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孤高のミグラトリー 〜正体不明の謎スキル《リーディング》で高レベルスキルを手に入れた狩人の少年は、意思を持つ変形武器と共に世界を巡る〜  作者: 白芷


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第八十四話 混沌の獣


 拠点に近づくほどに、戦闘音と思わしき轟音が徐々に近づいている。

 安全なはずの拠点の方向から響く連続した怒号と叫び。

 その異様な雰囲気に、俺たちは気配を極力消して木陰に隠れながら拠点に近づいていく。


 そこには最早出発前の面影はなかった。

 指導役として来てくれていた冒険者の人たちと暴れ回る瘴気獣。

 二つの勢力が互いに争い合う戦場と化していた。


 オーク、オーガ、グレイウルフ等、これまで戦ったり目撃した瘴気獣が多数存在している。

 その中でも一際目立つ戦いがあった。


 黒白の煙のような吐息を口元から漏らし、見るからに獰猛な牙。

 長く大地に食い込む四肢の爪。

 全身を覆うしなやかで長い体毛。

 瞳は冷たく、近づく者を容赦しない冷酷さに満ちている。


 その瘴気獣はグレイウルフと似通った特徴があるもまったく体格が異なっていた。

 

 巨大だった。


 体高だけでも四m近くある。

 あれなら簡単に人を噛み砕き、前足の一振りでもって上半身と下半身を両断することすら可能だろう。

 

 そんな凶悪な瘴気獣と戦う者たちがいる。

 その一人が恐ろしい威力を秘めているであろう爪の一撃を岩で象られた盾で受け止める。

 

「【ロックシールド2】、ぐっ……【ロックカッター6】!」


「【ウォーターシリンダー2】!」


 強固そうな岩の盾が耐えきれず割れる。

 それでも、すかさず反撃の岩の刃が飛ぶ。

 さらに、それに合わせて二発の水の円柱が襲いかかった。


「ガアッ!!」


 一喝だった。


 僅かに力を入れて振るった前足の一撃に、そのどちらの魔法も瞬時に砕かれ消える。


「これならどうだ! 【緋炎加速:炎翼】!!」


 飛び上がり瘴気獣の鼻先で振るわれる炎を纏った横振りの光の刃。

 命中さえすれば確実にダメージを負わせられるはずの一撃。

 

 それが簡単に躱される。


「ガルルル、ガァッ!」


 返礼は強烈だった。

 独特の黒白のオーラを纏った爪による斬撃波。


「カルラッ!!」


「クソっ、【ロックシールド4】」


 四枚の岩の盾の大半がほとんど抵抗もなく切り裂かれる。

 それでもなんとか直撃を避けることができた。


「うおおお! 【闘技:斬壊斧】!!」


「ついでにコイツも喰らえッス」


 斧の闘技と長剣の斬撃。

 瘴気獣は死角からの二人の奇襲をまるで予期していたかのように長い尻尾で払うことで迎撃する。

 

(なんだアイツ、まるで子供をあしらうみたいに簡単に……)


 それでも五人は体勢を立て直し再び瘴気獣と相対する。

 その顔は非常に険しく焦りが浮かんでいた。


 死闘。


 正しく死闘の有様だった。


「あれは……カオティックガルムだ。ガルムの上位個体ダークガルムのさらにクラスアップした魔物、その瘴気獣」


 カオティックガルム……レリウス先生とカルラさん率いる〈赤の燕〉と死闘を繰り広げる瘴気獣。

 ルインがその死闘の有様に息を飲みながら教えてくれた相手は、五人相手でも一歩も引かずむしろ優勢を保っていた。


「ガルムは火山や雪山など過酷な環境にも適応できる強い魔物だと言われている。漆黒の体毛を有する討伐難度Cの魔物。対してその二段階クラスアップした姿とされるカオティックガルムは討伐難度A+。Aランク冒険者のパーティーがいてやっと倒せる相手。そして何より恐ろしいのが……」


「っ! 全員散開しろ!! ブレスが来るぞ!!」


 レリウス先生の合図と共に全員がカオティックガルムから距離をとり、弾けるように散っていく。

 なんだ?

 なにが起きる?


「――――っ……ガァッ!!!」


 息を深く吸い込んだカオティックガルムの口から黒白の奔流が放たれる。


「く……」


「きゃ」


 余波が十分に離れたこの位置にも届くほどの高威力。


 なんだよアレ……地面に大穴が空いたぞ。


「ブレス……竜種の魔物と同じくカオティックガルムは高威力長射程のブレスを放つことが出来る。しかも、あのブレスは聖属性と呪属性を兼ね備えた未知の属性と言われている。掠りでもすれば致命的な傷を負うことになる」


「そんな相手にどうすればいいんだよ……あんな奴に勝てる訳ねぇよ」


「でも、レリウス先生もカルラさんたちも戦ってる。……私たちにはもう出来ることはないのかな……」


「ワタクシもあの場に参戦して助力するべきなのにもう魔力がないなんて悔しいですわ……」


 皆目の前で繰り広げられる死闘に言葉がでない。

 懸命に戦ってくれている五人をただ見ていることしかできないのか?

 

「ガアアアア!!」


 高らかに吠えるカオティックガルム。

 臆することなく五人は立ち向かっている。

 俺はそれを見送りただ息を潜めて隠れているだけ。


 五人は命懸けで戦ってくれているのに。

 

「んっ……」


 そのとき、突然よろめいたプリエルザの背中を咄嗟に支えた。


「大丈夫か?」


「……ええ、少し魔力不足で目眩がしただけですわ。ここは魔力の少ない土地ですから回復も遅くて……」


 魔力、か……あのカオティックガルム相手でもプリエルザの魔法ならダメージを負わせられそうなだけに魔力不足では余計に助けになれないか……。


「え? 何ですのコレ!? 魔力が回復していく……?」


 なんだ?

 なにか身体の中の力が失われていく?


「これは……【ステータスオープン】。間違いありませんわね。全快とはいきませんけど、ワタクシの魔力、EPの値が回復していますわ」


 プリエルザが自らのステータスを確認して驚きの事実を教えてくれる。

 いま俺はプリエルザを支えるために背中に触れていた。

 ……これはまさかセロに触れたときに起こった現象に似たなにかなのか?


「【ステータスオープン】」


 減っている。

 EPの値がかなり。

 普段なら闘気を使っていても身体強化や闘気強化ではほとんど減少することはない。


 それが著しく減っている。


「これならまだ戦えますわ!!」


 暗く淀んだ雰囲気に希望が差していた。


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