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死んだ君との夏の軌跡  作者: 中野奏・憑野愁
6/10

47日目

 見慣れた街路を往く。嫌になるほどの日差しを透かしながら数分、目的地まで辿り着いた。


 彼と会う時は、最早当たり前のようにこの公園だ。


「よぉ。」


「お待たせ。」


「先週は悪かったな。」


「ううん。体調はもう大丈夫?」


「あぁ、おかげさまで。」


「良かった。」


「で、今日は何をするんだ?」


「えーっと…。今日は少し話したいことがあるんだよね。」


「話したいこと?」


「……うん。」


 伝えなければ…。私の本当の気持ちを。私が消えてしまう前に。


「どうした?はっきり言ってくれないと分からないぞ。そんなに察しの良い方でないことは分かってるだろ?」


「うん……。」


 大きく息を吸って呼吸を整える。


「私、あと2日しかこの世に居られないんだよね……。」


 また伝えられなかった…。いざ彼を前にするとどうしても言葉が出なくなってしまう。


 彼の方を見ると、驚きと悲しみの入り交じったような複雑な表情をしていた。


「……あと2日?」


「うん。」


 彼は何かを諦めたように一つ溜息を吐いて言った。


「それで、お前はそれでいいのか?」


「え?」


「やり残したことはもうないのかって聞いてるんだよ。」


「うん。もう十分だよ。ありがとう。」


「……嘘だな。本当はまだやりたいことあるんだろ。」


「……!」


 やっぱり暁人には敵わないな。いつも私の些細な変化に気づいてくれる。私は、そんな暁人のことが…。


「で、あとは何をやりたいんだ?」


「それは……」


「……。まぁいいや。もし言いにくいようなら、日を改めないか?俺も少し考える時間が欲しい。」


「……うん。そうだね、そうしようか。」


 本当はもっと彼と一緒に居たかった。


 明後日まで片時も離れたくないとさえ思った。


 でも、今のままではいつまで経っても気持ちを伝えられないだろう。それに、暁人がどこか思い詰めたような表情をしているのも気になった。唐突の報告だったから混乱させてしまったのかもしれない。


 次に会うのは明後日の1時。


 私の存在できる最期の日だ。


 その時までに心構えをしておかなければ……。

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