3 マサノブはマセたプレイボーイのタイプ
そんな訳で、カスミの家に行く当日の朝。
着替等を入れたリュックを背負い、
『ちゃんと挨拶しいや』とか
『向こうについたら電話するんやで』とか
『道草しなや』とか
『アホな事しなや』とか
『拾い食いしなや』とかうるさいお母ちゃんを尻目に、オレは家を出た。
すると門をくぐったところで、オレよりいくらか背が高くて、
オレよりいくらか女子にモテる、隣の家に住むイソモトマサノブにばったり会った。
そのマサノブが、リュックを背負ったオレの姿を見て言った。
「あれ?一緒に遊ぼうと思うたのに、ヨシオ今からどっか行くんか?」
「おう、今からちょっと神戸まで行くんや」
「神戸?神戸のスーパー玉○に?」
「何でスーパー○出に行くのにわざわざ神戸まで行かなあかんねん?
そうやなくて、カスミの家に遊びに行くんや」
「え?カスミちゃんって、ヨシオの文通相手の?」
「そうや」
「マジで⁉ええな~ヨシオ」
「何がええねん」
「だってカスミちゃんってメッチャ可愛いやん」
「アホぬかせ。まだ九歳やぞ?」
「でもあの子は将来絶対べっぴんさんになるで。
何せおれが今まで見てきた女の子の中でも、五本の指に入る可愛さやからな」
「お前はホストか」
「そうか~神戸か~。日帰りで行くの?」
「いや、泊りで」
「どええっ⁉泊りで⁉」
「何をそんなに驚いとんねん」
「だってお前、男が女の子の家に泊まりに行くっちゅうのは、大変な事やろ」
「あのな、オレはまだ十一歳なんや。
そのオレが九歳のカスミの家に泊まりに行って、一体何があるちゅうねん?」
「妊娠」
「うぉい!うぉおおいっ!そんな訳ないやろ!何ちゅう事を言うんやお前は!」
「ご出産おめでとうございます」
「してへんわい!それに至る行為にも及んでない!」
「もし男の子が生まれたら、名前は『マサノブ』にしてな?」
「絶対嫌じゃ!将来子供ができてもその名前だけはせぇへん!」
「そっか~、ヨシオはカスミちゃんの家にお泊まりかぁ~。じゃあおれは、アミちゃんと遊ぼうかな」
「ん?アミちゃんって誰や?」
「あ、まだ言うてなかったっけ?最近付き合いだした女の子」
「な、何やと⁉それってまさか、彼女って事か?」
「スワヒリ語で言うとそうなる」
「日本語で言わんとそうはならんやろ!」
「うらやましい?」
「うらやましい!・・・・・訳ないやろ!彼女っちゅうてもどうせアレやろ?
小学生のチンチクリンの子供やろ?」
「いや、高一の女子高生」
「女子高生⁉どうやって知り合ったんや⁉」
「学校の帰りにラブレターをもらってん」
「向こうからアタックしてきたんかい⁉」
「それで、性格がよさそうやから付き合う事にしてん」
「何ちゅうやっちゃ。お前のファンの女子どもが知ったら泣くぞ」
「うん、だからこの事は、クラスの女子には黙っといてな?知ったらきっと悲しむと思うから」
「ジャ○ーズ気取りかこの野郎!調子に乗るな!」
「ははは。まあヨシオもカスミちゃんと仲良くなれるように頑張りや。それじゃあおれは行くわ」
マサノブはそう言うと、爽やかな笑みを浮かべながら去って行った。
あいつ、まさか彼女ができたとは。
しかも相手は女子高生って、どんな年の差カップルやねん。
まあ、自分のクラスの担任と付き合うとった小学生もおったけど。
ともかくオレは、近所の庵地駅へと向かった。