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強襲

ま、まさか日間の総合に載ることができるとは!

 暖かな春の日差し、新緑の芽生えを感じさせる草花の匂い。

 奏太はまだ幼かった頃からしる少女の成長に胸を打たれた。


(ふむ…。そうか玲奈ちゃんにも彼氏ができたんだなぁ。大人になったもんだ…親っさんもう知ってるのかな?)


 奏太の知らないうちに玲奈もしっかり成長してるんだと感心していた。驚かされたものの彼女はもう高校生。それにあの可愛さだ。誰かとお付き合いをしていたとしてもおかしくはないだろう。


(しかし…顔はイケメンだが、嫉妬深いし、将来DVになりそうな奴だなぁ。玲奈ちゃんにしっかり手綱を握るように注意しないとな…)


 奏太がそんなことを考えていると突然後ろからドンっと背中に衝撃が襲った。


「わぁ!!」

「ふぁっ!?」


 いきなり後ろから驚かされて奏太は思わず変な声を漏らしてしまった。心臓のバク付きを押さえるように手を胸に当てながら奏太が後ろを振り返ると二人の女子高生がいた。片方はいたずらな笑顔を浮かべたエルフ耳の美少女、もう片方はどこか申し訳なさそうな顔をしている犬耳美少女。言わずもがな美緒と玲奈だ。


「ぷっ…。ねぇ? 今の聴いた玲奈? ファって、ファって言ったよこの人!」

「くっ…」


 美緒は奏太を右手で指差しながら左手でお腹を抱えゲラゲラ笑った。彼女はそんな姿をしていても可愛いらしいのだが今はイラッとくる。


「美緒? そんなに笑ってしまったらダメよ? でもさっきのソウちゃんの反応、ちょっと可愛かったです」

「ぐっ…」


 そう言って玲奈も少し笑っていた。上品に口元を押さえ、クスッと笑う笑顔がこれまた可愛らしいのだが奏太にとって今は癒しにはならない。彼の心はとても傷ついた。おじさんは割と繊細なのだ。

 少し奏太が憮然とした表情をしていると。その様子を見て少女二人はしまったという顔をした。


「ごめんごめん! ちょっとした挨拶のつもりだったのよ」

「ごめんなさい、ソウちゃん」


 美緒と玲奈は両手を合わせ謝るポーズをとった。むぐぐ、可愛いい! おじさん許しちゃう。


「は〜、まあいいよ」


 表面上は仕方ないといった態度をとって奏太は2人を許した。

 二人は奏太の左隣に並ぶと聞いた。


「で、どうしたのさ? こんなところで立ち止まったりなんかして」

「そうですね。ぼんやりしていたように見えましたけど、何かあったんですか?」


 二人の美少女に心配そうな顔をしている。確かにこんな場所で立ち止まっていたら変だな。奏太はちょっと悪いことしたなぁと思いつつ玲奈の方を見ながらさっきのことを話した。


「あっ、いやさっき玲奈ちゃんの彼氏だって人にちょっかい出すなって注意されちゃってさ〜。玲奈ちゃんももう彼氏とかできる年頃なんだなって思ったらおじさんなんだか感慨深くなっちゃってねぇ」

「え?」


 キョトンとした顔で玲奈が奏太を見た。身に覚えがないのか首を傾げながら玲奈は言った。


「えっと…。ソウちゃん、私まだ誰ともお付き合いしたことありませんよ?」

「あれ? そうなの? えっ…でもさっき話しかけてきた子がそんなこと言ってたような?」


 首をかしげなが奏太は言った。俺の女とは俺の女にする予定の女という意味だったのか? それはさすがに無理があるのでは? と奏太が考えていると美緒が言った。


「ソウちゃんの聞き間違えじゃない? それかよっぽど自意識過剰な奴かな? 変な奴じゃなかった?」

「あ〜。…言われてみるとちょっと危ない奴だったかも?」

「まっ、あたしや玲奈みたいに可愛いとそういう変な奴が結構寄ってくるのよ」 

「ほう」


 確かに美緒も玲奈も滅多にいないレベルの美少女だ。高校の頃に同じクラスにいたら惚れていたかもしれない。


(なるほど。可愛い子にはそれなりに苦労が付きまとってくるのか…)


