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第四章 どくのぬまにはまってしまった! - 2

 醤油の匂いに導かれ? 美少女風来坊、颯爽と日本帰国!


 ……いや、結果的に最高のタイミングだったから良かったものの、ちょっとでもズレてたら……悲惨な美少女惨殺事件が霞城市の黒歴史に刻まれてたとこですよ?

 もうね、帰るならもっと早く、無駄な道草なんてパクパクモグモグしてないで帰ってきてくれればよかったのに!


 もう本当に悠弐子さんは神出鬼没が過ぎる。

 今回も結果オーライで収まったから良かったようなものの……


 ……収まってない?

 肝心の問題が残ってます?



キャラクター紹介 (3) 謎のヒロイン Y子(仮名)


挿絵(By みてみん)


ゆにばぁさりぃは現実と地続きの話だから、JRPGお手軽異世界みたいなキャラは出てきません。

出てこない……はずだよね?

いや、でも緑髪女子とか、疑似現実に存在します?


今にして思うに、もうちょっと(絵を)ロリっとした感じの方が良かったかしら……?

 斯く斯く然々、まぁそういうことなんですよ。


「つまりなに? この子は霞城市へ突如舞い降りたアマゾネスってこと?」

「アマゾネスって感じでもないですよねぇ……」

 抜けるように白い肌の女の子。熱帯雨林よりも欧州の深い森が似合いそうな。SchwarzwaldとかNorwegian Woodっぽいイメージの。

「あんた名前は?」

 悠弐子さんが牢の中へ問を向けると、人間不信の仔犬みたいに後退って、

「#))(&’(&#”$&$))’#!」

 緑のテロリストは牢の隅から威嚇の唸りを返してくる。

「なんて言ってるの?」

山田わたしに分かるわけないじゃないですか……」

 互いに理解できない言語で喋っているのに、意思疎通を図れるはずがない。

「『くっ! 殺せ!』」

 首を傾げる私の横で、

「『やめて、私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに、エロ同人みたいに!』」

 何言ってんだ、このB子ちゃん(金髪美少女)。

 アテレコするにしても、もうちょっと違う台詞にして下さい?

 ただでさえ客観的に視ると拉致監禁っぽい状況なんです。誤解されるような台詞はダメですよ?

