の出所に目線を向けると、そこには少し興奮した様子でこちらを見つめる彰がいた。そして、彰は口を開く。


「奏太、スキルが増えてたんだよね?」


「ああ、魔力感知ってスキルが何でか増えてた。彰は何か知ってるのか? レベルが上がってないのにスキルが増えることがあるのか」


「えっと……初めてダンジョン入ったときに、最初強い違和感を感じたよね?」


「ああ」


 飛行機乗ったとき気圧の差で耳が詰まったりするように、魔力が多い場所にいくと身体が違和感を覚えると授業で聞いた。ダンジョンの外も魔力があるらしいダンジョン内に比べたら圧倒的に薄いらしい。そもそも、魔力が昔からこの世界にあったのかは定かではないのだが、それはひとまず置いておこう。


「でね、その時にスキルを取得ことがあるって話なんだ。ただ、それを言った人以外にスキルを取得できたっていう情報が出てないんだよ。だからその人が見落としてただけじゃないかって言われてたんだけど……」


(なるほど……、図らずもそれを証明してしまったということか。まぁ、取得していてもその事実を公表してないだけの人もいるんだろうがな)


「とはいってもレベル上がればスキルなんて取得できるんだから別に大したことじゃなくないか?」


「うん、それはそうなんだけどね。それを言ってたのは、今第一線で活躍してる冒険者なんだ。名前は九条勇也」


「ほう?」


 どこかで聞いたような気もする。しかし、思い出せず奏太は目をパチクリさせた。そして、周りに目を向けるとみんな驚いた表情をしている。どうやら心当たりがあるらしい。


「あははー、勇者って言えば奏ちゃんもわかるかな」


 いまいちピンときていない奏太の様子を察した美緒が苦笑いしながら言った。


「!?」


 勇者、それは流石に奏太も知っている。モンスターのスタンピードが起きた際に、先陣を切って活躍し、日本に勇気と希望をもたらした立役者の1人だ。奏太は頬を引き攣らせた。


「あ〜、うん、確かに聞いたことあるな。……今聞きたくない呼称だけどね」


 聞かなかったことにしたい気持ちでいっぱいの奏太に、彰はさらに追い討ちをかけるように言う。


「はははっ、しかも九条勇也が取得したスキルっていうのが、その魔力感知だっていう話だったよ」


「……それも聞きたくなかった」


 スキルを取得したといえばいいことだ。ダンジョンに潜る以上、スキルは大切なんだということは理解している。しかし、勇者が同じ条件で取得したという話が後味を悪くする。


「できればこのこと他の人には言わないで欲しいんだが、頼めるか?」


 苦い顔をして口止めを頼む奏太に、恵は不思議そうな顔をする。


「何で? すごいことじゃない! 私なんてレベルも上がったのに、スキル増えてないわよ」


「ただでさえ年齢が若返ったとかいう不思議な状態なのに、これ以上厄介な話を広げたくないんだよ。それにたぶん、その勇者以外にも今までに同じようにして、魔力感知スキルを取得した人はいるだろうけど、目立つのを恐れて隠してるんじゃないかな?」


 奏太がもう少し若い頃なら自分は特別なんだと錯覚しているところだろうが、社会に出て変な注目を浴びる怖さを多少なりとも知っている。


「そう……ですね。衆目を集めると厄介なこともありますし、他の人には話さない方がいいかもしれません。私たちが通ってるのはダンジョンの学校ですから、こういうことにはことさらみなさん敏感ですし」


「どうせなら、私たちの実力を上げて、ダンジョンで成果をしっかり上げてから伝えればいいのよ。そうすれば外野が何を言おうが気にならないわ」


 玲奈と美緒の言葉に恵も納得し、うなづいた。


「そうね。まずは見合った実力が必要よね。私だってこれから強くなっていけばいいのよね」


 そういって、恵は自分の手を握りしめた。

 そして奏太が彰を見ると、彰は頷いて言う。


「僕も他の人には言わないよ」


 これで一先ず安心と奏太は、ほっと溜息を吐く。


「奏太は色々イレギュラーな存在だから、もしかしたら特殊職につけるのかもしれないと考えるとワクワクするよね」


 最後の言葉は聞こえなかったことにした。


 ♢



 さて、どうするか。約束の10分なんていうのはあっという間に過ぎてしまった。その間、モンスターが出てくることもなく、周りを警戒しながら雑談をしていただけだった。


 高梨先生が入っていった狭い道を見ながら、玲奈が呟くように言う。


「高梨先生、戻ってきませんね」


 そして、パーティーメンバーで顔を見合わせる。


「どうしましょうか? 高梨先生に言われた通り、私たちだけで戻りますか?」


 玲奈の言う通り、ここは戻って他の教師に伝えるのが正しいだろう。だが、もう少し待てば帰ってくるかもしれないという気もしている。それは奏太だけでなく、パーティーメンバー全員が感じていることだ。


