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それでも龍は時折笑う   作者: 瀬戸バレーナ
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〜全然招いていない人達が来た〜


 ここ月見が丘町湾岸エリアにある煉瓦造りの倉庫は季節が夏前でも、樽見さん仕様の扉が締め切ってあるとやっぱり蒸し暑い。

「あんたはここがどんなに変なのか、これっぽっちも、そう、まるっきり気がついていないってどんだけおかしいのよ」

 少し切れ長の目をキリリと吊り上げて怒る彼女は、噴き出る汗をハンカチで拭く俺に、遠慮のなく人差し指を突きつける。

「そんなにここが変か?」

 つうか俺からしたら、あんたこそ誰だなんだが。

「変すぎるわよ。あんたもその辺の奴らも変よ変!」

 大事なことなので二度言いましたか?

 ただ俺は全く知らない女の子に変だって言われる覚えはないし、この彼女はいったい何で怒ってるのかも分からない。

「とにかくこのあたしが困っているんだから、家へ一緒に帰ってよねお兄ちゃん」

「お兄ちゃんって誰が?」

 俺には姉ちゃんはいるが、妹なんかいないぞ。

「なにすっとぼけてんのよ。可愛くって頭のいい地球防衛軍の一員もやってる、パーフェクトスペシャルな妹を忘れるなんて」

 自分の事を可愛いとかスペシャルとか言うヤツは、たいていおつむが危ないってアレスティンさんが言ってた。

「そう言われても、俺には妹なんかいないし。つうか、あんたこそ俺を誰かと間違えていない?」

「間違えてなんかいないわよ。あんた藤堂里志でしょう」

 どや顔で言いきった彼女。

「あのさ。さっきも言っただろう。藤堂里志は、俺のご先祖様だ。てか俺の名前、藤堂貴志なんだけど」

「ふん!あんたって相変わらず、口だけはやたら動く人ね」

「口だけはって」

「どうでもいいけど。こっちはあんたのせいであたしの人生設計が狂いかけてんだから、とっとと家に帰ってちょうだいよ」

「分かった。家に帰るわ」

 今日は親父もお袋も仕事で夜遅いから、夕飯の時に頭のおかしなヤツに出会ったとアレスティンさんに話すか。

「ちょっとあんた、勝手にどこ行く気よ」

「だから、あんたが言うように、俺は自分の家に帰るだけだが」

 するとこの頭の危ない子は小型の鞄から、銀色の縄みたいなにかを取りだした。

「あんたはこのあたしの言うこと、やること、ハイハイって素直に聞いていればいいのよ」

 彼女がボタンを押すと銀色の縄みたいのが、1本ずつバラバラの網に変化した。

「このラグジュアリーネットに一度掴まったら、あんたごときじゃ逃げられないんだからね」

「なにを言ってるのか、俺には全然分からないんだが」

 ただワケわかめなことを叫ぶ彼女の後ろには、扉を静かに開けた樽見さんの太い足が何本も迫っていた。

『よお、貴志。そんでそっちのお嬢さん、取り込み中で悪いが』

 樽見さんは吸盤つきの足で彼女の肩を、とんとんと優しく叩いた。それでようやく彼女は自分の後ろに樽見さんの足、かなり太いけれど繊細で器用なんだ、それに初めて気がついたようだ。