「あ、怯えなくていいですよ? お名前を伺いたいだけなんです」

「%))’&%&%’’$(#!」

「私は山田桜里子 さー りー こー 分かりますか?」

「&&%$$#」

「さ り こ。OK?」

「`{*{`{{」

 自分の胸や顔を指し示しながら、なんとか自己紹介を試みたんですが……

「あなたのお名前なんていうんですか?」

「&&&%&&&&&&&&&!」

 敵意剥き出しで叫び返されちゃいましたよ……

「どうしましょう悠弐子さん?」

「まず方法論がなってないわ桜里子……」

「はぁ……」

「《あなた》と《わたし》で収束する会話じゃ、名前なんて要らないでしょ?」

 言われてみれば確かに……

「だがしかし!」

「二木の菓子!」

「ゆにばぁさりぃの力を結集すれば簡単よ!」


「「彩波悠弐子さーん!」」

「ふぁあーい!」

 幼稚園児並みのハイテンションで手を挙げた悠弐子さん、テーブルからバナナを一本採り上げ、いかにも美味しそうにモグモグパクパク。

「「バースデイ・ブラックチャイルドさーん!」」

「うーいぃ!」

 ちょっとやさぐれた返事の園児も、バナナを一本、モグモグパクパク。

「「山田桜里子さーん!」」

「はぁい!」

 そして私もモグモグパクパク。美味しいですね、バナナうまうま。

「そしてこれ食べるのは……?」

 最後の一本を牢の彼女へ差し出しながら『名前』を促すと、

「&%#$#”! &%#$#”! &%#$#”! &%#$#”! &%#$#”!」

 ピーンと手を挙げながら同じ『単語』を繰り返した。


『ワチャクシ』『ンモロンモス』『ヒャジョーッソ』

 三人が三人、彼女の発音をカタカナで表記しようとしてこんな有り様に。

「う、うぅーん…………?」

 私と悠弐子さんとB子ちゃん額を突き合わせ、どうにもならない結果に眉をひそめる。

 耳馴染みのない音階だと、私たちはカタカナに変換するのも困難になるらしい。

 というか発声法が独特なんですよ。咥内と舌の組み合わせだけに留まらず、何か別の発声方法も交えてる。取り敢えず、訓練なしでは発音できそうもない音です。

「日本人から見ると外国人って同じ顔に見えるでしょ?」

「ですね」

「対象が日本人なら、僅かの違いも感じ取れるのに」

「人間、慣れている物と見慣れない物の判別では、大幅に精度が違ってくるんぞな」

 B子ちゃん(あなた)くらいの美少女なら簡単ですけどね。

「ど、どうしましょうか? 悠弐子さん?」

「呼び名がないのも不便よね」

「便宜上の名前をつけておいた方が捗るぞな」

「B子の言うことにも一理ある」

「じゃ、なんて呼ぶことにしましょう?」

 う~ん。

 首を捻ったり腕を組んだり頭皮のツボを刺激したりして妙案を探りますが……

 う~ん。

 意外と出てこない。咄嗟には浮かばない。

「んじゃー……アウディ」

 煮詰まった悠弐子さん、今チラッと外を見ましたね? 窓から外を、教職員用の駐車場を。

「あんた今からアウディよ、分かる? アウディ、あんたの名前」

 洗礼名を授ける司祭よろしく、悠弐子さんは牢の彼女へ名を下賜した。

「…………」

 キョトンと首を傾げるアウディ。

 でも適当に名付けた割には良いかもしれない。

 何となくハイソサイエティ、それでいてエキゾチックな響き。この子に合ってるかも?


「それで、どうしましょうかこのアウディの処遇は?」

 正直これ、私たちの手に余る案件ですよ?

「警察へ連れていったら……拘束されちゃいますよね?」

 難しい顔で頷く、悠弐子さんとB子ちゃん。

 言い逃れのできない破壊行為をやらかしてますからね……

 もしアウディの罪が確定すれば、洒落にならない額の賠償を請求されることになる。

「そんなの見過ごせませんよ……」

 異国から言葉も通じない日本へ連れて来られて、いきなり負債が山盛りとか。

   借 金 ダ メ !     絶 対 !

 あらゆる不幸は貧困から生まれる。

 貧すれば鈍す――衣食足りて礼節を知る。schoolの語源は「余暇」です。経済的余裕が持ててこそ心安らかな文化的生活を送れると二千年前の人ですら知っていたんです。

 だから、心に重く伸し掛かる借金は最悪の枷なんです。そんなのを幼気な少女に負わせるとか鬼畜の所業です、畜生のやることです! 言わば、人売りです女衒です。

 債務という手枷足枷で若人を隷属する、つまり奴隷賛成派です!

 そんな不逞の輩はヴァンパイアハンター・リンカーンに駆逐されてしまえ!

「事の仔細を釈明できれば、情状酌量して貰えるかも?」

 自分は過激派テロリストの洗脳教育で人生を狂わされた子供だ、と証言できれば。

 物心もつかないうちから兵士として育てられた不憫な子だと。

 【絶対悪】は彼女ではなく、女子供をはじめとする情報弱者を食い物にするテロリストが悪い、と主張できるなら。なにせ《緑の彼女アウディ》は生き証人ですからね。

「とは言うものの……」

 アウディ、何語喋っているのかすら分かりません。

 単語の一つすらカスリもしないって、どんだけマイナーな言語なんでしょう?

 そんな調子じゃ通訳サイトの力を借りることすら覚束ない。

「桜里子……お金掛けたくないよね?」

「それはもう!」

 当然です悠弐子さん!

 贅理部ゆにばぁさりぃの予算は年がら年中火の車!

 彼我の借金に許容度の差などありませんよ! どっちもダメです!

「なら自分で喋ってもらおう」


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