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ミクロダイブ・エマージェンシー~第13微細医療班の処方箋~  作者: 白黒鯛
第3章 深淵の眼差し

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第27話:勝利の残響

ダイブ・ポッドのハッチが開き、冷却ガスの白煙とともに三人が現実世界へと帰還した。


「……お疲れ様、みんな!」


真っ先に駆け寄ったのは、オペレーションルームから飛び出してきた結衣だ。あかりたちのバイタルを素早くチェックしながら、その瞳には涙が浮かんでいる。


「ルナさんのバイタル、安定したわ。透明化していた腕も、元通り……。あかりちゃんのあの一撃、本当に凄かったんだから!」


「ありがとう、結衣さん。でも、最後はみんなの連携があったから……」


あかりがヘルメットを脱ぐと、汗で濡れた髪が頬に張り付いた。心地よい疲労感と、それ以上の達成感が胸を満たす。美穂の負傷も、軽傷で数日で治る程度だった。


「――計算外の動きね」


不意に、重厚なドアが開く音がし、聞き覚えのある凛とした声が響いた。

振り返ると、そこには第1班のリーダー、氷室礼が立っていた。背後には彼女を支える第1班の精鋭たちが控えている。

あかりは思わず背筋を正した。第2班を壊滅させ、礼ですら「打倒する術はない」と断言したインビジブルを、自分たちが倒したのだ。


「氷室さん……」


「視覚を捨て、自らを巨大なノイズ源に変える。合理性からは程遠い、泥臭い戦い方だわ。……けれど」


礼は歩み寄り、ボロボロになったあかりのスーツと、まだ熱を帯びているハミングバードをじっと見つめた。


「私の『静』を見せたことで、あなたがそれとは対極の『動』に辿り着くとは、私のシミュレーションにはなかった。……少しだけ、あなたたちを過小評価していたようね」


礼の言葉に、これまでの冷徹な拒絶はない。わずかに視線を和らげた彼女は、あかりの横を通り過ぎる際、小さく「お見事」と呟いた。それは最強の戦士が、ようやく第13班を「対等な戦友」として認めた瞬間だった。


「……おい。いつまで傷の舐め合いをしてる。さっさと報告書を上げろ」


いつも通りの不機嫌な声。モニター越しの凪が、羊羹の包み紙を丸めながらこちらを睨んでいる。

だが、その毒舌も今のあかりたちには、心地よい子守唄のようにしか聞こえなかった。


「先生! 少しは褒めてくれたっていいじゃないですか!」


結衣が頬を膨らませて抗議する。


「褒めてほしければ幼稚園にでも行け。……だが、まあ」


凪はフンと鼻を鳴らし、手元のコンソールを操作して、あるデータをあかりたちの端末に送った。


「その『ハミング・ソナー』のデータは、今後の全班の標準装備に組み込む。お前たちの泥臭い足掻きが、この病院の生存率を0.3%引き上げた。……それだけは認めてやる」


0.3%。凪にとっては最大級の賛辞であることを、彼女たちはもう知っている。

あかりは美穂と、沙也加と、そして結衣と顔を見合わせ、晴れやかな笑顔を見せた。

深淵の底で見えない死神を退けた戦士たちは、今、名実ともに病院の「切り札」へと成長を遂げたのだ。

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