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からたちの花は泣いた

作者: 梓 由美

瓦礫の山を捨てないで


そんな声が聞こえて来たから


瓦礫から生まれたヴァイオリンの音色に


からたちの花の歌を添えて海に眠る人へとどけと・・


からたちの花が泣いた


突然・・あまりにも突然・・


松ノ木も、家も流れて行く


車も人も流れていく


手を伸ばしても届かない。


呼びあう声がいつまでも耳を叩く


ぐらぐらと山が動いて崩れる


波が悪魔になって襲い掛かった


波間に果てた君よ、・・・いつまでも待っているよ・・


聞こえるか・・・聞こえてよ


みんなが呼んで居るんだよ


君の声を待って居るから


からたちの花の歌で・・ 


きっと聞こえるから


ヴァイオリンの音が聞こえるだろう


一本松の下で奏でるよ・・・


いつまでも待って居るから

どんなに遠く流されても


戻って来てよ・・


待っているから・・


からたちの花を・・・・


一緒に歌う・・



みんなで歌えば・・


きっと聞こえるから・・


瓦礫の中に埋もれて居る君よ聞こえてよ。


からたちの花も叫んで居るよ・・


応えてよ。 聞こえるね。


きっと答えを待ってるよ・・


ひと筋の望みを賭けて~



波間に叫びが聞こえるから


聞こえるだろう・・眠れないの・・


君の息吹が滲んだ瓦礫の声に


ヴァイオリンを造ったんだよ。

聞いてくれ。聴いてよ。


からたちの花の歌を・・


熱い視線がテレビに集まって居るよ・・


噎び泣く朝の茶の間に


からたちの花の歌が流れる



帰って来いよ。


叫んで、叫んで血を吐く声で・・


歌って・・歌って・・


呼んで居るよ。聞こえてよ。


きっと聞こえることと信じるよ・・



花もない 


草もない 


道もない 


家もない


故郷もない 山もない


廃墟の悲しみは 山となり


野に晒された瓦礫が泣いた



きっと居るね・・きっと居るよ・・・


彷徨い続けて1年半 瓦礫の中を


今日も覘く・・瓦礫の隙間を


杖に届けと手探る足元に


渚が騒ぐ・・


戸惑う人の視線が悲しく白波に迷う


何処かで呼んで居るのに


探れないもどかしさ・・・



何処なの? 何処なのと


探せば視線に青さが沁みて


水平線をじっと見詰めて待っているよ・・


愛する人を


からたちの花は泣いた。



無残な海辺に横たわる


柱と壁と窓の間から顔を覘かせる

人形の顔が叫んだ


瓦礫の山を捨てないでと


瓦礫じゃないの宝なの


そんな叫びが聞こえて来たと


からたちの花の歌が流れるヴァイオリンに


泣けて~泣けて止まらない




拾った瓦礫にヴァイオリンの命を生もうと


賭けた職人魂が永久に消えない楽器を生んだ


この世にデビューさせた想いは熱い


からたちの花は透き通った音色で


悲しく~悲しくメロデイーを奏でた。


海の呻きの悲しみが深い朝~


泣けた~止まらなく泣いた。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませていただきました。 短編ながらも悲しみが伝わってくるようでした。 そしてヴァイオリンが出て来たのが哀愁をより引き立てていて良かったです。 これからも頑張ってください♪
2012/10/09 19:45 退会済み
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