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Straight to the Heart  作者: 森幸
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留学期間終了後の勤務について

5年働いたら留学に行くというのが、正樹の働いている官庁の決まりだった。税金で留学することに対する批判が雑誌や新聞に載ることがあったが、その慣行はまだ続いていた。5年間昼も夜もなく、平日も週末もなく、国民のために働いてきたんだ、留学くらいする権利はあるよ、と正樹はいつも言っていた。それに、この辺で少し休まないと同期の半分くらいは病気になっちゃうよと、冗談とも本気ともとれるような調子で言った。実際、正樹が留学するロースクールは8月10日から授業が始まる予定だったが、正樹は8月7日まで働くように命じられていた。8日の飛行機に乗ってNYに8日の夜に到着し、一日だけおいて10日から授業が始まるのだ。

「先輩の話によると、帰りも卒業式が終わった次の日に日本に帰って、その次の日から働かされるらしいよ」と正樹があきれるように言った。

「帰国する前にアメリカ国内を旅行しようと思っていたのに、それもできないわね。残念」と夏美は本当に残念そうに言う。

「昔、留学が終わった後に一週間旅行して帰った公務員がいて、それを知った人が、税金で留学しておきながらすぐに働き始めないのはけしからんという批判を新聞に投稿した。それが省内で問題になって、その後から留学が終わったらすぐ帰国というルールができた。そんな経緯らしい」と正樹は説明する。

「そうなんだ、それじゃ仕方ないわね」と夏美が言う。

「たった1週間だぜ。全然問題にならないとおれは思うけど。投稿したやつだって、本当に問題だと思って投稿したんじゃないと思うよ。世の中には誰でもいいから批判したいやつが山ほどいて、誰かが批判されているところを見物するのが好きなやつはそれ以上に存在している。公務員なんて批判の絶好の対象さ。何かあれば税金の無駄遣いだ、税金から給料もらっているんだからもっと働け。税金泥棒だ。冗談じゃないよ。そういうことを言うやつらに限って、たいして稼いでなくて税金払ってなかったり、失業給付受け取っていたりするんだ。どっちが税金泥棒なんだ。まったく」と正樹は怒ったように言う


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