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ミクロダイブ・エマージェンシー~第13微細医療班の処方箋~  作者: 白黒鯛
第3章 深淵の眼差し

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第25話:ハミング・ソナー

「美穂さん、下がってください。……ここからは、私が『盾』になります」


あかりの静かな、けれど芯の通った声に、肩を負傷した美穂が目を見開いた。


「あかりちゃん……? でも、敵は見えないままなのよ」


「いいえ、見えます。……いえ、『聴こえる』んです」


あかりはハミングバードを正眼に構え、深く息を吸い込んだ。脳裏にあるのは、氷室礼のあの言葉。


「あなたの熱情は、暗闇では自分を焼くノイズでしかない」


(……だったら、そのノイズを世界中に響かせてやる!)


「先生! リミッターを解除します。ハミングバード、超高周波モード……最大出力フルスロットル!!」


「フッ、言ってくれる。……システム、強制オーバーライド。焼け付いても知らんぞ、あかり!」


凪の指先がコンソールを叩き、あかりの剣に膨大なエネルギーが注ぎ込まれた。

次の瞬間、ハミングバードはこれまで聞いたこともないような、鼓膜を突き刺す高音を上げ始めた。


キィィィィィィィィン!!


超高速回転する刃が、ルナの体内空間そのものを激しく振動させる。

それはもはや「剣」ではなかった。空間全体に音の波を放射する、巨大な「ソナー(探信儀)」だ。


「……っ、何これ!?」


結衣のモニターに、異常なまでの波形データが流れ込む。


「あかりちゃんの剣から出た超音波が、血管の壁や組織に反射して……体内の精密な3Dマップを再構築してる!?」


あかりの意識の中で、世界が変貌した。

光を透過させるインビジブルの体も、質量がある以上、音の波を跳ね返す。

漆黒の闇の中に、音の反響によって形作られた「空白の影」が、不気味に浮かび上がる。


「見つけた……!」


インビジブルが戸惑うように身を捩った。自分の「透明」という絶対の優位性が、目の前の少女の放つ「騒音」によって剥ぎ取られていくのを感じたのかもしれない。


「沙也加さん! 10時方向、距離30! 敵は左側の鎌を振り上げてます!」


「……見えたわ、あかりさんっ!」


暗闇の中で、沙也加のジャッジメントが唸りを上げた。

あかりが「音」で指し示した座標。そこへ向かって、沙也加の精密な弾丸が虚空を切り裂く。


「ギィィィィッ!?」


何もない空間から、断末魔のような高周波の叫びが響いた。

沙也加の弾丸が、インビジブルの関節部分に命中したのだ。


「逃がさない……!」


美穂が負傷した腕を抑えながら、再び盾を構える。


「結衣ちゃん、敵の機動低下を確認して!」


「了解! 敵、ダメージにより光学迷彩にバグ発生! 座標確定、逃走経路……予測完了よ!」


オペレーションルームで結衣の指が躍る。凪の計算と、三人の感覚が、今や一本の細い糸のように完全にリンクしていた。


「……あかり、今の感覚を忘れるな」


凪の声が、確信を持って響く。


「氷室の『静』がお前に教えたのは、お前自身の『動』を制御するための鏡だ。……叩き込め、そのハミングを!」


「はいっ!!」


あかりはソナーが描き出す「敵の核」を見据え、一歩大きく踏み出した。

もはや視覚などいらない。世界を震わせる自分の鼓動と、仲間の声が、勝利への道をハッキリと照らしていた。

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