悩ましいこととかがあるわりに
ドーナツの穴は
ナニイロ、なんだろうねえ
ねこがつぶやいた
わたしのほうを向いて、ではなく
窓の外を見ながらだった
ぼそっと、口から出ただけかな、と
わたしは、それに、応じなかった
しばらくして
ドーナツの穴は
ナニイロなんだい？
先ほどより、やや強い口調
さらに、わたしのほうに、向き直っている
確実に、わたしは、問われている
けど、なんと答えたものか
うーん
と、言って
ごまかす
うーん
と、言って
時間がすぎるのに、まかせる
うーん
さすがに、ねこも、イラッとしたようで
なんだ、ニンゲンのくせに
そんなことも知らないのか
言われてしまった
キミは、知ってるの？
あたり前だ
ドーナツの穴は、ただの穴だが
美味しそうにのぞきこむことで
オイシーイロになっていくんだ
ふーん
よだれでもたらしながら、のぞきこんだら
よりいっそう、オイシーイロ、に
なるだろうねえ、きっと
ふーん
妙に納得のような
そうでもないような
ともかく、これから
ドーナツを買いに
行ってこようと思う
