2日目・3日目
2日連続で痛みに泣きわめくことになった叶湖は、やはり疲れていたのだろう。頭の下で黒依が痛みに呻く声でようやく目を覚ます。
「んっ……おはようございます、黒依」
「うっ……ぐっ……」
「はいはい。そんなに急かさなくても、すぐあげますから。あ、その前に」
「ぐっ、あぁぁあっ!」
ついで、とばかりに、腹の傷を踏みつけながら薬棚へ向かい、慣れた手つきで2本の注射を行う。
「んっ、ふっ、ぁ」
それから、下の世話をするついでに、刺し込んであるカテーテルを、揺らしてみたり、くるりと回してみたりすると、びくりと、黒依の全身に力が入り、苦痛以外の声が上がったのが分かった。
「調教済みですか」
さすがの暗殺組織である。これで、毒が無効だったら自分は死んでいたかもしれない、などと考えながら、さっさと処理を済ませ、手を洗って黒依の元に戻る。
「ねぇ、黒依。どうですか? アナタが目覚めてから数えれば、ペット生活2日目ですけど。楽しんでます?」
「ふざけるな」
「ですよね」
叶湖は二コリと笑って、睨みつけてくる黒依の視線をいなす。
「でも、アナタが喋る相手も、こうやって、アナタに触れるのも、全部私だけです。妹さんを見殺しにして、妹さんを殺した組織にずっと肩入れをし続けて、罪がある人も、ない人も、等しくその手にかけてきて。その組織を抜けだして、やっと自由になった矢先に、こうして再び捕らわれた。……アナタってつくづく運がないですよね」
叶湖が喉をならして笑う。
「悔しいですか? 苦しいですか? 誰も、アナタを目にとめない。アナタが生きていると、ここに居ると知っているのは私だけ。アナタはある人の中には存在せず、ある人の中では死んでいる。そんな希薄な存在。そんな存在、この世界に居るもいないも変わらないですよね。……それでも、死なせません。……ね、絶望してくれます? さっさと狂ってくださいよ。その方が、私も楽しい」
「この、外道が」
「よく言われます。褒め言葉です。でも、そうやって怒っているのは誰のためですか? だって、アナタ、死にたいんでしょう? 自分で言ったんですよ。どうせ死ぬなら、嬲られてもいい、と。もしかしたら、処理を誤って殺してしまうかも」
怒りに呻いた黒依に、叶湖はあっけらかんと笑う。
「これだけ医療器具が揃っている。……そうはならないだろうな」
「さぁ。医療器具は趣味の延長ですから」
にこり、と笑って叶湖はそこから立ち上がった。
「音をあげたくなったら言ってください」
その日が終わり、次の日が来た。
たび重なる叶湖の暴行により何度か開きかけた銃創であるが、貫通はしておらず、重要な臓器も傷つけていなかった。翠が黒依を家に運び込んで一番最初に打った、増血剤と抗生物質のおかげもあって、丸2日も経つと、患部も体調も随分と落ち着いたようで、叶湖はフィルムを剥がして患部の様子を見る。抜糸はできないが、患部の乾燥のためにも、もうフィルムは不要だろう。
その頃になると、叶湖が薬の量を調節しているのか、黒依が慣れてきたのか、黒依が毒薬で呻くことになる間隔が長くなってきた。
最初の頃は何かと黒依に構ってきた叶湖であるが、食事をとったり、リビングダイニングを通過してマンションから出かけたりするのを除けば、私室から出て来るのも珍しくなっていった。
医療行為であり、セクハラではない。
ので、R18にはならない、と言い張る筆者でございます。
これより酷いセクハラは、バッサリとカットしていきます。