「ねぇ、ちょっとだけ、見にいってみない? 少し行っても先生がいないようだったら直ぐに戻ればいいんだし」


 美緒の提案に心がぐらつく。ダンジョンに入ってから、奏太達パーティーはモンスターとのエンカウントは1回だけだ。拍子抜けに感じてしまうところもあるが、逆に不安に感じる部分があるのも事実だ。一番レベルが高く、始動役である高梨先生が居ない状態でダンジョンを戻ることに不安を感じているのだ。


 奏太は高梨先生が行った地図に載っていない通路を見るも、誰も戻ってくる気配はない。


「そうね。少しだけ、少しだけ進んでみましょう。それでダメならみんなで急いでダンジョンから出て、他の先生を呼びましょう」


 その提案に反対するものは誰もいなかった。

 現在地からダンジョンの出口までは40分くらいかかってしまう。今、ダンジョンを出て他の教師がここに駆けつけるまで最低でも1時間は掛かってしまうだろう。モンスターが現れたらそれ以上にかかってしまう。そのリスクを考えた結果だ。


「わかった。ただ何があるかわからないし、索敵スキルがある俺が前を歩く。本当に少しだけ進んで、誰もいなかったら直ぐ戻るぞ」


 奏太の言葉にパーティーメンバー全員が頷いた。

 そして奏太は先頭に立ち、深呼吸を一回してから細心の注意を払いながら進む。先頭に奏太、最後尾に彰と前後を探索スキル持ちの配置だ。


 地図に載っていない道は、奏太の警戒とは裏腹に今までの道と特に変わりなく、モンスターもいる気配もなく、景観も変わらず薄暗くなるなどということもない。入口からゆっくり3分ほど進んだところで、少しだけ広いスペースに出た。広いスペースといっても元の通路と同じくらいの幅になった通路が2mほどあるだけで、そこから先はまた狭い通路が続いているのが見える。


 スペースに出た奏太は何かあるのではと身構えたが、特に何もない。奏太に続いて全員がそのスペースに入った。


「ここまでにしよう。まだ道は続くみたいだけど、これ以上進むのは良くないだろう」


 奏太以外のパーティーメンバーもこれ以上進むのは良くないと判断したのだろう。反論は出なかった。ただ、その開けたスペースを皆が思い思いに見て回る。


「それにしてもここ何なのかしらね? ただ広いだけで何にもないし……」


 恵の言う通り、奏太にはここが今までと何が違うのか全然わからなかった。すると美緒が声をあげる。


「何かないのかな〜?」


 美緒は壁をペタペタ触わりながら見て回っている。その様子を見て、嫌な予感を覚えた奏太は美緒に近づいていく。


「なぁ、あんまり触んないほうがいいんじゃ……」


 奏太が言い終える前にカチッという音がし、その瞬間何か飛翔する物体が奏太の横を通過しようとする。


「ん?」


 奏太は、反射的にその物体を右手で掴んでいた。ヒヤリと冷たく、硬質な感触、そして鋭利に尖った物体の先端は美緒を向いていた。


「うぉ!」


 奏太は自分の手が掴んでいた物体に驚いて、思わず手から落としてしまった。それは地面に落ち、カーンっと硬質な音を立てた。それに驚いた美緒は思わず腰を抜かして座り込んでいる。


「大丈夫か?」


「美緒! 大丈夫?」


 玲奈も駆け寄ってきて、美緒を助け起こした。他の二人も集まってくる。


「ご、ごめんなさい! 不注意だったわ。それとありがとう。奏ちゃんのおかげで怪我はないわ」


 美緒に感謝されるも、無意識の行動だった。偶然とはいえ、助けることが出来て良かった。しかし、ここには罠があるようだ。想像以上に危ない場所なのだろう。


「これは……石、ですかね?」 


 地面に落ちた謎物体を玲奈が拾い上げて、まじまじと見つめている。それはでかい氷柱の先端のような形状をしていた。これが当たっていたら、結構な怪我を負ってしまっただろう。


「まだ何があるかわからない。急いでここを抜けよう」


 奏太はパーティーメンバーに向けていい、メンバー全員が頷くのを確認した後、来た道を戻ろうとした。しかし、その時反対側から気配を感じ、警戒の声を挙げた。


「構えろ!」


 奏太の声に応えるように、道の奥側に向けパーティーメンバー全員が武器を構えた。緊張で息が荒くなる。


 足音が聞こえる。足音は一つではない。複数の足音だ。


「来るぞ!」


 手に握った木刀を更に強く握りしめた。木刀では頼りなく感じるも大きな声を出し、不安を誤魔化す。


「助けて!」


 道の奥から姿を現したのは奏太達と同じジャージを着た3人の生徒だった。

読んでいただきありがとうございます。

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