「ひいいっ!!」

 悲鳴を上げながら彼女は上着の裾から棒状の何かを取りだし、そのまま樽見さんに向けたが。

『おいおい。人様には銃口を向けるなってお嬢さん、通ってる学校で習わなかったか?』

 樽見さんは足で彼女の手から棒状の何かを取り上げ、グルグルに巻くと何かが壊れる音が聞こえた。

「ちょ、それってまだ新品なのに!ていうか実戦で1回も使っていないのに!」

 誰かに壊されても壊したら壊したで始末書書くの、このあたしなのよと彼女が喚く。

「だからこういう所が変だって言うか、いったいここってなんなのよ」

「いや、俺からすりゃあんたの方が変だよ」

「もうっ!いきなりタコの化け物が来るわ、あんたはすっとぼけるし、もう応援頼んで徹底的にボコってやるから」

 どうも人の話なんか聞く気がないらしい彼女は、ひとり叫びながらどこかへ駆けていった。 


 しかし俺も樽見さんも、彼女を追いかけなかった。

「樽見さん。今の彼女さ、なんなんだろう」

『さあな、さっぱり分からん。ただお前と里志を見間違えるぐらい、あの娘は目が悪いって事は確かだ』

 そこへ今日も全身白いタイツ姿の後藤さんが、すごく慌てた様子で倉庫に駆け込んできた。

「ああ貴志君、無事で良かった。えらく怪しいヤツが貴志君に声を掛けて連れて行ったって聞いたから。なんともなかったかい」

「後藤さんは心配性だな。俺なら大丈夫だし、でもありがとう。ほら、樽見さんが真っ先に駆けつけてくれたから」

 すると後藤さんはああ良かった良かったと、樽見さんの太い足の1本を両手で撫でていた。

『貴志。アレスティンと灯里が迎えに来るって言うから、外で待っていなさい』

「はい。樽見さんも後藤さんも、ありがとうございます」

 俺は礼を言って倉庫から外に出て、月見が丘の龍神様ことアレスティンさんが来るのを待った。

『貴志』

「おーい貴ちゃん、迎えに来たぞっと」

 少ししてクロロフォード6世のシートにまたがるアレスティンさんと、彼の後ろに座る2歳年上の姉灯里がやって来た。

『その様子だと貴志、大丈夫だったようだな』

 アレスティンさんのドレッドヘアの先端が数本ほど光り、細長い赤い瞳がすぐにが和らいだ。

「練習帰りの貴志が変な女の子に声掛けられてるのをね、パトロール中だった七北田さんが空から見てて、それで生活安全課に知らせが入ったの」

 まあ何もなかったから良かったねと姉ちゃんは笑い、俺にヘルメットを渡してくれた。

「なんか頭のすごく変な子だった」

 俺はクロロフォード6世のサイドカーに乗り込みながら、

「ご先祖様と俺のこと、その変な子が間違えまくってた」

 俺がいくら違うって言っても、絶対に認めなかったしと言った。『里志と貴志はヒューマン系メイルという識別感は似ているが、生命の色も香りも全然違う生命なのだが』

 ご先祖様を知っているアレスティンさんも、不思議そうな反応をする。

『他に何か言っていたか?』

「あ〜やたら私はあんたの妹だって言ってた」

「貴ちゃんには私っていうお姉ちゃんしかいません」 

 姉が頬をふくらませる。

『だな。里志なら妹がいたと聞いているから分かるが、貴志では妹はいないから分からぬ話だ』

 アレスティンさんも首を傾げる。

『まあ、なんですか。貴志も無事やったし、早よに家帰りましょうや。そんで今日は飯食ってぐっすり寝て忘れるんが一番や』

 クロロフォード6世が言うように、今日は早く家に帰って飯食って寝た方がいいだろう。

 いきなりなんか頭のおかしい、変なのに絡まれて気分的に疲れた感じがある。

「あ、樽見さんがひなたぼっこしてる」

 家路についた道中で姉が手を振るから俺もつられてみれば、月見が丘湾の海中から、10本近い手足を伸ばして海面に浮いている樽見さんが見えた。

 そこへアレスティンさんのトレッドヘアの先端が何度か光り、

『さっきの目が悪い娘。どうやらゲートを通ってきたそうだ。ヒューマン系フィメイルなのも同じ、さらに人の話も聞かない点が合致した』

 ゲート付近にいる生活安全課の方から知らせが来たと言った。

「あのね。アレスティンさんの言うゲートってついこの間、町外れに上半分も現れた門のこと?」  

『ああ、そうだ。1000年前に一度向こう側で破壊されたそうが、おそらく向こうでの復旧作業が完成したのだろう』

 アレスティンの乗った宇宙船がエンジントラブルでここへ不時着した時、すでにゲートは下半分しかなかった。

『あの時はマジで困ったもんですわ。里志さんとわしらだけがこちらに残されて、向こうと連絡もつかんようになるし』

 里志と貴志を間違えたあの子はまさか疫病神のあいつとクロロフォード6世は言いかけて止めた。

『こいつはあかんかも知れんな。里志さんがマジおらんでよかったかも』

『安心しろ。あやしい奴らは水際で食い止める。それが私達、月見が丘生活安全課の勤めだからな』

「アレスティンさんがいるから、我が家も大丈夫だもんね」

 姉の言うように我が家には龍神様がいるから、あの頭のおかしい子ももうやってこないとこの時の俺は思っていた。



へっぽこなりにゆっくり書いていきます。

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