13 四番目の犯行(桔梗子)
次に犯人の毒牙にかかったのは警察官。だから署内中が色めき立つ。今度は弓で射抜かれる。殺害は早朝。夜勤で帰宅途中だったところを襲われる。顔を薬品で潰されている。
「硫酸だね」
アズマヤが指摘。
「……とすると薬品工場か、化学関連の企業か。あるいは学校とか。調達先は……」
わたし(桔梗子)が思案する。
「管理の厳しい大企業じゃまず無理だから中小企業の可能性が高いな。社員か、それとも窃盗か」
「あ、そうそう……」
アズマヤが気がなさそうに二度目の指摘。
「なーんていうか、その、今回の殺害方法、最初の事件に少し近づいた感じがするんだ」
「えっ、そうなの……」
「つまりね、最初の事件を例に挙げると、歯を全部抜いたって、それをそのまま放置したら意味ないじゃん。あたしだったら薬品処理して全部溶かすか、粉にして捨てるね」
「……ということは」
暫く考え、閃く。
「化学薬品の知識を持ってるってことね」
「ご明察……」
「ついでに別のヒントもくれないかな」
「そうね、まあ、あるとすれば、『一人でやろうとすると大変だ』かな。できないわけじゃないけど……。だって最初の犯行は重労働だし、今度のは、まず弓で心臓を射ち、ついで被害者の許まで近づき、顔を薬品処理してるから……」
「なるほど。目撃される危険性が高いか」
「もう一人いれば楽だけどね。更に言えば、見張り役なんかがいれば危険性はもっと減る」
ついで首を左右に振り、
「しかし、そうまでして顔を潰す意味がわからないよ。身元は明かしているのに……」
と呟く。
不意に脳裏に何かが浮かぶ。
「あ、惜しい……」
が、形となる前にそれが消える。だから、
「犯人が見えましたか」
その場に同席した崔本くんが問いかけても、
「超能力者じゃないからね」
わたしは即座に否定するしかない。




