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諦めない元カノその二


 俺は翌朝、いつもの様にテクノロジーラボに出勤すると

「おはよう、りゅう」

「おはようございます。御手洗さん」


 千賀子で良いって言っているのに。


「ねえ、今日のお昼休み、一緒に食べたいんだけど?」

「うーん、他の人は?」

「りゅう、ちょっとお願いが有って」

「今言えないの?」

「だから昼休みの時に」

「分かった」



 午前中は、室長とのミーティングと開発室メンバとの課題確認で終わった。徐々に室の仕事から移行していく感じだ。


 お昼になり、七階のカフェテリアに御手洗さんと二人で行った。二百人は入れるが同時にラボ全員と言う訳には行かないので各部毎に三十分ずつシフトしている。俺達は十二時半からだ。



 ショーケースに入っているサンプルを見てからチケット販売機で食券を買う。社員証をかざすとチケットが出てくる仕組みだ。かかった代金は給料から天引きだ。


 俺は、チキンの照焼セット、御手洗さんはレディースランチだ。二人でトレイを持ちながら空いているテーブルの席に着く。


「やっと、りゅうと一緒にお昼を食べられる」

「…………」

 なんて返せばいいか分からない。


「御手洗さん、お願いって何?」

「実は…。夏休みいつ取るの?」

「夏休み?決まっていない。仕事の進捗かな。SS7範囲(四月から九月までの間に連続七日間休む決まり)でどこかとは思っているんだけど、もう七月も半ばだし、どうしようかなと思っている」

「ねえ、一緒に取らない?」

「えっ?!」


「出来れば二人でどこかに行ければと思って」

 また、なんという大胆な提案。


「二人で、ですか?」

「駄目かな?」



 二人で行くって、そういう事だよな。うーん。どうしよう。優香とはスナックで知り合って、先に肉体関係になってしまったけど、恋愛感情がある訳でも無いし、いい子ではあるんだけど。


 でも御手洗さんどういうつもりなんだろう。一度は振っておきながら、なんでこんなに寄って来るんだ。今更俺を好きだなんて言わないだろうし。


「構わないけど、日にち次第かな。仕事の合間になるから、今から予定立てにくい」

「でも休暇予定出せば、余程の事が無い限り休めるでしょ」

「そうなんだけど」


 休暇は欲しいけど、御手洗さんと行く事には抵抗ある。それは彼女が何故俺を誘うのか分からないからだ。


「御手洗さん、何で俺と一緒に行きたいの?他に友達とかいるんじゃない。それに御手洗さんモテるし」

「りゅう、それを知りたいなら、この時間じゃ足らない。今日の退社後、時間無い?」

「今日は、最後のミーティング終わるのが午後八時だから会う時間には遅すぎるよ。今度でいい?」


 せっかく今話せているのに、これを逃したら次に会うチャンスが出来るか分からない。

「いい、午後八時過ぎでもいい。会って話したい」

「…。そこまで言うなら」

「じゃあ、午後九時に渋谷のハチ公前交番でどうかな?」

「場所的には良いけど、やっぱり遅すぎるよ。今度にしよう」

「いやだ、会いたい。そこが駄目なら自分の席で仕事して待っている」

 まあ、社内ならその時間は問題ないか。


「分かったよ」

「じゃあ、午後八時ね」




 午後八時過ぎにミーティングが終わり、室長と一緒に席に戻ると御手洗さんが自席で待っていた。

「終わった?」

「うん」


「なんだ、神崎。御手洗さんとこれからデートか?」

「はい!」

「違います。今から少し話をするだけです」

「あははっ、まあいい」


 そう言うと室長は、次のミーティングに行ってしまった。まだこの時間、役員は通常作業時間だ。



 時間も遅いので、会社の駅の近くのレストランで食事をする事にした。席に案内され注文をすると


「りゅう…」

「何?」

「はっきり言うわね。大学に入った時、好きな人が出来たのは本当の事。でもその人とは半年で別れた。それからは誰とも付き合っていない」

「…………」


「りゅうの事はずっと心の中に有った。でも大学も違って会う機会も無くなって諦めていたの。

 でも今回の商用AI企画開発室で、りゅうの元の会社の商用AI開発に関わる部門を吸収する話が出て、その中にあなたの名前を見つけた時、私は天啓だと思った。

 こんな偶然なんて神様でも無ければ実現出来ない。でも、あなたがどこに配属されるまでは分からなかった。開発の中枢という事だけは分かっていたのだけど。

 そんな時だった。ラボの地下通路であなたに会えたのは。これは偶然では無く必然だと思った。だから、私はあなたにもう一度自分の気持ちを分かって貰いたかったの」


「御手洗さんは、今でも俺の事が好きだと言っているの。高校の時と同じような感じだと?」

「高校の時と同じ気持ちではないと思う。今はもっと深くあなたを好きになっているから」


「だから、僕がUSに行く辺りから、執拗に僕に近付いて来た訳だ」

 彼女は何も言わずに頷いた。


 俺は目の前にある料理を食べながら考えた。


 ようは、大学時代に知り合った男と上手く行かなくなって、その後もいい奴が見つからないから、俺の事をいつまでも思っているという風な事を言って、また俺とくっ付こうとしているって事か。

 それでいい男が出来たら、また俺から離れる訳か。どうしようかな。


「ねえ、好きってだけで、一緒に旅行行こうなんて普通考えないよね。どういうつもりか分からないんだけど?」

「本当は恋人同士になりたい。でもそのチャンスが無いから、今度の旅行でそうなりたいと思っている」


 やっぱりな。一時の遊び相手か。それはそれでいいか。振られるの覚悟というより、遊んで別れた位に考えておけばいい。


「分かった。俺の気持ちがそこまで動くか分からないけど、そこまで御手洗さんが俺を思ってくれるなら、一緒に行っても良いよ。でも仕事や急用が入ったら、中止になるけどいいかな」

「延期とか出来ない?」

「中止になる理由に因るかな」

「分かった。そんなんでもいい。嬉しいよ。りゅう」



 りゅうと一緒に旅行に行ける、二泊三日位で行けば、十分に彼に私の気持ちを理解してもらえるはず。そして彼の気持ちも私に向いてくれるはずだ。楽しみだな。でも今から予約って…。何とかするしかない。

 

―――――


投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 



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