第15話:共鳴するプライド
「……あかりさん、美穂さん! このまま正面突破よ。3班が作った綻びを、私たちが広げる!」
沙也加の声が通信回線に響く。それはいつもの穏やかなリーダーのものではなく、戦場の指揮官としての、そして一人のオペレーターとしての「熱」を帯びたものだった。
「なにが『綻び』よ! 道を作ってあげてるって言いなさい、沙也加!」
エリカが叫び、残弾わずかなハッキング銃を乱射する。黒いバルスの防壁が、エリカの意地に応えるように火花を散らしてひび割れた。
『……お前ら、通信回線で喧嘩してる暇があるなら手を動かせ』
凪の、こめかみを押さえるような声が入り込む。今、彼の脳内では6人分の神経データと、患者の極限状態のバイタルが超並列で演算されていた。
『沙也加、右15マイクロ。エリカ、左30マイクロ。二人の「ズレ」を修正した。……同時に叩け』
「「……了解!!」」
声が重なった。
沙也加の『ジャッジメント』から放たれた論理貫通弾と、エリカが放った執念のハッキングプログラムが、空中で螺旋を描くように絡み合う。
「昔からそうよね、あんたは! 正論ばっかり並べて、私の邪魔をして!」
「あんたが勝手に突っ走るから、私が修正してあげてたんでしょ!」
二人の意地が、そのまま攻撃の威力に変換される。
狙撃ポイントは、バルス・ネストの第一結節点。
沙也加の精密な「静」のハッキングが敵の防御コードを暴き、エリカの傲慢なまでの「動」のプログラムが、その隙間に無理やり自分たちの制御権をねじ込んでいく。
ドォォォォォンッ!!
体内の小宇宙で、電子の爆発が巻き起こった。
鉄壁だったネストの防壁が、二人の同期生の連携――本人たちは「不本意」と言い張るであろう完璧なクロス攻撃によって、粉々に砕け散った。
「道は開いたわよ、あかりさん!」
「エリカさん、沙也加さん……凄いです!」
あかりは震えるほど感動していた。
反目し合い、毒を吐き合いながらも、二人の魂は深い部分で「同期」として、同じ地獄を生き抜いてきた者同士として共鳴していた。
「……あかりちゃん、今よ。お姉さんたちの意地に、最高の結果を添えてあげて」
美穂が『アイギス』を前面に展開し、反動を抑え込むための盾となる。
「はい! 第13班、天宮あかり――とどめを刺しますッ!!」
あかりは、沙也加とエリカがこじ開けた最短ルートへと飛び込んだ。
ハミングバードが超高周波の唸りを上げ、ネストの中枢核を捉える。
「……ふん。せいぜい、華々しく決めなさいよ、新人!」
エリカの悔しそうな、けれどどこか晴れやかな叫びを背に、あかりの刃が毒々しく光るコアを一刀両断した。
静寂。
そして、患者の脈動が、力強い生命のビートを取り戻していく。
『……目標、完全沈黙。……全員、さっさと帰ってこい。脳が焦げる』
凪の安堵を含んだ毒舌が、勝利のファンファーレとなって響いた。