 美緒は玲奈を片手で抱き寄せると奏太に言った。


「だ・か・ら、何かあったら守ってよね? ソウちゃん?」

「あ、えと…守ってくれると嬉しい…です」


 美緒はウインクをしながら、玲奈はモジモジと手を組み合わせながら上目遣いで奏太に言った。


「お、おう! 任せときなさい」


 効果は抜群なようだ。奏太はむねを叩いて請け負った。おじさんの心を弄ぶ女子高校生二人に奏太は翻弄されっぱなしであった。


「そ・れ・よ・り、どう? どう? この前はちゃんと感想聞けなかったけどさ、この制服よく似合ってるでしょう? ほら玲奈も」

「えっと…こ、こうかな? ど、どうですか? 似合ってますかソウちゃん?」


 美緒はスカートを軽くつまみ上げポーズをとる。玲奈もおずおずと美緒のポーズを真似る。金髪碧眼のエルフの美少女と銀髪犬耳美少女の制服姿。なかなかにくるものがある。ちょっと異世界チックな絵面だがよく似合っているのは間違いない。


「うん。確かに二人ともよく似合ってるよ」


 奏太は優しい微笑と共に二人を褒めた。奏太には制服をきた二人の姿が葵屋で今まで見てきた姿よりしっかり成長して大人へと近づいているように感じられた。


「それに二人とも大人びた感じになって綺麗になったなぁ。この間はあまりに女性らしくなっちゃったから全然わからなかったよ」


 奏太は大きくなった娘を見るような微笑ましい気持ちで言った。

 途端二人の少女の顔が赤くなる。


「こっ、この人は…よくあんなセリフ恥ずかしげもなく言えるわね…」

「ソウちゃんですから…」

「大人の余裕かしら?」


 二人は赤い顔を突き合わせてコソコソと何か話しているが奏太の耳には聞き取れなかった。何故ならそれよりこちらを見ている周囲の人たちの声が騒がしかった。


「な、なんだあいつ青藍(せいらん)中学の2大美少女と呼ばれていた柚月美緒ちゃんと御堂玲奈ちゃんと仲良くおしゃべりしてるだと!?」

「しかも二人の方から親しげに話しかけているだって!?」

「あれ? あの人入学式の日に玲奈にナンパしてた奴じゃない?」

「え!? あの時はあえなく撃沈した奴が出たって話じゃなかったか!?」

「何故だ!? 休日の間に何があったというんだ!?」


 特に男子生徒の悲鳴のような声が騒がしい。まぁ確かにこんな美少女二人がよくわからぬ男と仲良くしている姿をしていたら気になるか。そんなことを奏太が考えていると突然奏太を悪寒が走った。


「!?」


 嫌な感覚と共に後ろから近づいてくる気配を感じ、奏太が校舎の方を振り向くとものすごいスピードで彼めがけて突っ込んでくる男の姿が見えた。男はあっという間に奏太との距離を詰め、全体重を乗せて突っ込むようにして右手で殴りかかってきた。


 奏太はいきなり殴りかかってきた男に最初驚いたものの、男に対して意識を向けた瞬間、まるでスローモーションで殴りかかってきているように見えた。


(なんだ? ゆっくりに見える?)


 (こぶし)だけ避けても体がぶつかる! 一瞬でそう判断した奏太は体をそらしながら右足を一歩を右方向へ後ろ足した。すると轟音と共に殴りかかってきた男が奏太と玲奈たちの間を通り抜ける。ただし奏太が()()()左足に男は自分の左足を引っ掛けながら。


「がっ!? …ぐっ、ぐわっ!」


 殴りかかってきた男は顔面から地面に突っ込んだのち勢い余ってゴロゴロと転がっていく。奏太も美緒も玲奈も呆然とした顔で転がっていく人物を見送った。


「Oh…」


(やってしまった! いや、ちょっとした出来心だったんだよ?)


