表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

太陽と笑顔




 それを見たお月さまは、あわてたように言葉ことばをついだ。


「あぁ、でも、ねがいをかなえる方法というか、言いつたえならあるよね」


 クーはびっくりして、まじまじとお月さまの顔を見つめた。


 お月さまが言うには、「星のわらい声」「星のなみだ」「星のきらめき」「星のねつ」「星の歌声」の五つを集めて、それらに願い事をし、最後さいごやすと、願いが叶うらしい。


「それだっ!!!」


 クーは、もう、それしかない、と飛びついた。



 それからクーは走り回った。


 笑い声――笑顔なら、もう、彼しかいない。

 そう考えたら、朝が来るのをつなんて、できなかった。

 クーは必死ひっしで太陽を追いかけた。

 思いのほか、太陽は早くすすんでいたけれど、クーはその小さな体で一生懸命いっしょうけんめいいかけた。


 太陽は今日もみんなにかこまれて、その場は笑顔でいっぱいだった。

 その笑顔は特別とくべつだ。本物の、やさしい笑顔だけがあつまっている。

 太陽の言葉ことばで笑顔が生まれるとき、そのまわりにかなしみに、いたみに、うつむく顔はない。

 不快感ふかいかんおおかくす、うその笑顔も、その場にない。

 みんなで誰かをみつけてたのしむ、冷酷れいこくな笑顔もない。


 太陽は自分が中心になるために、言葉をつむがない。

 彼は、誰かをらすことばかり、考えている。

 だから、彼が冗談じょうだんを言えば、緊張きんちょうした顔が、うつむいた暗い顔が、ふっ、と口元をゆるませて。

 笑って、笑って、ひとみかがやき、前を向く。みんなが優しい笑顔になる。元気いっぱいの笑顔になる。


 クーは小瓶こびんを開け、中が満ちるのを待った。

 そして、ふたをした小瓶を耳に当ててみる。


 ――ふふふ。

 ――あはは。

 ――くすくすくす。


 星々の笑い声が、小瓶の中でさざめいている。


「……ハイスにも、近くに太陽みたいな誰かがいたら、こんなふうに笑えたのかな……。」


 クーはしょんぼりとして、下を向く。けれど、すぐにそんな自分に気づいて、上を向いた。

 自分が、これからハイスをいっぱい、いっぱい、笑顔にするんだ。だから、立ち止まってるひまなんてないのだ。


「……よし、次は涙だ!」


 クーはまた、全力でけ出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