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打合せは順調なんだけど


 着いた初日は御手洗さんに振り回されたけど、二日目からの打合せは問題なく開始出来た。


 今の固定化したDBをクラウド化する為のセキュリティ上の課題の洗い出しから始まる。特に最近のハッカーは帯域幅を超えて来る優秀な輩もいる為、その辺に付いても課題に上がった。

流石に世界有数のDB会社だ。色々な専門家がピンポイントで参加してくれるから話が進んだ。


 御手洗さんもこの時ばかりは真面目に会議に臨んだ。流石にあの企画室にいるだけの事はある。



 私はりゅうや彼の同僚が、会話する内容をすべて理解出来ないが、相当に高度な話だという事は聞いていて分かる。帰ってからの確認事項を聞き洩らさない様に真面目に参加していたおかげで、流石にこの時はりゅうの事は頭から退かしておいた。


その後、皆で食事に行こうという事になったが、私がりゅうから離れないので相手の会社の人が、彼は私の彼氏かと聞いて来た。


直ぐに、はいと答えたが、りゅうがそれを否定したので、笑われてしまった。ただ、彼を呼ぶ時、りゅうと言っていたが、向こうも日本語は分かる人がいて、りゅうの事をドラゴンとニックネームされて彼が笑っていた。


こうして初日は終わり、ホテルに帰った。せっかく隣同士の部屋にしたのに昨日は疲れて寝てしまって、今日もこの調子では彼の部屋に行けない。明日こそと思って取敢えず寝る事にした。



打合せ二日目も順調に会議は進んだ。ただ課題にはネットワーク上の弱さやBCP(ビジネス継続計画)展開方法やデータ連係ミス時のコンテンジェンシープラン等で課題が多く見つかった事も成果だが、解決策も一長一短には出て来そうになかった。

やはり商用AIを一般インフラに乗せるには課題が多いという事も見えて来た。


そんな感じで無事に終えた打合せ二日目の夜、俺がシャワーを浴びてノートPCで明日の打合せの確認をしていると


コンコン。


 誰だ?


コンコン。


知り合いは居ない筈…じゃあなかった。廊下に立たせておくのも不味いと思い、ドアロックを掛けたままドアを少し開けると

「りゅう、入らせて」

「何か用?」

「用事が有るから来たの」



 俺はドアロックを外して御手洗さんを部屋に入れると彼女はスタスタと部屋の奥に行き

「へーっ、真面目なんだ。これ明日の打合せ資料でしょ?」

「そうだよ」


「ねえ、せっかくUSに来たんだし、少しお話しよ」

「御手洗さん、遊びに来たわけじゃないから」

「分かっているけどさ。明日は打合せ終わったら昼の便で帰るんだし、今日だけなんだよ。りゅうとこうして居られるの」

「御手洗さん、前にも言ったけどりゅうは止めて、昨日も誤解されたし」

「ふふっ、ドラゴン神崎。似合うわよ」

「そういう事言っているなら出て行って。今仕事中だから」

「ごめん、ごめん。ねえ、お願いがある」


「なに?」

「もし、今日出来ないなら、帰国してから一度でいいからしてほしい。この前出来なかったし。あの時りゅう今度にしようと言ってくれたじゃない」

「…………」

 何を言っているんだ。この人。こんな時にあっちの話をするなんて。


「何回もとは言わない。でも大学に入学した時に、りゅうの誘いを断ってしまった償いをしたいの」

「そんな償いいらないです。もう何年経っていると思っているんですか。それに俺達はもう社会人になって何年も経つでしょう」

「でも、お願い。そうしないと私の気持ちが収まらない」

「それは、御手洗さんの個人の問題です。俺には関係ありません」


 何とかしないとせっかくホテルの部屋を隣同士にしたのに。無理矢理は悪手だろうし。何とかりゅうからOKを貰わないと次に進めない。


 急に御手洗さんが俺のベッドに乗って思い切りお辞儀をした。

「お願い」


 彼女が頭をベッドの近くまで下げているお陰で、胸の周りの緩いTシャツが思い切り前を開けている。この人ブラしていない。最初からそのつもりで来たのか。


「御手洗さん。頭上げて下さい。もう夜も遅いし、お互い寝ないといけないでしょう」

「だから一緒に寝よう?」

「駄目に決まっているでしょう。お願いですから、出て行って下さい」



 彼が机の方を向いてしまった。仕方ない。最終手段だ。私は意図的に首元が緩いTシャツを脱ぐと、彼の傍に行って

「りゅう」

「なに、うわっ」


 私の生胸に思いきり彼の顔を埋めて頭の後ろを押さえた。これなら取れない。



 もがっ、もがっ、もがっ。


 必死に頭を彼女の胸から離そうとしても彼女は立って頭を押さえに来ている。俺は座って後ろを向いた姿勢でいるので腕の力だけだ。いくら男女の力差があると言っても、これを解くのは厳しい。


 でも彼女の肌からは本当にいい匂いがする。ついそのままにしていると

「りゅう、して。後は引き摺らない。お願いして」


 彼女の腕の力が緩んだ。強引に頭に有った彼女の腕を外して椅子から立つと、彼女の綺麗な上半身が見えた。判断が誤りそうな位素敵な体だ。


「御手洗さん、分かった。帰国したらしよう。でも明日は詰めの日だ。だから今日はどうしても駄目だ」

「りゅうは本当に仕事人間ね。いいわ。ここまでして仕事優先されたら仕方ない。帰国したら日曜日会って」

「そこは無理」

「じゃあ、いつがいいの?」

「水曜日」

「絶対だよ」

「ああ。嘘はつかない。だから洋服着て自分の部屋に戻ってくれ」

「分かった」



 私は仕方なく、Tシャツを着ると部屋に戻った。出来なかったかぁ。スケジュール的に無理が有ったかな。でも水曜日に出来る。




 ふーっ、何とか部屋に戻って貰えたけど、なんでそこまで俺としたいんだろう。もっと自分を大切にすればいいのに。

大学入学の時の事なんて、多分言い訳だろうけど。まあ、今度の水曜日も上手く避けないとな。




 翌日、俺達は午前八時半から午前十一時まで洗い出された課題の最終確認と認識合わせをして帰国の途に着いた。


帰りの飛行機の中も大変だったけど。


―――――


投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 



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