1.プロローグ
一歩後退すると、一歩前に進む。
そんな事を繰り返しているうちに、莉央の背中はオフホワイトの壁にぶつかる。
「ま・・松永さ・・・」
「何?」
二人の重みに軋むベッド。
カーテンの隙間からこぼれる月光に照らされている斗真。ジッと莉央を見据える黒い双眸は僅かに色情を漂わせている。いつもはワックスで軽く横になでつけている前髪も、今は無造作でラフそのものだ。
莉央はこれから先の展開を朧げながらも察している。ただ、未知の恐怖よりも、溺れてしまいそうになる、そして手にしたのに失ってしまうとどうなるのか・・・その方が怖いのだ。
斗真の不器用で甘くて優しい愛情に。
大きくて骨ばった少し冷たい手が莉央の頬に触れる。
それだけで莉央の温度はふわりと上昇する。
親指で軽く下唇を押さえられ莉央は、薄く開き名前を呼ぶのが精いっぱいだ。
「まつ・・なが・・さん」
「だから何?」
言葉は素っ気ないのに、声音はとても優しくて。
いつからこんなに好きなんだろう・・・。
逃げ腰になるのもキスの最初だけ。一度触れ合えば、息の仕方を忘れたかのようにお互いがお互いを飲み込む。
余裕なんてどこにもない。
ただ、ただ、斗真の深いキスに莉央の意識は持って行かれた。
ねぇ、松永さん。
私、本当は松永さんの事、ずっと目で追っていたんです。
気づいたらもう、お店に来たあなたの姿を捜していました。
松永さんは・・・・・・気づいていましたか?
初めまして、桜野蒼生と申します。
【君と初恋】とは違ったテイストになってる・・・ハズ?!
こちらものんびりマイペース更新ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです☆
どうぞ最後までよろしくお付き合いください。