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雪解け水

やっと決まった進学先を、学校に報告にいった帰り道

なんとなく帰るのが憂鬱になった

何度も通ったこの帰り道がとても愛おしくて、どこか感じていた虚無感がより一層深く感じられた

だから少し逃げ出すように道をそれて近くの小さな川を橋から眺めにいった

まだ溶け切らない雪が、ちいさく流れる川を2つに両断していて

それでも川はチロチロと変わらず流れ続けていた

それがどこか俺を安心させて、ただじっとそれを眺め続けた


「よっ」


不意に後ろから聞こえた声

ちょっと馬鹿っぽいその呼び声に振り向くと

丸刈りの見慣れた顔がニカッと笑ってる

「よっす、こんなとこで何してんの達也?」

そう聞くとニヤニヤしながら

何してると思う〜?

と聞き返してくる

あぁうざい・・・こういう奴だった・・・

「実はな、何もしてねぇんだ」

そう言うと川の方に向き直って俺の横で橋の塀に手をかけて静かに川を眺め始めた


「変わらねぁな、ここだけは」


確かめるように呟いた達也の横顔はさっきまでと打って変わってどこか寂しそうにみえた


「変わってないさ、俺もお前も」


そう自分にも言い聞かせるように呟く俺の方を見た達也は

少し間を開けて

カッコつけやがってーと茶化しながら頭をクシャクシャにしてくる

あぁうざい・・・うざいなぁ・・・

流れる時も、涙も、こいつも

達也はそんな俺を見て驚いた顔をして

その後またいつものようにこう話し出す


「20になったらよ、酒を飲みに行こう

 酔いに任せて愚痴をぶちまけるんだ

 風俗に行ってもいいな

 なんてったって俺達がDTを捨てられる可能性は0%だ」


ニヤニヤと楽しそうな達也は

まさにいつも通りで

その当たり前の日常が心地よくて

暖かくて・・・暖かくて・・ゆっくりと俺の心が溶けていく

あぁうざい・・・うざいなぁ・・・

こいつはすぐに俺の中にはいってくる

今までもそうだったし、きっと違うところにいてもすぐはいってくる

きっと俺たちも変わらない

川の方に目を向けると

流れる川に少しずつ雪が溶かされチロチロと一緒に流され始めていた

川がまた一つになったのを見て俺と達也は二人で笑った

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