 まさかこんなことになるとは…と地面に突っ伏し、動かない男子生徒を奏太は呆然とした顔で見る。悪気は…少しあったかもしれないがここまでになるとは思っていなかったのだ。


「え? 今なにがあったの?」

「ど、どうしたのかしらあの人? いきなり突っ込んできたように見えたけど…」

「随分派手にすっ転んだようだが…生きてるのか?」


 周囲の心配をよそに、案外殴り込んできた男は丈夫なようでバッと起き上がり首を振った。奏太の目に彼の黒い犬耳がピョコンと見えた。


「くそ! テメェ! やりやがったな!?」

「え!? いきなり殴りかかってきたのは君の方じゃ…」

「うるせぇ! テメェが避けやがったのが(わり)んだよ!」


(え〜〜? 何その暴論? 大人しく殴られろってか? というかこいつさっきの自称玲奈ちゃんの彼氏じゃないか…確かセイジ君だっけ?)


「せっかく俺が忠告してやったっていうのによ」


 セイジはペッと唾を吐いて奏太を睨みつけた。そしてボクシングのような構えをとり、今度は体ごとではなく右腕でストレートを放ってきた。しかし奏太は首を軽くそらすだけでそれを躱す。


「すげっ、今の避けたぞあいつ!」

「え? 何? 喧嘩?」


 ザワザワと周囲が騒ぐのにイラついたようでセイジは再び舌打ちを打ったあと今度は連続して拳を放ってきた。しかし、奏太はその拳を難なく躱す。奏太自身、自分がこんな動きができることに驚いていたが今はそれどころではない。


「くっ! この! ちょこまかとしやがって!」

「いや、ちょ、待てって!」


 待てと言ってもセイジは止まらず攻撃を仕掛けてくる。確かに速い攻撃だが身体能力の高さに任せた突きだから割とスキがある。

 そんなことを奏太思っているとセイジは拳を当てるのを断念し、フットワークで躱されるのを避けるため水面蹴りを放ってきた。その不意打ちに対して思わず奏太は両足で飛び上がって回避をした。飛び上がった状態で奏太がセイジに目をやると明らかに次に繋げる気を満々のこちらを睨みつける目が見えた。


(この野郎!)


 いい加減イラっとした奏太は浮かび上がった両足で目の前の相手を踏み台にするように蹴った。そうセイジの()()を踏み台にして。


「ぶへっ!?」


 セイジの顔を踏み台代わりにした奏太は自分でもびっくりするくらい綺麗な後方宙返りをしてストンと地面に着地した。すると周囲で観ていた生徒たちからワッと歓声が上がった。


「お〜! すっげ〜!」

「何あれ!? カッコイイ!」


 生徒たちは奏太に賞賛の声をあげるが、奏太自身は仰向けに倒れたまま動かないセイジを見て焦っている。


(つい調子に乗ってしまった! や、やばくね?)


 一向に動かない相手に奏太の血の気が引いていく。


「おっ、お〜い! 少年! 大丈夫か〜!?」


 奏太はセイジに取り敢えず声をかけてみた。


「はっ!?」


 その声に目を覚ましたセイジは鼻を押さえながら奏太を睨みつけた。そして犬歯をムキ出しにして唸り声をあげながら、よろよろと立ち上がった。セイジの鼻から鼻血が垂れているのでしまらない光景だ。


「グルルル…てめ〜! もう許さねぇからな? こっからは本気だ!」


(じゃあさっきまではなんだったんだよ…)


 奏太は呆れてものが言えない。幾ら何でもここまでやられて強がれるとは思わなかった。彼はまだまだやる気なようでふらふらとしながらも戦闘態勢を取ろうとしている。しかしそこで奏太とセイジの間を遮る人物が現れた。


「ちょっと何なのよあんた! いきなりきて!」

「これ以上ソウちゃんに手を出すつもりなら私も黙ってられません」


 美緒と玲奈の二人だ。二人は奏太の前に立ってセイジを睨みつけた。いきなり奏太に殴りかかってきた男に驚いて最初は呆然と見ていた二人だが気を取り直したようだ。


「ぐっ! お、俺は玲奈のことを思って…」

「は?」

「え?」


 セイジの言葉に美緒と玲奈が疑問の声を上げるがさらなる乱入者がやってきた。


「そこ! 何をやっている!」


 どうやら騒ぎを聞きつけた教師がやってきたようだ。セイジは忌々しそうに近づいてくる教師を見た後、奏太を睨みつけた。


「くっ! 覚えてろよ!」


 捨て台詞を吐いた後、セイジは逃げるように駆け出した。


「お〜い少年! 鼻血拭けよ? 垂れてるぞ〜?」

「るせぇ!」


(行っちゃったよ…。なんだったんだ?)


