表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反少年主義 第二幕  作者: 椎家 友妻
 其の一 いざ、神戸へ
6/66

4 ハナミは急にプンスコ怒るタイプ

駅へ向かって歩いていると、前の方から一人の女子が歩いてくるのが見えた。

 オレと同じくらいの背丈で、髪を左右に分けてくくっている。

こういう髪型をツイン何とか(ツインタワービル?)って言うらしいけど忘れた。

まあええわ。

それはさておき、オレはあの女子を知っていた。

クラスメイトのモリサキハナミや。

クラスの学級委員で成績はそこそこ良く、真面目でしっかり者。

男子には結構モテるらしいが、あいつの本性は凶暴で攻撃的なので、

オレはあいつを強く警戒している。

それが証拠にあいつはオレに事あるごとにつっかかってきて、訳の分からない事で怒り出すんや。

理不尽な暴力でどれだけ痛い目にあわされた事か。

だからオレはハッキリ言うて、ハナミとはあまり関わりたくないのやった。

なのでオレは、背負っていたリュックを下してそれで顔を隠し、

ハナミに気づかれないようにその場をやり過ごそうとした。

すると、

 「ちょっと待ちぃやヨシオ」

 すれ違うところであっさりバレて呼び止められてしもうた。

オレは仕方なくリュックで顔を隠すのをやめ、至って自然な口調のつもりでこう言った。

 「お、おう、ハナミやないか。顔が見えへんから気づかへんかったわ」

 するとハナミは露骨(ろこつ)に眉をひそめてこう返す。

 「それはあんたがリュックで顔を隠してたからやないの。あんたはウチを無視しようとしたんか?」

 「そ、そんな事はありまへんえ?」

 「何で舞妓(まいこ)さんみたいな口調やねん。それより、リュックなんか持って何処行くんよ?ピクニック?」

 「い、いや、これは──────」

 この女は、何故かオレの嘘を見抜くカンが抜群に(するど)い。

ここで下手に誤魔化(ごまか)そうとすれば、ハナミはまた理不尽に怒り出すやろう。

なのでオレは正直にこう答えた。

 「えーと、神戸に住んでる文通相手の家に行くねん」

 「え?ヨシオの文通相手って、この前庵地駅に来たあの子?」

 「そうや」

 「ふ、ふ~ん、そうなんや・・・・・・」

 オレが頷くと、ハナミはそう言って笑みを浮かべた。

しかしその頬はピクピクとひきつっている。

 一体何なんや?と思っていると、ハナミは微妙に震える声で続けた。

 「で、向こうに行って何するの?」

 それに対してオレは、

 「向こうであいつとテキトウに遊んで、泊って帰ってくる」

 と答えた。するとハナミは、


 「ええええっ⁉」


 と、とてつもなくデカイ声で叫んだ。

 「な、何やねん⁉そんなに驚く事か⁉」

 オレがそう言うと、ハナミはやにわに(・・・・)オレの胸ぐらを掴み、物凄い剣幕でこう言った。

 「お、驚くも何も!あんた!

いくら文通相手やからって!あんた!

直接会()うたのはこの前が初めてやのに!あんた!

泊りに行くって!あんた!」

 「あんたあんたうるさいな!あいつが泊りに来て欲しいって言うから泊りに行くんや!」

 「ええっ⁉あの子から誘ってきたん⁉何てふしだら(・・・・)な!」

 「どこでそんな言葉覚えた⁉っていうか別にふしだらではないやろ!相手は九歳やぞ!」

 「うるさーい!」

 「お前の声がな!」

 「そんなに泊りに行きたきゃ行けばええやないの!ヨシオのアホ!あんたなんかもう知らん!フン!」

 ハナミはそこまで言うと、(きびす)を返して去って行った。

 何か知らんけど、また怒らせてしもうた。

オレ、何かあいつを怒らせるような事を言うたか?

あいつの心の中はホンマに分かれへん。

クラスでは優等生扱いされてるから、それがストレスになってるんか?

まあ、どうでもええけど。

 気を取り直し、オレは庵地駅へと向かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