ー第2話慈恵医大病院
中古のキャラバンで慈恵医大病院地下2階の駐車場に、業者を装って駐車した。キャラバンの横と後ろに「Omurin清掃」と云うステッカーが貼ってある。YouTuberを始める前の仕事で使っていた作業車だ。清掃用具も載っている。
業者用エレベーターで、地下1階に行く。
地下1階には霊安室が有る。そこに亜嵐の遺体が有ると読んだ。
エレベーターが開くと、警官が面倒臭そうに言う。
「通行許可証」
「えっ?清掃作業者ですけど」
「一階で、通行許可証発行してもらって」
警官は「閉」ボタンを外から押して、引っ込んだ。
一階に上がって、御成門口に行く。新橋口は守衛所が有って面倒臭い。
御成門口には蕎麦屋が有るが、入口が施錠され、閉鎖の札が掛かっており、ドアの窓に押し付けられた、知り合いの顔が見えた。
報道陣と野次馬が殺到している。
手を振って、彼だけ入れてやる。
「キューティクル、霊安室は通行許可証が要る。遺体には会えない」
「オムリン?どうやって入った?」
「オムリン清掃で」
「テロリストか!」
「い~や、業者ですもん」
「ヤバいから。外に出てこい!外で話そ。防犯カメラで守衛がくるぞ」
地下駐車場を出て、止まっていると、キューティクルが来た。メンディーとセキリンも居る。3人を乗せて、横浜方面に走り、ビックリドンキーに入った。
「オムリン、入口全部閉鎖されてた。外来も臨時休診。臭わないか?」
キューティクルの横でメンディーとセキリンがハンバーグの争奪戦を繰り広げている。
「ごめんオナラしちゃつた!」
「その臭いじゃねえよメンディー!」
オムリンはカリフラワーのステーキを食べながらスマホでニュースを見ている。
「キューティクル…こりゃヤバいは」
「なになに?」
「警視庁は事件性無し。自死と断定。まだ4時間。他殺事故の捜査をする時間は無い」
「セキリン知ってる!ベテラン刑事は現場を見ただけで、自殺他殺事故か判る!」
オムリンはセキリンをフォークで指差した。
「捜査報告書が要る。判断根拠が要る。見てハイっ自殺に出来ない」
メンディーが勝ち取ったハンバーグを掲げて言う
「現場検証前に決定してた?」
セキリンが隙を盗んで、メンディーが掲げるハンバーグに食い付く。
「お前ら、もうひとつ頼め!」
「そうね!頼も」
2人は静かになった。
「亜嵐の都市伝説的事件性は?」
「インスタグラムに、枕営業を示す画像が上がってる。枕の柄。熊のプーサンは中国共産党トップを示す。それにウインナーを向けている。…それに下垣内由香の写真が壁に貼ってある」
「ファーストシングル不発。月9ドラマ視聴率10%の地雷タレントが、突如、ゴールデンウィーク目玉劇場版あざと女王主役に抜擢」
キューティクルが記憶をたどる。
メンディーが新しいハンバーグに口に入れたまま言う。
「それだけじゃ動画に出来ない」
「食ってから言え!」
オムリンが口を拭いた。
「そゆこと。もし、他殺だとしたらリスクしかない。決定的で無くても証拠が、もっと要る」
その証拠をオムリンは望んでいなかったが、決定的な証拠を持っていると、DMが来ていた。