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諦めない元カノ


 俺は翌月曜日、いつもの様にラボに出勤した。今企業向けに提供を始めた商用AI第一版(Rev1.0)は、初期版で有る為、これにオプションを付けたRev1.1の開発や大規模な機能アップを行うRev2.0の企画が始まっている。


 マイナーリリースアップをしながら市場の反応を取り入れて新機能を追加する為の企画だ。週一回の会議だが、当然これには御手洗さんも参加する。


 彼女は企画室全体のセクレタリの一人で有る為、会議で座る席も違うが、どうも視線が気になる。


 そして会議が終わると会議室を片付ける振りをして俺の所に近付いて、小声で

「午後三時のスリットの時カフェテリアで待っている」

とか言うけど


「今忙しくてその時間は室の隣の簡易休憩施設にいる」

と言って断っていた。



 そんな事が二ヶ月位続いて年も明けた一月、俺は三日間の出張を命じられた。行先は、サンフランシスコの某有名なデータベースの会社。


 本来はWEBで出来る内容でもあるが、顔を知っているつまり対面で会っているのと知っていないとでは、今後の相手の反応が全く違う。


仕方なしに同僚二人と俺で行く事になった。月曜日行って金曜日に帰る一般的な週中出張だ。まどかとのデートには影響がない。


 だけど…。向こうに行く為、企画室の人と向こうで話す資料の確認を行った時、

「神崎君、私も行くから宜しくね」


 なんと企画室からは御手洗さんも参加する事になっていた。これは不味い、不味くないけど不味い。往復の飛行機の席とかホテルの予約とかは全て企画室で行う事になっているからだ。



 行く前日にまどかに連絡した。出張の事は前から言ってある。

『明日からシスコに行って来る。金曜の夕方の便で帰って来るから成田に着いたら連絡するね』

『うん、何時に着くの?』

『こっち時間で午後二時五十五分』

『じゃあ、迎えに行ってもいい』

『それは駄目だよ。万一の事もあるし』

『じゃあ、土曜日朝からりゅうのアパートに行っていい』

『うん、ちょっとジェットラグあるかも知れないけど』

『それでもいい。朝から行く』

『分かった。おみやげ買って来るから』

『楽しみにしている』




 そして当日、渋谷から成田エクスプレスに乗って成田に行った。室の仲間はリスク分散の為、航空会社を変えたりフライト時間が違う便で行って、現地ホテルで集合だ。


 俺も当然一人で行くのだろうと思って成田に行くとチェックインのカウンタの傍に…御手洗さんが居た。

「あっ、来た来た」

「あれ、なんで御手洗さんここにいるの?」

「なんでって私も行くからでしょ?」

「でも便が違うんじゃ?」

「ううん、君と私は同じ便だよ。ほらシートも隣同士」

 俺に彼女が持っているフライトチケットを見せてくれた。


 やられた。企画室で往復の便とホテルの予約をする事にはなっているがまさか、こう来るとは。でもさすがにホテルは別室だよな。


 シートはビジネスだった。エコノミーはちょっときついと思っていたから助かるけど、俺の隣に御手洗さんがいる。

 それも何故か俺が窓際だ。そして彼女が通路側。窓の外を見る振りをして俺の方をジッと見る彼女に

「シート交換しようか」

「いい、どうせ雲海と海しか見えないから。それより七時間半かかるんだから何か飲まない?」


 ビジネスはエコノミーと違ってアルコールも物がいい。確かに途中仮眠するけど…。

「俺は、資料確認するから御手洗さんだけで」

「もうつれないな。じゃあ私もいい」


 こんな感じで、夕食の時間も勧めて来た。この後は寝ないと向こうに着いた時は昼間になるので俺もビールとその後、ジントニックを頼んだ。


 ふふっ、りゅうが私の横で目を閉じている。ちょうどこっちに顔を向けている。周りも静かだし。CAはいない。ちょっとりゅうの方にシートを乗り越えて


 チュ。チュー。


 少しアルコールの匂いがしたけど、これなら当分起きないわね。ふふっ、後でまたしようかな。


 今回の出張の便の手配やホテルの手配は全て私が調整した。上司から今回の出張の話が合った時、本当は他の子が調整するはずだったけど、私がやると言って引き受けた。


 この便も当然意識して事。ホテルだって、他のメンバはフロアが違うけど、りゅうと私の部屋は隣同士。

 ふふふっ、この出張で彼との距離を一気に詰めるんだ。さて私も少し睡眠取らないと。




 俺は、ビールを飲んだせいか、ちょっとトイレに行きたくなった。隣で眠る御手洗さんを上手く避けてトイレが開いている事を確認するとドアを開けた。目の前の鏡に映る自分の唇に何故か赤というかピンクっぽい色が着いている。俺はそれを手で拭くと


 えっ、これって!あの人まさか俺が寝ている時に。もう絶対反対側を見て寝てやる。自分のシートに戻ると彼女は可愛い寝顔をしていた。

こんな事しなければ、いい子なんだけど。しかし、向こうに着いてからは思いやられる。




 無事にサンフランシスコ空港に着いた俺達は、入管手続きをした後、空港の傍のレンタカー屋に行って一台借りた。

「りゅうって、左ハンドル運転できるの?」

「出来るけど」

「だって、りゅうUA来た事…」

「あるよ。大学時代は父さんの都合で毎年来ていた」

「お父様の都合?」

「いいじゃないか、そんなプライベートな事。それより行くよ」


 ここのレンタカー屋専用のブラックカードとクレカを見せると直ぐに鍵と説明用紙を渡してくれた。

 レンタカーの位置やナンバープレートが記載されている。駐車場出口で国際ライセンスを見せるのだけど、大体の人が日本のライセンスも見せろと言って来る。


 それも終わらせるとそのまま外の道路に出た。空港を外れると四車線道路だ。日本と違って広い。制限時速は八十マイル。でも俺は目が慣れるまでは六十マイル位で走る。


「神崎君、慣れているね。とても安心して乗っていられる。ねえ、右側通行って違和感ないの?」

「これだけ広い道路だよ。右側も左側も無いだろう」

「ふーん、そんなものか。あっ、海が見えて来た」

「あれはサンフランシスコ湾だよ」

御手洗さんは観光気分丸出しだ。大丈夫なんだろうか。


二人でそんな事を話ながら101を南下していくとサンマテオブリッジを左に見て直ぐに目的の会社が見えた。そこで降りて少し走って三泊するホテルに着いた。


「りゅう、集合時間まで時間有るよ。私全然知らないから、案内して」

 本当は私もシスコには遊びに来ている。でも車は運転した事が無い。


「うーん。俺もこの辺は初めてなんだ。シスコの街中ならよく知っているんだけど。チェックインしたら、考えようか?」

「うん!」


 何故か御手洗さんはとても嬉しそうに返事をした。俺はその笑顔が不安なんだけど。


―――――


書き始めのエネルギーはやはり★★★★★さんです。ぜひ頂けると投稿意欲が沸きます。

それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。


宜しくお願いします。

 



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