今カノと元カノの自分勝手な事情
私は、りゅうと渋谷で別れた後、スマホを見た。やはりあいつから連絡は入っていた。
りゅうが、○○通ストラテジーラボに行って半年間、毎日の様にりゅうとは、どんなに遅くてもスマホで話した。
でも、忙しい時は一週間位話せない時も有った。ラボの中ではスマホの使用は禁止されているから連絡出来ないという事だった。
仕方ないと思ったけど寂しかった。せっかくりゅうが告白してくれた。直ぐにキスやその先にも進むのかと思ったら、彼は相当の奥手の様で、やっと体の関係を持てたのは、半年たってプロジェクトが一段落した今日だった。
でもその間は寂しかった。相手がろくでもない人間でもあれを体が知ってしまうとどうしても我慢出来ない時がある。
仕方なしに、一人でしても物足りない。そんな時だった。あいつから声を掛けられたのは。
最初は断ったけど仕事上、席も近く話もする。毛嫌いしている訳にも行かずに仕事上の話をしていると、どうしても気が緩んでしまった。
それからは二週間か三週間に一度、あいつに抱かれた。あいつはとても上手くて何回もいってしまう。いつも夢の中に連れていってくれた。そしていつものセリフ。
『妻とは別れるから俺と一緒になってくれ』
誰が、あんたなんかと一緒になるかと思っても体は反対の意思表示をしている。自分でも情けないと思った。
でも今日、りゅうの初めてを私が貰った。もうあいつに会う訳には行かない。だからあいつの連絡先をブロックした。通話記録もみんな削除した。
これでいい。これから私はりゅうと一緒に過ごすんだ。本当は明日も会いたかったけど、りゅうは疲れているみたいだし。それにこれからは毎週会えるって言っていたから。
俺は、まどかと別れた後、アパートに帰ってシャワーを浴びた。ホテルでも浴びたけどやっぱり嫌だった。性格的なものかな。でも今度からは、彼女と出来ると思うと何となく嬉しかった。
明日は、御手洗千賀子と会う。約束したから会うけど、まどかとこうなった以上、彼女とは過去はどうあれ、もう一人の知人、仕事仲間として接するのが常識だろう。
翌朝、俺は渋谷のハチ公前交番に午前十一時十五分前に着くと彼女はもう来ていた。
「おはようございます。御手洗さん」
「おはよう、りゅう。ねえ、その余所余所しい言い方止めて。お願いだから」
「そうは言われても」
「もう、取敢えず、少し歩いて食事しようか」
「はい」
どちらともなしに、駅の近くに出来た○○スクエアに足を向けた。歩きながら
「りゅう、大学時代は、どうしてたの?」
「どうしてたって?普通に勉強していたけど」
「やっぱり性格意地悪になった?」
「そんな事ないと思うけど。普通に勉強して普通に遊んで。サークルやゼミにも入って、普通にしていた」
「ふーん、彼女は?私と連絡しなくなってから彼女は出来たの?」
「出来なかったよというか作れなかった。俺は彼女を作るには不向きな人間だと思ったから」
「なにそれ?りゅうは普通にもてたでしょ」
「ぜんぜん、声も掛けられなかったよ」
実際は何回か掛けられたけど、今一歩踏み切れずにみんな離れて行ってしまった。
「へぇ、信じられない。りゅうは優良物件なのに」
「優良物件?」
「うん、りゅうは優良物件。真面目だし、優しいし、相手の悪口も言わないし、私の我儘も一杯聞いてくれたし、それに強いけど決してそれを表面に出さないし、後は、私にとっては素敵なイケメン」
「あははっ、それ盛り過ぎだろう。だったらなんで大学入ってあれだけ誘ったのに全部断ったの?だから俺は振られたと思って諦めた。
結構精神的に響いたよ。俺も御手洗さんを好きだったから。だから女性不信にもなった。好きになってもどうせ離れていくなら彼女なんて作らない方がいい。
大学出て、仕事して親が決めた女性と結婚すればいい。愛情なんていらないって思ったよ。だから大学に入っても彼女は作らなかった」
りゅうからこんなにはっきり言われたのは初めて。私の所為で女性不信になった?結婚は親が決めた人?愛情なんていらないって。なにそれ?
いきなり彼女が歩くのを止めた。俺も歩くのを止めると今度はいきなり手を引いて通路の端に連れて行かれた。
「ここじゃ、これ以上話せない。来て」
「来てって何処へ?」
「来れば分かる」
それから御手洗さんは、黙ったまま、俺の手を引いて道路まで出ると、最近新しく出来たショップやレストランが入った四階建ての最上階に連れて来た。半分公園になっている。
そこのベンチに座って
「ごめん。いきなりこんな所まで連れて来て」
「別に構わないけど」
「私ね。大学に入ってもりゅうとは付き合っていくつもりだった。でもりゅうから会いたいって日に限って、先に用事が入っていて、まだ大学入ったばかりだからせっかく出来始めた友達の約束を断る事が出来なかった」
「無理があるよ。俺が会いたいって言った日は一回や二回じゃ無いよ。俺の会いたって言った日や時間にそんなに都合よく友達との約束が入る訳。とても信じられないよ。むしろなんで今になってそんな言い訳するか分からない」
「本当にごめんなさい。りゅうだったら分かってくれると思って。私が我儘だった」
「それにその後、君から連絡は一度も無かった。結局それが事実でしょ」
本当は、その頃、大学時代に知り合った彼が、積極的に会いに来ていて、りゅうの時間は取れなかったし、段々彼に夢中になっていた。
半年後に別れたとは言え、その時、りゅうに電話していればこんな事にはならなかった。
「何も言えないって事は、俺を振ったって認めて居るんでしょ。御手洗さんは仕事柄話をしないといけないから、ここで怒ってもよくないけど、もうりゅうって呼ぶのは止めてくれ。俺は君とは付き合っていないんだ。それを今君が認めたから」
「…そんな事ない。そんな事ない。私は今でもりゅうの彼女なの」
何言っているんだこの女。
「俺帰るよ。じゃあね」
「あっ、ちょっと待って」
御手洗さんは俺の袖を掴んだ。
「なに?」
「こんな気分だけど、お昼一緒に食べたい。今日はそれが目的だから。食べたい所決めているんだ」
断るのは簡単だけど、明日からの仕事に支障きたしても仕方ない。
「分かった。お昼は一緒に食べようか」
「ほんと、じゃあすぐ行こう」
彼女はさっきまで見せていた絶望的な顔を緩めてちょっと作り笑いをしている様だった。
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書き始めのエネルギーはやはり★★★★★さんです。ぜひ頂けると投稿意欲が沸きます。
それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。