太陽と笑顔
それを見たお月さまは、慌てたように言葉をついだ。
「あぁ、でも、願いを叶える方法というか、言い伝えならあるよね」
クーはびっくりして、まじまじとお月さまの顔を見つめた。
お月さまが言うには、「星の笑い声」「星の涙」「星のきらめき」「星の熱」「星の歌声」の五つを集めて、それらに願い事をし、最後に燃やすと、願いが叶うらしい。
「それだっ!!!」
クーは、もう、それしかない、と飛びついた。
それからクーは走り回った。
笑い声――笑顔なら、もう、彼しかいない。
そう考えたら、朝が来るのを待つなんて、できなかった。
クーは必死で太陽を追いかけた。
思いの外、太陽は早く進んでいたけれど、クーはその小さな体で一生懸命、追いかけた。
太陽は今日もみんなに囲まれて、その場は笑顔でいっぱいだった。
その笑顔は特別だ。本物の、優しい笑顔だけが集まっている。
太陽の言葉で笑顔が生まれるとき、その周りに悲しみに、痛みに、うつむく顔はない。
不快感を覆い隠す、嘘の笑顔も、その場にない。
みんなで誰かを踏みつけて愉しむ、冷酷な笑顔もない。
太陽は自分が中心になるために、言葉を紡がない。
彼は、誰かを照らすことばかり、考えている。
だから、彼が冗談を言えば、緊張した顔が、うつむいた暗い顔が、ふっ、と口元をゆるませて。
笑って、笑って、瞳が輝き、前を向く。みんなが優しい笑顔になる。元気いっぱいの笑顔になる。
クーは小瓶を開け、中が満ちるのを待った。
そして、蓋をした小瓶を耳に当ててみる。
――ふふふ。
――あはは。
――くすくすくす。
星々の笑い声が、小瓶の中でさざめいている。
「……ハイスにも、近くに太陽みたいな誰かがいたら、こんなふうに笑えたのかな……。」
クーはしょんぼりとして、下を向く。けれど、すぐにそんな自分に気づいて、上を向いた。
自分が、これからハイスをいっぱい、いっぱい、笑顔にするんだ。だから、立ち止まってる暇なんてないのだ。
「……よし、次は涙だ!」
クーはまた、全力で駆け出した。