 しばらくするとこの学園の教師と見られる女性が近づいてきた。なかなか端正な顔をしているが目つきが鋭くてキツイ印象だ。


「君たち! 朝から何をやっているんだ!?」

「あ〜、すまない。…いや、すみません。なんかあの生徒にいきなり絡まれまして…」


 怒った教師に奏太は取り敢えず謝っておくことにした。女教師は申し訳なさそうな顔をする3人の顔を見渡した後ため息をついた。


「は〜全く。怪我はなかったようだが初日から学校で問題を起こさないでくれよ? ただでさえこの学校は注目を集めてるんだから」

「はい、すみません」

「ごめんなさい」

「申し訳有りません」


 ここは3人とも殊勝に謝っておくことにした。


「ほら。わかったなら早く君たちも教室へ行きなさい」

「「「はい」」」


 3人は女教師に見送られながら校舎へ向かう。


「何だったんですかね? 風間君、普段はあんなことしないんですけど…」


 どうやらセイジ君の苗字は風間というらしい。


「知り合いだったの?」

「はい、中学校が同じでしたので知ってます」

「あ〜、なるほど…。そういえば玲奈あいつからよく話しかけられてたわね」

「え? そうでしたか?」


 キョトンとした顔をしている玲奈を見た後、奏太と美緒は顔を見合わせ、やれやれといった感じで二人同時に首を振った。その反応に玲奈は戸惑いの声をあげた。


「え? なっ何なんですか?」

「いや、玲奈ちゃんはそのまま純真に育ってくれるとおじさんは嬉しいよ」

「うんうん。玲奈はそのままでいいとあたしも思うわよ?」

「も〜、二人して何ですか!?」


 玲奈は怒った顔をしている講義の声を上げるが奏太と美緒は優しい笑顔を返すだけだった。


(それにしても…)


 先ほど止めに入ってきた女性教師はなかなかに美人だった。種族はどうやらダークエルフらしく褐色の肌に長い銀髪をポニーテールにした姿が色っぽかった。格好は黒のスーツをきっちりと着こなしていて、格好いい。そして何よりスーツの上からでもわかるスタイルの良さだ。


(あれは最低でもEはあるな…)


 20代前半と奏太からしてみれば少し若いがグラマラスなボディーに整った顔立ちに切れ長の目、クールビューティーという感じの女性だった。


(…ふむ)


「ありだ」


「…何がありなんですか?」

「いてっ!」


 思わず呟いてしまった奏太の声に玲奈は険のある声で問い詰めながら彼の脇腹を思い切りつねった。奏太は抗議の目線を玲奈に向けるも冷たい笑顔を向けられあっさり目線をそらした。


(俺なんかしたか?)


 そんな疑問を抱いた奏太に追い打ちを掛けるように美緒は彼のことを下から覗き見るようにしてからかうように言った。


「なになに? ソウちゃんはあ〜ゆうのがタイプなの?」

「こら、大人をからかうんじゃない」


 そう言って奏太は顔を少し赤らめたまま、二人の先を歩いた。彼の後ろ姿を見つめながら少女二人はついていく。


「私だって…」


 そう言って玲奈は自分の胸に手を当てた。自分でも15歳という年齢にしてはなかなかのサイズだと思う。しかし先ほどの女教師には全然及ばなかった。彼女はションボリと落ち込んでいる。

 そんな玲奈の様子を見て美緒は苦笑した。健気だなぁと思いつつ、ふと自分の胸を見た。そう見てしまった。


「うっ…」


 玲奈と同い年だというのに自分の胸はAカップにギリギリ達するかというサイズだ。美緒は自分と玲奈の胸を交互に見比べた。


(世の中理不尽だ〜!)


 美緒は世の不条理を心の中で嘆いた。それはそれは大きな声で。


 恥ずかしさを隠しながら前を進む奏太の後ろをどんより落ち込んだ様子の玲奈と美緒の二人が続いて教室へ向うのであった。

読んでいただきありがとうございました。


ランキングでビッグタイトルの間に自分の作品があったのに感動して思わずスクショを撮ってしまいました(笑)


ブクマ・評価をしてくださった皆さんありがとうございます。


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