マンション到着
2人は1年前に同じニューヨーク大学に留学していた先輩からマンションを引き継ぐことになった。家賃は3000ドルと高かったが、知らない土地でゼロから自分たちで住むところを探すことを考えたらとても有難かった。でもマンハッタンに来たのは二人とも初めてだったから、迷ってしまい、空港を出てから、その先輩が書いてくれたメモを頼りに二人は電車とバスを乗り継いで何とかそのマンションにたどり着いたのは空港を出てから3時間も経ったころだった。そこはミッドタウンの高級住宅街でマンハッタンを南北に走るパークアベニューに面している30階建てのマンションだった。中に入ろうとしたときに入口のところで2メートル近くある巨大な黒人に前をふさがれる格好となり前へ進めなくなった。夏美はかなりびっくりして2,3歩下がり持っていたスーツケースから手が離れてスーツケースは大きな音を立てて倒れた。でも正樹は全然動じないでその男に英語で話しかけた。しばらく話した後その男性は急に笑顔になり正樹に手を差し出して2人は握手した。夏美が恐る恐る二人に近づくと、その男性は夏美を見下ろすようにして夏美にも手を差し出してきた。夏美は躊躇していたが、さすがに何もしないのは失礼かもと思い、右手を差し出すとその男性は強く夏美の右手を握りしめた。夏美はその力の強さに少し顔をしかめたがその男が微笑んできたので慌てて無理やりその男性に向かって夏美も微笑みかけた。