虚ろと口付け
「わたし」
「心が虚ろで充たされてるの」
そう、彼女は言った。
どこか、気が抜けたような
暗闇を見ているような
そんな、雰囲気だった
「明日なんか要らない」
彼女は涙を流していた
こんなになるまで、心を削って
”がらんどう”
僕らは、そうだった
誰からも愛されてもない
社会に餌付けをされただけの
ただの家畜だ
カタカタと、窓に雨が打ち付ける
ここには、二人きりだ
この世界にも、二人きりならよかったのに
そんな思いを抱いていた
でも、そんなことは叶わない
「しにたい」
泣きじゃくる彼女は、その言葉を絞り出した
「僕も行くよ」
僕は、彼女を抱きしめた
今更、涙なんか出ない
感情なんか、とっくに希薄になっていた
どうなんだろうな
本来、彼女を止めるべきなんだろうな
でも、もういいや
これが、僕らができた最初で最後の反抗
色の無い世界に向けた
とっても最悪な方法だ
2人で薬を飲んだ
そして、僕らはキスをした
そして、2人で抱きしめあった
これは、僕らの最後の団欒の時間なんだ
僕ら2人で堕ちていく
とても暗くて、深い場所に
堕ちてく僕らが、離れないように