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Straight to the Heart  作者: 森幸
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授業後のやり取り

二人は、大学の寮の横を歩いていた。2人でルームシェアにも関わらず、一人1700ドル、約17万円もする。生徒の間では、うちの大学は、不動産経営で一番儲かっているよなという冗談がよく出る。

「アメリカの問題も国連で解決できますか」と正樹は青木さんに聞いた。

「それは無理だ」と青木さんは言う。

「どうしてですか」

「まず、国連は基本的に途上国の問題を扱っている。戦争や内乱、貧困や教育、人身売買や薬物問題、汚職、途上国に限定しても多くの問題があるから、国連はそれで手一杯だ。それに加えて、アメリカが一番国連に対してお金を拠出している。お金をもらっている人間がスポンサーに文句が言えるわけがない」

「なるほど。でもすごいですね。そんな大きな問題を解決したいんですか、青木さんは」と正樹は感心して言った。

二人は、ブルーノートの横を通る。世界的に有名なジャズクラブだ。大学のすぐ近くにあることに気づいて夏実に話したら、凄い、絶対行きたいと興奮しながら言っていた。夏実は昔からジャズが好きだった。正樹はクラシックにしか興味がないので、ブルーノートの凄さはよく分からない。建物も古く、中も狭そうだし、音響を考えて作られているようには見えない。ジャズはもともと音響なんか気にしないのではないかと正樹は思っているが、何度か、正樹はジャズをクラシックより下に見ていて馬鹿にしていると、夏実に怒られたからブルーノートについての感想は言ってない。

「寿司屋でも言ったが、別にそういう問題を解決したいわけじゃない。国連には、世界中から、優秀な人間が集まっている。世界中には、想像を絶するくらい頭のいいやつがいくらでもいる。何十ヶ国語も話せるやつだっている。おれはそういうやつらと一緒に仕事をしてみたいし、そのなかで自分の力を試してみたい」

「その結果、結果的に、戦争などの大きな問題が、解決されればなおいい」と正樹は付け加えた。

「よく分かっているな。そのとおり、もちろん、世界中の問題が解決できればすばらしいし、少しでも力になれるならなりたい。でも、正直、国連だけでできることは限られている。国連はベトナム戦争も、湾岸戦争も、イラク戦争も止められなかった。貧困による死亡者はずっと増えている。世界をよくするという目的で、国連に入ると挫折するかもしれない。それならもう少し小さな目標を掲げることにしたんだ」

「それが国連のなかで力を試すっていうことですか、十分大きな目標のような気がしますが」

「まあそうかもな。でも、この大学に入ったことはまず大きな一歩だ。この大学のOBには、国連関係者が多数いるし、国連でインターンシップをすることができる。何より、同じ目標を持つ人間がたくさんいるところで勉強することはすごく刺激になる」

「でも弁護士の仕事はどうするんですか」と僕は聞いた。

「勿論、国連に入ったら辞めるよ」と青木さんはあっさり言った。

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