表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミクロダイブ・エマージェンシー~第13微細医療班の処方箋~  作者: 白黒鯛
第2章 鋼の旋律、乙女の絆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/36

第14話:矜持と屈辱のクロスカウンター

心臓冠動脈、第3分岐点付近。

そこは、かつて生命を育むための赤い運河だった場所とは思えないほど、禍々しい「墓標」へと変貌していた。


「……っ、この、動きなさいよ……!」


第3班のオペレーター、藤堂エリカは、愛銃のトリガーを狂ったように引き続けていた。

彼女の周囲では、黒いタール状の物質が壁を作り、逃げ道を完全に塞いでいる。

第3班には別のオペレートリーダーがいるのだが、現場の指揮権はすでにエリカが実質的に強奪していた。彼女の圧倒的な我の強さと、それに伴う実力。それが第3班をここまで引っ張ってきた「エンジン」だった。


『エリカ、もうダメよ! 弾薬ロジック・バレットが底を突くわ!』


『……うるさい! 私が「撃て」と言ったら撃つのよ!』


だが、エンジンは過熱し、今まさに焼き切れようとしていた。

スーツの警告音が鳴り響き、視界はノイズで埋まっていく。プライドの高いエリカにとって、ここで「処分」を待つだけの化け物(BD)になるなど、死よりも耐え難い屈辱だった。

その時、ノイズだらけの通信回線に、聞き慣れた、そして今一番聞きたくない声が割り込んできた。


『――第3班、聞こえる? こちら第13班。これより救助オペレーションを開始するわ。エリカ、そのまま動かないで』


「……沙也加……!? なんで、あんたたちがここに……!」


エリカの表情が劇的に歪む。

死の淵で救いの手が差し伸べられた歓喜。

そして、よりにもよって同期のライバル、自分が見下していたはずの「ゴミ捨て場」のリーダーに、無様な姿を晒して助けられるという耐え難い屈辱。


「ふざけないでよ! 予備の13班が、患者に負担をかけてまでダイブしてくるなんて……! 来るな、来るんじゃないわよ!」


『うるさい、黙ってろ。藤堂』


凪の冷徹な声が、エリカの怒号を遮った。


『お前のプライドなんてどうでもいい。その患者の心臓を止めることは俺が許さん。……あかり、行け!』


その瞬間、エリカの視界を覆っていた黒い絶望の壁が、鮮烈な「光」によって切り裂かれた。


「ハミングバード、全出力――旋律メロディ・スタートッ!!」


凄まじい高周波の唸り。

あかりが放った閃光の連撃が、エリカを包囲していたバルスのネストを、外側から文字通り「消滅」させていく。

粒子が弾ける火花の中、エリカは見た。

自分たちが手も足も出なかった強固な細胞壁を、ハチドリのような超高速機動で粉砕し、一直線にこちらへ突き進んでくる少女の姿を。


「お待たせしました、みなさん! お助けに参りました!」


あかりがエリカの目の前で急停止し、ブレードを鮮やかに一閃させる。

残った雑兵たちが霧散し、沈黙が訪れた。


「……あ、あかり……あんた、その動き……」


「エリカ、お礼は後でいいわ。凪先生の計算が保つのはあと180秒。今から6人で、このネストの心臓コアを叩き潰すわよ!」


沙也加が『ジャッジメント』を構え、エリカの横に並び立つ。

エリカは唇を噛み締め、震える手で銃を握り直した。屈辱で顔は火が出るほど熱い。けれど、自分一人では見えなかった「生」への道筋が、今、目の前に開かれていた。


「……勘違いしないで。貸しにしておくだけなんだからね、沙也加!」


「ええ、利子をつけて返してもらうわよ。――全員、攻撃開始!」


第3班と第13班。相容れない二つの班が、凪の紡ぐ「共鳴」の下、一つの巨大な刃となってバルスの心臓部へと牙を剥いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