番外編 新人教育:影山案件対策マニュアル
新人教育初日
ギルド訓練センターの教室。
新入り暗殺者たちが緊張した面持ちで席に座る中、黒板に大きく書かれていた文字が目に入る。
【特別講義:影山案件対策】
講師役のベテラン暗殺者・カーンが深いため息をついた。
「……お前らがこれから生き残りたいなら、絶対に避けて通れない存在が一人いる。」
新人の一人が首をかしげた。
「影山……ってあの事故死Sランクの?」
「そうだ。」
カーンは真剣な顔で言い切った。
「奴のそばにいたら、死ぬ。100%だ。」
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カーンは黒板に【死亡率100%】【通報率100%】と書き殴った。
「まず覚えておけ。影山に近づいた標的は、99%ではない、100%死ぬ。
そして現場の第一通報者は、必ず奴だ。」
新人の一人が手を挙げる。
「……じゃあ、味方として行動すれば任務成功率100%じゃないですか?」
カーンは机を叩いた。
「死ぬのは標的だけじゃない!味方も死ぬんだ!」
教室が静まり返る。
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カーンが分厚い冊子を掲げた。表紙にはこう書かれている。
『死神案件対応マニュアル ver.4.0』
(※バージョン4までに講師2名死亡)
ページをめくり、読み上げる。
•第1条:影山幸太に話しかけるな
•第2条:半径10メートル以内に入るな
•第3条:同じ任務に志願するな
•第4条:彼が近づいてきたら祈れ
新人たちは凍りついた。
「これ……ギルドの人間に対してじゃないですよね?敵じゃなくて……?」
「影山は敵より危険だ。」
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スクリーンに映し出されたのは過去の記録映像。
タイトルは
「事故死Sランクシリーズ」。
•試作品暴発で依頼対象死亡→110番通報
•鍋パーティー準備中、友人を毒矢で即死→110番通報
•スーパーで白菜を取っただけで標的死亡→110番通報
•ギルド内新人が挑発し、ライトが落下→死亡→110番通報
映像を見た新人が震える。
「これ……全部、意図せず……?」
「そうだ。殺意ゼロ、結果100点。」
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新人の一人が手を挙げる。
「……質問いいですか?」
「言え。」
「もし影山さんが同じ班に配属されたら……?」
カーンは冷たい目をした。
「運を天に任せろ。」
「……他に方法は?」
「祈る。」
「…………。」
別の新人が涙目で呟く。
「これ……暗殺ギルドっていうよりサバイバル訓練じゃないですか……」
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最後にスクリーンに映ったのは、ギルド会長の顔だった。
『諸君、影山幸太と出会った場合は、即座に距離を取り、死に備えなさい。
彼を止める方法は存在しない。
我々幹部ですら、彼と同じ部屋に30分以上いる勇気はない。
……だが忘れるな。彼のおかげでギルドの依頼成功率は100%を超えている。
死神の加護は、時に味方も呪う。』
映像が途切れると、教室は静まり返った。
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カーンが最後に言い放った。
「……お前ら、影山案件に関わらず暗殺者を名乗りたいなら、一番大事なことを覚えておけ。」
チョークで黒板に書かれた言葉。
『影山幸太から逃げろ』
新人たちは黙って頷いた。
その日、ギルドに新たな都市伝説が生まれた。