表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミクロダイブ・エマージェンシー~第13微細医療班の処方箋~  作者: 白黒鯛
第3章 深淵の眼差し

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/72

第24話:インビジブルの罠

「捉えたわ!」


沙也加が放ったペイント・ロジックが虚空で炸裂し、光り輝くナノ粒子が敵の輪郭を鮮明に描き出す。そこに現れたのは、カマキリのような鋭利な鎌と、蜘蛛のような多脚を持つ、全長数ミリ(ナノサイズ換算では数メートル級)の異形だった。


「これなら……見える!」


あかりがハミングバードを振りかぶり、光り輝く敵へと突進する。しかし、その瞬間、凪の警告が通信機を叩いた。


「待て、あかり! 引け!」


「えっ……!?」


次の瞬間、驚くべき光景が広がった。インビジブルの全身を覆っていた「光る外殻」が、まるで行灯の火を消すように、一斉に剥がれ落ちたのだ。


「粒子を……パージした!?」


結衣の悲鳴に近い声がオペレーションルームに響く。

敵は自らの表皮をナノ単位で高速剥離パージさせることで、付着した発光粒子を強制的に排除したのだ。再び「無」へと還ったインビジブル。だが、あかりはすでに攻撃の姿勢に入っており、防御が間に合わない。


「させないわ!」


横から割り込んだのは美穂だった。大盾「アイギス」を構え、あかりを背後に隠す。


ガキィィィィィィン!!


目に見えない重厚な衝撃がアイギスを襲い、火花が散る。


「美穂さん!」


「大丈夫……でも、この子、さっきよりも攻撃が速くなってる……!」


美穂の腕が、衝撃で激しく震えていた。

インビジブルは姿を消したまま、執拗に美穂の盾を叩き続ける。しかも、その攻撃は一点に集中せず、物理法則を無視したような角度から飛んできた。


「見えないのをいいことに、死角から……! 卑怯よ!」


結衣がモニターを睨みつけ、必死にデータのノイズを除去しようとする。


「ダメ、先生! 敵の機動性がこちらの予測計算を上回っています! このままじゃ美穂さんのシールド・エネルギーが持ちません!」


凪はモニターを見つめたまま、指を組み、冷徹に現状を分析していた。


「……奴は学習している。ペイント弾の着弾タイミング、美穂の盾の有効範囲、そしてあかりの踏み込み。第13班の『癖』を、不可視の優位性を保ったまま読み取っているんだ」


「あ……がっ……!」


突如、美穂が苦悶の声を上げた。

盾で防いでいたはずの正面ではなく、真横の「何もない空間」から、見えない刃が彼女の肩を浅く切り裂いたのだ。


「美穂さん!」


「……平気よ。かすっただけ……。でも、どうして? 盾のセンサーには反応がなかったのに……」


「反射だ」


凪が低く答える。


「奴は体内の組織壁にわざと自分の鎌を突き立て、その『振動の反射』で美穂の盾の裏側を突いた。……知能がある。このバルス、狩りを楽しんでやがる」


ペイント・ロジックは対策され、最強の盾すら突破され始めている。

暗闇と沈黙が支配するルナの体内で、第13班は自分たちの命の火が、一吹きで消されるのを待つ獲物のような錯覚に陥っていた。


「……あかり」


凪の声が、あかりの脳内に直接届く。


「氷室との訓練を思い出せ。お前の武器は『目』じゃないはずだ」


あかりは、震える手でハミングバードの柄を握り直した。

肩を貸してくれた美穂の温もり、必死に情報を送ってくれる結衣の叫び、そして引き金を引く機会をじっと待つ沙也加の呼吸。


「……はい、先生。私、自分の『ノイズ』で、あいつを炙り出してみせます」


あかりの瞳に、不屈の光が宿った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