お月さま
クーは腹が立って、腹が立って、仕方がなかった。
「なぁにが、『君がいるから、大丈夫』っだっ! ボクがひどい、できそこないだって、しっているクセにっ! ボクなんかがいたって、しょうがないじゃないかっ!!!」
クーは太陽や月どころか、星々のような輝きさえない、名なしの星だ。光をおくることすらできない。そんな自分が幸せを祈ったところで、ハイスにとっては、いてもいなくても同じだろう。
「クー、何をそんなにかっか、しているんだい?」
「あ、お月さま」
気がつけば、もう夜で、月が昇っていた。今日はまんまる、満月だ。今日のお月さまは優しい笑顔を浮かべて、元気そうだった。
「お月さま、相談にのって欲しいことがあるんだ。地上の男の子を笑顔にしたいんだけど、どうすれば良いと思う?」
お月さまはキョトンとした。
「太陽もぼくも、地上のみんなを笑顔にしたいから、がんばって照らしているんだよ?」
「うーんと、そうじゃなくて。特定の一人を励ましたいんだ。すぐにね」
お月さまは少し考え込んだが、返ってきたのは「ムリだと思うよ」の一言だった。
「え、なんでだい?」
「だって、空と地上の間には見えない壁があるんだ。その壁を越えようとすると燃えてしまう。だから、空から地上にできるのは光をおくることだけなんだ」
初めて聞く話にクーはがっかりした。
「結局、ボクはハイスに、何もしてあげられないんだね……」
なんだか、とっても惨めで、クーの瞳から涙がこぼれた。