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15 わたし(犯人)

 わたしはわたしだ。それは当然のことだ。わたしはわたしであり、非わたしではなく、わたしであり且つ非わたしであることもなく、非わたしでなく且つわたしでもないこともない。論理的に突き詰めればそうなる。だが最近、わたしはわたし自身に距離感を感じている。この感覚……遊離感もしくは乖離感は何だろう。わたしにはわからない。これが孤独というものなのだろうか。あの日、わたしに天啓が訪れたとき、わたしは一人ではなかったはずだ。少なくとも一人の仲間がいたはずだ。共通の考え方を持った愛しい仲間がいたはずだ。彼もしくは彼女は今、何処いるのだろう。顔が思い出せない。声が思い出せない。更に共通の想いが思い出せない。傍らのあの人は誰かをとても恨んでいる。話を聞くと、それはわたしにも十全に理解できる。傍らのあの人は何かをとても怖れている。話を聞くと、それが自分でも実感できるようになる。が、それ以前の記憶には紗がかかっている。まったく見透すことができないのだ。だが、そのように考えてみると先の前提が間違いだったとも思えてくる。あのとき、わたしはまだ一人だったのかもしれない。あのときのことだと思っているあのことは実はまだ起こっておらず、時間的にはこれから先起こることなのかもしれない。それとも、それは連綿と続いているものなのだろうか。あるいは円環を成しながら……。もし、そうであるならば、わたしはわたし自身を探しに出かけなければならないだろう。記憶の中では過去に起こり、現実の世界では未来に起こるはずの、あの共通の瞬間を味わうために……。

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