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懐の小文  作者: 葡萄
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日本語のミニレッスン

ペンパルサイトでの、若い外国人女性への返信抜粋

 立て続けに、海外の三人からメッセージが届いた。日本に興味がある、というだけではなく、きみのように直接に日本語を教えてほしい、というものも一人いた。正直な話、少し困惑している。わたしがこのサイトに登録したのは、異国人の誰かに日本語を教えてみたいからではない。ありていに言えば、たんなる気まぐれにすぎない。

 また、わたしは文化人などではなく、日本の田舎に住むただの一般人だ。たとえ日本語を母語とするものであっても、それを異国人に教えるのは簡単なことではないはず。わたしにその資格があるとは思えない。だから、「よし、教えてあげよう」と安請け合いはできないし、するべきでもない。かといって、せっかくメッセージをくれたのに、「悪いけれど、それはできない」とむげに断るのも、いささか気がとがめる。

 しかし、きみのお便りだけは、意外にもわたしの母語である日本語を改めて考え直すきっかけになった。きみに日本語を教えるというのではなく、あくまでも日本語学習のお手伝いをするということなら、それはわたしにとってちょっとした刺激になりそうな気もする。

 きみは単なる日本語への興味だけではなく、たった三か月であるとはいえ、安くない授業料を払って日本語学校に通った。その志は、たとえ熾火のようであっても、まだきみの心の中の炉で小さく燃え続けているはずだ。きみが日本語の「風の便り」に、ふだんにはない異国情緒を感じたのも、きっとそのためだろう。その心の炉に新しい薪をくべることはわたしにはできそうもない。けれど、乾いた枝葉を添えることくらいならできる。今まで人に教えた経験などないとはいえ、仮にも日本語はわたしの母語だからね。手伝うよ。

 そこで、これはきみへのリクエストだ。次のお便りからは、きみの知っている日本語の単語を使って、まず手始めに三つくらいのセンテンス(フレーズでもよい)を文末に別記してほしい。ただし、そのためにわざわざ勉強のように考えたり、アプリを使ったりしてはいけない。また、そのいくつかのセンテンスの間に脈絡は不要だ。単に羅列するだけで十分。その作業の所要時間は一分か二分。三つ以上のセンテンスを書く必要もない。パラグラフは基本的に一つでよい。もちろん、三つでも四つでもかまわないが。いずれにせよ、あくまでもコーヒーブレイクの時間のお遊びとして、そのときにふと思ったことや、目の前にあるものをワン・センテンスにして単純に記述してほしい。知らない日本語の単語や漢字は、当面は辞書アプリを使わずに英語で書いてかまわない。


例えばこんなふうに──


いま、雨がふっています。

わたしは、とても(hungry)です。

わたしの名前は、シャーロットです。


(Wall)の色はベージュです。

新しい靴が(need)です。

午後は本を読みます。


 このやり方で、きみとのミニ・レッスンの例文を作るなら、わたしは、使う単語をきみのいまの日本語レベルに合わせなくてもいい。そしてきみも、ごく基本的な日本語の文型を使って、大人レベルの例文を作ることができる。わたしもまた同様の書式で例文を書く。中できみの知らないと思える日本語の単語には、英単語を付記する。──


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